東京都江戸川区の社会保険労務士事務所、ヒトと会社の絆を結ぶエキスパート

北村社労士事務所事務所通信

バックナンバー2010.12〜2011.12

平成23年12月号 Kitamura SR News

債権の取立てと給与の差押え

◆従業員がサラ金業者に借金!!どうする?
従業員が、あるサラ金業者に多額の借金をしたまま夜逃げをしてしまい、そのため、サラ金業者が会社にやって来て、未払給与や退職金を借金返済に充てるので支払ってくれといわれた場合・・・

◆賃金は必ず労働者本人に直接手渡さなければなりません
サラ金業者も大手の場合は、裁判所を通して法的手続きをとりますが、そうでない業者の中には直接会社にやってくるケースがあるようです。しかし、賃金は必ず労働者本人に直接手渡さなければなりません。これは、賃金のピンハネなどを防ぐために設けられた、労働基準法第24条による「強行規定」です。ですから、例えばサラ金業者が本人から委任状を預かっていても、債権譲渡(賃金請求権を譲り受けた)の証書を持っていようとも、これに応じる必要はありません。逆に違反した賃金の支払いは無効となり、罰則(30万円以下の罰金)の適用もあります。ここでいう賃金とは「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」を指し、給与のほか各種手当や賞与、そして退職金も含まれます。会社としては断固業者の要求を拒否すべきところですが、もし業者がしつこく押しかけてきて迷惑をかけるようなら、近くの警察に連絡し警察官を派遣してもらい、刑法によるところの業務妨害や不退去罪として取締ってもらうことです。また、同時にそのサラ金業者の監督官庁に連絡し(複数の都道府県で営業する者は財務局、一つの都道府県内で営業する者は当該県庁の金融課など)、貸金業規制法第21条「業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない」に違反するとして、会社へ取立てに来ないように行政指導をしてもらうこともできます。

◆裁判所を通じ「給与の差押え」となった場合には?
しかし、サラ金業者が正規の法的手続きをとり、裁判所を通して「給与の差押え」をした場合には、差押さえられた範囲で未払給与や退職金を支払わなければなりません。月給制ならば、基本給および諸手当(通勤手当は除く)から所得税・住民税・社会保険料等を控除した残額の4分の1(ただし、残額が28万円を超えるときは残額から21万円を引いた額)を、退職金については、同じく所得税・住民税等を控除した残額の4分の1が差し押さえられることになります(民事執行法第152条および施行令第2条)。残りは必要生計費として差押えが禁止されています。もし、差押さえている債権者(サラ金など)が複数いる場合には、供託することになります(民事執行法第156条2項)。上記を参考にしていただき、このような事態になった場合でも、慌てずに適切な対応をとることが必要です。

「個人賠償責任保険」に加入してますか?

◆日常生活で思わぬことが…
日々の暮らしの中で、思わぬ形で人をケガをさせたり、物を壊してしまったりした場合に、「個人賠償責任保険」に加入していれば、保険金により相手方に与えた損害を賠償することができます。以下では、主な補償の例や加入時の注意点をまとめました。

◆補償の対象となるケースは?
この保険の補償の対象となる主なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
・自転車で人をはねケガをさせた
・子供が友達と喧嘩してケガをさせた
・飼い犬が通行人に噛みついた
・マンションで階下に水漏れを起こした
・買物中の店で高価な商品を壊した
上記のような過失による事故は補償の対象となりますが、同居の親族に対する損害賠償や他人から借り物を壊した場合の損害賠償、故意に起こした事故などは対象外です。また、通勤途中の事故はカバーされますが、仕事中の事故はカバーされません。

◆「個人賠償責任保険」の特徴
この「個人賠償責任保険」は、契約者本人だけでなく、配偶者や同居の親族、1人暮らしの学生など生計を同じくする別居の未婚の子もカバーできるのが特徴です。加入方法は、損害保険会社の販売する「個人賠償責任保険」あるいは「自動車保険」「火災保険」「傷害保険」のいずれかに加入した上で、特約として上乗せを行うのが一般的なようです。

◆加入時のチェックポイント
チェックポイントとして、以下が挙げられます。
(1)示談交渉サービスが付いているか
(2)重複契約になっていないか
(3)自動車の売却や引越しなどで保険が途切れていないか
(4)海外で賠償責任を負った場合でも補償されるか
特約の保険料は、最大保険金額1億円(または無制限)であっても、年額1,000円〜2,000円程度で済むようです。

雇用・労働をめぐる最近の裁判例

◆「雇止め」をめぐる裁判例
地方自治体の非常勤職員だった女性(55歳)が、長年勤務していたにも拘らず、一方的に雇止めをされたのは不当であるとして、自治体を相手取り地位確認や慰謝料(900万円)の支払を東京地裁に求めていました。同地裁は、「任用を突然打切り、女性の期待を裏切ったものである」として慰謝料(150万円)の支払いを認めましたが、地位確認については認めませんでした。この女性は、主にレセプトの点検業務を行っており、1年ごとの再任用の繰返しにより約21年間勤務していたそうです。(11月9日判決)

◆「過労死」をめぐる裁判例
外資系携帯電話端末会社の日本法人に勤務し、地方の事務所長を務めていた男性(当時56歳)が、接待の最中にくも膜下出血で倒れて死亡した事案で、男性の妻が「夫の死亡したのは過労が原因である」として、労災と認めず遺族補償年金を支給しなかった労働基準監督署の処分を取消すよう大阪地裁に求めていました。
同地裁は、会社での会議後に行われた取引先の接待について「技術的な議論が交わされており業務の延長であった」と判断し、男性の過労死を認めました。この男性は、お酒が飲めなかったにもかかわらず、週5回程度の接待(会社が費用を負担)に参加していたそうです。(10月26日判決)

◆「震災口実の解雇」をめぐる労働審判申立
仙台市の複合施設2店舗で働いていたアルバイトの男女(11人)が、「東日本大震災」を口実とした解雇は無効であるとして、施設の運営会社を相手に地位確認などを求めて労働審判を申立しました。同社から解雇されたのは今回申立を行った計11人を含め568人もおり、約100人が同様の申立を検討しているとのことです。アルバイト側の代理人弁護士は「震災を口実とした便乗解雇であり、許されない」コメントしており、今後の審判の行方が注目されます。(10月25日申立)


雇入れ後、社会保険に加入しても短期間で退職が多い…

仕事がキツイ、難しいからか、雇入れ後、短期間での退職が多いため、社会保険の事務手続きが煩雑で困る…そのため試用期間後に社会保険に加入させる事業所があります。でも、試用期間については、期間が始まったときから「期間の定めのない契約とみなす」のが通説です。そのため、当初は2ヵ月間の有期雇用契約に変え、その後、正式に雇用とする事業所もあります。

平成23年11月号 Kitamura SR News

特別休暇の取扱い

◆年次有給休暇以外の特別休暇
年次有給休暇以外に、慶弔休暇やリフレッシュ休暇などの特別休暇を設けている会社は数多く存在します。 特別休暇は、労働基準法上の法令に基づくものでなく、福利厚生の一環として恩恵的に与える休暇ですので、必ずしも設ける必要はありません。しかし、制度として設けた以上、社員には請求権が生じ、就業規則にもその定めを記載しなければなりません。特別休暇は、就業規則の絶対的記載事項である「休暇」に含まれるからです。(労基法89条)

◆特別休暇の考え方
特別休暇の代表例に慶弔休暇があります。ノ―ワーク・ノ―ペイの原則により無給としても特に問題はありませんが、社員にとってメリットはなく、年次有給休暇が残っていれば、そちらを取得することになるはずです。従って、特別休暇本来の福利厚生の目的を重視するのであれば、特別休暇は有給にすべきと思われます。また、特別休暇中に土曜日や日曜日をはさむ場合は、休日をその日数に含めるのか、含めないのか、という問題もあります。もともと、労働義務のない休日に休暇は成立しないと考えられますが、特別休暇は労働基準法に規定されている休暇ではありませんので、会社の裁量で自由に決めることができます。休日を含むのであれば「特別休暇は暦日で計算し休日を含む」というように記載するのがよいでしょう。その他にも、連続での取得に限るのか分割での取得が可能なのか、取得期間の制限を設けるのか、なども決める必要があります。

◆特別休暇(慶弔休暇)の規定例
社員が次の各号のいずれかに該当するときは、本人の請求によりそれぞれに定める日数の特別休暇を与える。ただし、特別休暇は暦日で計算し、休日を含むものとする。
(1)結婚休暇(本人)
連続5暦日(入籍日もしくは挙日のいずれか遅い日から、1年以内に取得するものに限る)
(2)忌引き休暇
@配偶者、子、実父母が死亡したとき…死亡日から連続5暦日
A実の兄弟姉妹および祖父母、配偶者の父母が死亡したとき…死亡日から連続3暦日(ただし、喪主を務める場合は連続5暦日)
B配偶者の祖父母および兄弟姉妹が死亡したとき…死亡日から連続2暦日(ただし、喪主を務める場合は連続3暦日)

◆その他の注意点
特別休暇の対象者が正社員のみか、パートタイマー、アルバイトも対象なのかも決めておき、ルールとして就業規則に記載しておくことも必要です。「社員のために」設けた特別休暇が、ルールが曖昧なために、かえって不公平感を生んでしまうことがないよう、注意が必要です。

社員の「うつ病」に備えるには?

◆職場として必要な知識は?
職場でメンタル面の不調を訴える人が増えていますが、中でも「うつ病」の患者数は特に増えており、非常な身近な病気となりつつあります。うつ病は、身体の病気とは異なる性質があるため、職場としても知識を備えておくことが重要です。

◆うつ病の基準とかかりやすい人の特徴
うつ病は、医学的に広く使われる基準では「抑うつ気分(気分の落込み)」か「意欲の低下」のどちらか、または両方が2週間以上続き、さらに同時期に睡眠や食欲の乱れ、思考力の減退などがある場合に、その可能性が高いとされています。うつ病(いわゆる「新型うつ病」は除く)になりやすい人は、一般的には責任感が強く、無理をして頑張りがちと言われています。また、職場の同僚や上司から見ると、仕事でミスが増えるか、外見を気にしなくなるといった兆候が表れることが多いようです。

◆公的支援策の活用も
うつ病と診断された場合、一般的には薬の服用と休業を中心とした治療を受けることになります。治療期間は病気の程度によりますが、数ヶ月から1年以上に及ぶことも多くあります。治療には時間がかかり医療費など経済的な負担が大きくなりがちですので、公的な支援策(自立支援医療制度、高額療養費等)の活用が有効です。

復職について「焦り」は禁物
うつ病による休職者にとって気になるのが「職場復帰」の問題です。多くの人は早期復職を希望しますが、復帰をきっかけに再発するケースも目立ちます。企業側でも、休職者を受入れるための規定や復職支援制度を整備する例は増えつつあります。復職について明確な規定を定めることで、再発を防止し、受入れる職場での対応もスムーズになります。また、慣れた職場で短時間就労する「慣らし期間」から始め、体調や仕事ぶりについて産業医・上司・人事担当者らが相談しながら、徐々に元の仕事に戻すやり方もあります。うつ病は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら回復することが多いため、主治医が復職を認めた場合であっても、完全には回復しないことも多くあります。患者にも職場にも、復職に焦りは禁物と言えます。

違法と判断される不当な「異動・配転」はどのようなもの?

◆事件の概要
先日、上司の行為(取引先の社員を引抜こうとしていた行為)を社内にある「コンプライアンス窓口」に内部通報したことにより不当な異動(まったく経験のない部署への配置転換)を命じられたとして、現役社員(原告)が勤務先(被告)に異動の無効確認と損害賠償(1,000万円)を求めていた訴訟の控訴審判決がありました。 東京高裁は「業務とは無関係に異動を命じており、人事権の濫用に該当する」として、原告敗訴とした1審判決を破棄し、異動は無効であるとし、会社と上司に220万円の賠償を命じました。

◆不当・違法と判断されるケース
人事権は広く会社に認められていますが、上記のケースの他、どのような人事異動・配置転換が不当・違法であると判断されるでしょうか。 過去の裁判例では、(1)業務上の必要性が存在しない場合、(2)仮に必要性が存在したとしても他の不当な動機・目的による場合、(3)労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合等、特段の事情の存する場合においては、人事権の濫用に該当するとしている。 なお、(2)でいう「不当な動機・目的」とは、社員を退職に追い込む目的、上司による嫌がらせ目的等が考えられます。

◆業務の系統を異にする職種への異動
この他、業務の系統を異にする職種への異動については、業務上の特段の必要性、当該従業員を異動させるべき特段の合理性があり、これらの点につき説明が十分になされた場合か、本人が特に同意した場合を除いては、会社は一方的に異動を命ずることはできないとした裁判例もあります。 個々の裁判例で背景はそれぞれ特殊な事情があり、他の同様なケースにも全て当てはまるわけではありませんが、会社としては、人事異動・配置転換が不当・違法なものと判断されないよう注意する必要があります。

当事務所よりひと言

東京労働局の労働者派遣業免許を新規取得した会社に対する説明会に出席した。これで、2度目だが今回も満席で派遣業へのニーズは相変わらず高いのでしょうか・・・

平成23年10月号 Kitamura SR News

平成23度の最低賃金改正について

◆あなたの会社は大丈夫?
最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金額の最低限値を定めた制度です。もし、最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者にその差額を支払わなければなりません。また、仮に最低賃金より低い賃金で使用者と労働者が合意していても、それは法律によって無効とされ、最低賃金と同額の定めをしたものとみなされます。 なお、最低賃金は都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業ごとに定められた「産業別最低賃金」がありますが、地域別と産業別の最低賃金が同時に適用される労働者には、金額が高い方の最低賃金が適用されます。       特に、パートタイマーやアルバイトを雇っている使用者は、ご注意ください。地域別最低賃金に違反した場合は、50万円以下の罰金。 【地域別最低賃金 平成23年10月12日現在】 群馬県:時間額690円 埼玉県:時間額759円 千葉県:時間額748円 東京都:時間額837円 神奈川県:時間額836円

これからどう変わる?「子ども手当」

◆支給額の変更
現行の子ども手当は、中学生までの子ども1人当たり一律月額1万3,000円ですが、10月以降、3歳未満は15,000円、3歳から小学校卒業までは1万円(第3子以降は15,000円)、中学生は1万円となります。

◆支給要件を厳格化
また、子どもの国内居住など支給要件を厳格化することに伴い、すべての対象世帯に市町村への申請を求めるとしています。これまで、新規の受給者は申請を行う必要がありましたが、2009年度まで児童手当を受給していた人は免除されていました。 申請は10月以降、保護者と子どもの氏名、年齢、養育状況などを記した書面を市町村窓口に提出することになります。未申請の人には支給されませんが、経過措置として来年3月までに手続きを行えば遡って支給されます。 この他、保護者の同意を条件に給食費を差し引いたうえで手当を支給する仕組み、滞納が問題になっている保育料を手当から天引きできる仕組みの導入も検討されています。

◆高所得者は負担増へ
来年6月分からは新児童手当に所得制限が課され、年収960万円程度を超す世帯への支給は打ち切られます。「児童手当」から「子ども手当」に制度変更した際に見直した扶養控除の縮小はそのままで、0歳から15歳までの年少扶養親族にかかる扶養控除が、今後は所得税・住民税ともに廃止となるため、実質増税となります。

◆控除縮小による影響
働く夫、専業主婦の妻、子ども2人の家庭を想定して、旧制度である児童手当との増減を試算したところ、新制度で恩恵を受けるのは年収500万円程度の世帯だそうです。 年収500万円以上1,000万円未満程度の家庭では、子どもの年齢や数によっては負担が増えることもあります。年収1000万円の世帯では、新児童手当が受け取れないうえ、控除縮小に伴う所得税と住民税の増額が重くのしかかることになります。

「節電期間」の終了で企業の対応は?

◆9月9日に制限令が解除
政府が東北電力と東京電力の管内で適用していた「電力使用制限令」が、9月9日に解除されました。制限令が発出されたのは実に37年ぶりのことであり、期間中、企業には原則として15%の節電義務が課され、大きな影響を受けた企業も少なくないでしょう。 この制限令の解除を受け、各企業はどのように対応しているのでしょうか?

◆3パターンの対応
制限令の解除を受けた企業の対応としては、主に下記の3パターンがあるようです。 (1)通常の状態に復帰する例
・工場における夜間操業を通常操業に復帰(製造業)
・電気を落としていた売場の照明を震災前と同様に(百貨店)
(2)節電対策を継続する例
・作業スペース削減などによる節電対策を継続(製造業)
・自宅や外出先でのテレワークを継続(機器メーカー)
(3)節電対策を強化させる例
・節電型の自動販売機の設置を拡大(飲料メーカー)
・店舗内に太陽光発電や蓄電池を導入(薬局)

サマータイム制のメリットは?
上記からもわかる通り、「省エネ」や「経費節減」のため、節電対策を継続する企業は意外に多いようです。 また、始業時間と終業時間を早める「サマータイム制」を導入した企業のうち、今秋以降も継続を検討するところがあるようです。 その理由として、「仕事の密度が高まることにより、残業の削減ができた」ことを挙げる企業の担当者がいました。また、社員にとっても「帰宅後に家族と過ごす時間が増えた」「自分の時間が確保でき、自己研鑽の時間を多く持つことができた」といった大きなメリットがあるようです。

介護事業所における人手不足と 安全衛生面の課題

◆「就業意識実態調査」から
ヘルパーなどの介護従事者でつくる「日本介護クラフトユニオン」が発表した「2011年度 就業意識実態調査」の結果によると、介護職場においては、人手不足に加え、職員の安全衛生面(ケガや健康)なども大きな課題となっているようです。

◆職種で異なる人手不足感
この調査によると、職種別の人手の不足感(「大いに不足している」「やや不足している」の合計)が高いのは、上から順に「訪問介護員」(月給制組合員で78.3%、時給制組合員で58.8%)や「施設系介護員(入所型)」(同71.7%、62.0%)、「施設系介護員(通所型)」(同61.5.%、57.3%)、「看護師」(同68.2%、55.4%)となっています。 一方、「ケアマネージャー」(同54.8%、45.5%)や「生活相談員」(同49.6%、43.6%)、「事務職」(同54.9%、52.7%)、「サービス提供責任者」(同42.6%、39.4%)などでは「妥当である」との回答が多く、職種により大きな違いがあることがわかりました。

◆人手不足が長時間労働に繋がる
人手不足が、職場での様々な問題の原因になっています。 例えば、今年3月の労働日数および時間数を尋ねたところ、訪問系管理者で25日以上働いた人は27.5%で、労働時間数は平均199.42時間に上っています。 人手不足が管理職員の長時間労働問題に繋がっている様子がわかります。

◆安全衛生面にも大きな課題
仕事が原因の健康問題について、約40%の人が「ある」と回答をしています。症状別にみると、「腰痛」「肩こり」のほか、「イライラする」「頭痛」「よく眠れない」など、メンタル面の問題を抱えている人も多いようです。また、「感染症胃腸炎」や「疥癬」などの感染症を訴える人もいました。 このように様々な問題を抱える介護事業所ですが、人手不足の抜本的な解決策が必要となっているようです。

平成23年9月号 Kitamura SR News

雇用を増やした企業に対する税制優遇措置

◆8月1日より受付開始
税制改正法案が成立し、「雇用促進税制」が創設されました。この「雇用促進税制」は、雇用を増やすなど一定の条件を満たした企業に対する税制優遇措置であり、8月1日からハローワークでの受付が開始されています。 なお、平成23年4月1日から8月31日までの間に事業年度を開始する事業主は、10月31日までに届出を行えばよいこととなっています。

◆従業員の増加1人あたり20万円の控除
「雇用促進税制」は、ハローワークに「雇用促進計画」を提出し、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの期間内に始まるいずれかの事業年度において、1年間で10%以上かつ5人以上(中小企業は2人以上)従業員を増やすなどの要件を満たした事業主に対する税制優遇制度であり、従業員の増加1人あたり20万円の法人税の税額控除を受けることができます。 なお、上記以外の要件は、次の通りです。
・青色申告書を提出する事業主であること
・適用年度とその前事業年度に事業主都合による離職者がいないこと
・適用年度における給与等の支給額が比較給与等支給額以上であること
・風俗営業等を営む事業主ではないこと

◆手続きの仕方
まず、事業年度開始後2カ月以内に、目標の雇用増加数などを記載した「雇用促進計画」を作成し、ハローワークに提出します。 次に、事業年度終了後2カ月以内(個人事業主については3月15日まで)に、ハローワークで雇用促進計画の達成状況の確認を求められます。そして、確認を受けた「雇用促進計画」の写しを確定申告書等に添付して、税務署に申告を行います。

◆現実は…
中小事業主にとって20万円の税額控除は魅力的だが、前記の要件をクリアできるか、業績が不安定の場合、厳しいかと想定されます。 雇用者数2人以上かつ10%以上の要件で、比較給与支給額以上であることが求められるが、 安定的に給与・賞与を支給していれば問題ないが、業績により都度、給与・賞与を変動せざるを得ない中小企業の場合、難しい課題です。

企業財務を圧迫する「福利厚生」の見直し

◆見直しが迫られる福利厚生
企業が社員に提供する「福利厚生」が縮小する一方、年金や医療といった企業負担が急速に膨らんでいます。景気低迷により多くの企業では業績拡大も見込みが立たず、「福利厚生」のあり方は、今後も修正を迫られそうです。

◆減少傾向にある社宅
国土交通省の「住宅着工統計」によれば、2010年度における社宅や公務員宿舎などの着工数は6,580戸で、確認できる1955年度以降で過去最低を更新しました。総務省が実施する「住宅・土地統計調査」によれば、全国の社宅・公務員宿舎は2008年に約140万戸で、10年前と比較すると2割減となっています。1990年代後半から、企業が福利厚生施設を売却する動きが広がっており、2009年の人事院による調査では、社宅がある企業は全体の57%で、自社で物件を保有する企業は25.8%でした。

◆各種手当、社内預金の状況
社宅だけでなく、各種手当なども減少傾向にあります。 厚生労働省の調査によれば、「家族手当」や「扶養手当」を支給している企業は2009年時点で全体の65.9%となっており、10年前から11.4%低下しています。 また、「社内預金」(一般に、預貯金より高い利子をつけて企業が従業員の貯金を管理する制度)も縮小しており、昨年の社員預金総額は9,334億円で、10年前と比較すると約3分の1となっています。

どのように守る?高齢者のお金

◆公共サービスを利用した金銭管理
親が高齢になると、日常的な金銭管理をどのように行うかという問題が起こります。判断能力が低下したり、外出が難しくなったりした高齢者の家族にとっては切実な問題です。 以下、公共サービスを利用して金銭管理を行うご紹介です。

◆社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」
社会福祉協議会(以下、「社協」)は、地域福祉の推進を目的とした非営利組織であり、国・都道府県・市区町村にそれぞれ設置されています。    地域住民に身近な市区町村の社協は、訪問介護など様々な福祉サービスを手掛けており、災害時にはボランティアの受入れ窓口となるなど、準公的な性格を持ちます。 「日常生活自立支援事業」は全国約800の社協が手掛けています。主なサービスとして、高齢者の日常的な金銭管理や福祉サービスの利用援助、通帳の預りなどがあります。 サービスは日常生活の範囲内に限定されており、高額の財産管理や法律行為の代理などは行えません。

◆安い報酬も、お願いする側が魅力
生活費の引出しや預入、税金などの支払いの手伝いなど、小口の金銭管理サービスは、親族や信頼できる知人が近くにいない独居高齢者や、同居の子供が親の年金を使い込んでしまうような世帯において特に必要度が高まっています。また1回の訪問当たり1,000円程度からという安い報酬体系も魅力です。

◆制度利用伸び悩みの理由は?
「日常生活自立支援事業」は便利な公共サービスですが、利用者数は2011年1月末時点で約3万5,000千人に留まっています。 この伸び悩みの主な理由は、社協の人員不足にあると言われています。常勤職員の人件費は都道府県と国が折半していますが、予算が付かないため、人員増に踏み切れないでいるのが実情のようです。 一方、利用する側にも、通帳などを第三者へ預けることへの抵抗感が強くあるようです。本人から利用を申出るケースは少なく、多くは周囲からの勧めがきっかけとなっているそうです。

『被扶養者から外れる?〜妻の年収が半分以上に〜』

◆夫は定年後、短時間の嘱託で働く従業員。奥さんはパート
奥さんは夫の被扶養者ですが、奥さんが60歳に達すると、被扶養者の認定基準が年収180万円未満にアップします。残業が増えて夫の年収の半分を超えたら・・・

◆本人の収入を上回ればダメ
健康保険では、被保険者に扶養されている3親等内の親族は被扶養者となります。被扶養者の認定要件は「年収130万円未満であること」とされ、多くは年収を130万円未満に抑えるよう調整することがあります。 また、同一世帯の場合には原則として「被保険者の年収の半分未満」という条件もクリアする必要があります。 奥さんの年齢が60歳以上になれば、被扶養者の年収の基準が130万円から180万円にアップするため、収入を増やす余地が生まれます。 その一方で、夫は再雇用により給与が大幅に下がることもあり、その年収によっては、奥さんの年収が半分を超えるおそれが出てきます。 しかし、被保険者の年収を上回らず、「世帯の生活状況から総合的に考え、被保険者がその生計の中心と認められる」場合には、被扶養者の資格は失いません。


平成23年8月号 Kitamura SR News

震災における死亡、行方不明の労災請求は予測の半分

◆岩手、宮城、福島の被災3県で1535件
東日本大震災で甚大な被害があった岩手、宮城、福島3県で、勤務中などに死亡や行方不明となった労働者の遺族による労災の死亡給付の請求が1,535件となり、予測の半分程度に止まっています。
各労働局によると、8月15日までに請求があったのは、岩手399件、宮城1005件、福島131件。このうち行方不明者の家族からの請求は121件だけです。
厚生労働省は、就業人口などから3県で計約3000件の請求を予測しています。 しかし、遺族が労災保険の存在を知らなかったり、気持ちの整理がつかないまま請求に踏み切れないことが考えられます。

◆労災保険遺族給付
労災保険では、仕事や通勤中に地震や津波に遭遇して労働者が死亡した場合、妻や子供などの親族に遺族年金や遺族特別一時金300万円などが支払われる。
請求は、遺族が直接、労働基準監督署へ請求書を提出することになります。
この請求に係わる時効は、被災者が亡くなった日の翌日から5年を経過しますと、請求権が消滅してしまいますので留意が必要です。

◆死亡推定
家族が勤務中に津波に遭い、行方不明の状態が続く場合、いつ労災保険の請求ができるか?
通常、行方不明に関する労災保険の請求は、行方不明となったときから1年経過後とされています(民法30条2項の失踪宣告)
今回の震災では特例法が施行され、地震発生の3月11日から3ヵ月経過後に請求できることになりました。
地震発生日から3ヵ月間行方不明の場合またはその労働者の死亡が地震発生日から3ヵ月以内に明らかになり、かつ、その死亡の時期がわからない場合、地震の日にその労働者は死亡したものと推定され、遺族の請求により労災保険の給付が行われます。
まだ、請求を躊躇されているご遺族の方は、ぜひ労働基準監督署へ相談してほしいものです。

労使トラブル増加と解決の仕組み

◆労使トラブルは増加傾向
厳しい経済情勢を背景に、企業と従業員が雇用契約などをめぐってトラブルになるケースが増えています。 短期解決に役立つ仕組みなど、押さえておきたい項目をまとめました。

◆「労働審判制度」とは?
これは2006年から始まった制度で、民間から選ばれた労働審判員2人と裁判官で構成される労働審判委員会が調停(話合い解決)を試み、まとまらなければ労働審判を下します。 審判に異議がなければ確定となり、異議があれば通常の訴訟に移行します。調停や確定した審判は裁判上の和解と同じ効力があり、強制執行も可能です。 通常の裁判は長期化しがちですが、労働審判は「原則3回以内」で審理を終えるため、平均審理期間は74日と短期間です。

◆個人での争いが増加傾向
厚生労働省の出先機関である都道府県労働局や労働基準監督署で無料相談ができる「総合労働相談コーナー」も便利です。
ここでは企業への助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせんができますが、労働審判のように、あっせんに応じさせる強制力はありません。法令違反などの疑いがあれば、労働基準監督署が会社に対して指導を行います。
2010年度の相談件数のうち、民事上の個別労働紛争の相談は24万6,907件と過去最高だった前年度と同水準でした。組合の組織率低下などを背景に、働く人が個人で経営者側と向き合う状況が増えているためのようです。

◆トラブルが起きないことが一番
会社が残業代を法律通りに支給していなかった場合などで、労働審判などを通じ、突如数百万円規模の支払いが必要になるケースも見られます。 もちろん、トラブルが起きないことが一番ですが、トラブルが起きてしまった場合の対応を考えておく必要もあります。

女性だけでなく 男性も「更年期障害」にご注意を!

◆真面目で神経質な人に多い
男性の更年期障害の主な症状は、意欲低下や疲労感、睡眠障害、勃起減退などで、主な原因は加齢にあるとされます。
50代を中心として40〜60代で多く見られ、加齢により男性ホルモンの「テストステロン」の分泌が減ることで起こるそうです。
また、ストレスによる要因も大きく、真面目で神経質な人に多いとも言われます。

◆ホルモン補充療法には副作用も
一般的な治療はホルモン補充療法であり、男性ホルモンを2〜4週ごとに注射する治療を続けると、症状が改善することもあるようです。 ただし、ホルモン補充療法には副作用があり注意が必要です。例えば、前立腺がんの患者にとっては男性ホルモンが悪影響を及ぼす可能性があるため、治療前には前立腺がんの検査が必要です。

◆軽度のうつ病の疑いも
ホルモン補充療法により治る比率は5〜7割と言われています。専門医は、「治らない患者の中には軽度のうつ病の疑いのある人がいる」と指摘しています。病院によっては、受診した患者の約3割の人が実はうつ病だったというケースもあったようです。 男性の更年期障害と軽度のうつ病との区別は非常に難しく、併発している場合も少なからずあるようです。

◆生活習慣の見直しが必要
うつ症状などの心理的な要因が強い場合は、心療内科や精神科などを受診して様子をみてから、更年期障害の専門医を受診すると良いそうです。
また、ストレスを取り除くために生活改善が重要であり、それには家族の協力も必要です。余暇を大事にしながら、自分に合った生活を送ることが症状緩和の近道のようです。

遡及処罰禁止と二重処罰禁止

憲法は、法令・条例などすべての法律の基本ですが、直接表面に出てくるのは基本的人権とか国会法などに限られている感じです。
しかし、憲法39条で定める遡及処罰の禁止(実行の時に適法であった行為について、後に法律を作ることによって、これを遡って罰することを禁ずる)と二重処罰の禁止は一事不再理ともいうが、すでに無罪と判決で確定した行為について、それを覆して罰することはできない、と謳われています。

この精神は、社内規定にある懲戒処分その他権利・資格を奪うような刑罰に類似するものについても、なるべく遡って処罰したり、始末書を提出させた後、確定制裁をなすことは禁じられるべきというのが、学説上確立している。
今後、懲戒処分を行う場合は、十分検討した後、実行する必要があります。
平成23年7月号 Kitamura SR News

「精神疾患・うつ病」増加に伴う最近の動き

◆うつ病患者は100万人超
うつ病の代表的な症状は「抑うつ気分がほとんど1日中、毎日続く」「物事への興味や喜びが感じられなくなる」「不眠や睡眠過多がほとんど毎日ある」などとされていますが、このようなうつ病の患者は、ここ10年で2倍以上になり、今や100万人を超えています。そんな中、以下のような取組みが検討・実施されています。

◆精神疾患を加えて「5大疾病」に
日本ではこれまで、がん、脳卒中、心臓病(急性心筋梗塞)、糖尿病を「4大疾病」と位置付け、重点的に対策に取り組んできましたが、これに精神疾患(うつ病、統合失調症、認知症など)を新たに加えて「5大疾病」とする方針を厚生労働省が決めたそうです。 うつ病をはじめとする精神疾患は年々増加しているため、国では、診療の中核を担う病院の整備や訪問診療の充実など、精神疾患に関する医療体制の強化を図っていく方針です。

◆東京都によるメンタルヘルス専門サイト
自治体においても様々な取組みが行われています。例えば東京都では、今年5月に「職場のメンタルヘルス」というサイトを開設しました。 このサイトには、働く人やその家族が疲労蓄積度をチェックしたり、事業者が職場に潜むストレス要因をチェックしたりするために使えるチェックリストが掲載されており、国や東京都などが開設しているメンタルヘルスなどに関する相談窓口を探すこともできます。

◆「新型うつ」増加への対応
うつ病の治療に関しては、抗うつ薬が使用されるのが一般的ですが、プライベートでは元気なのに職場ではうつ状態の「新型うつ」にはそのような薬は効かないそうです。 企業としては、従業員がうつ症状を訴えてきた場合に、「従来型うつ」なのか「新型うつ」なのかを見極め、対応していくことも重要となってきます。

セクハラによる労災の認定基準が 緩和へ

◆「心理的負担」を重く評価
職場でのセクハラにより発症したうつ病などの精神障害の労災認定について、専門家でつくる厚生労働省の分科会は、新たな認定基準の案をまとめました。直接的なセクハラについては被害者の心理的負担が重く評価され、労災認定されやすくなります。厚生労働省では、年内にも都道府県の労働局に通知をする予定です。

◆労災の認定基準とは?
精神障害の労災認定は、その原因となった職場の出来事を心理的負担が強い順に「3」〜「1」の段階で評価したうえで、個々の事情も勘案して判断しています。現在、セクハラについては原則として中間の「2」とされ、特別の事情があれば労働基準監督署の判断で「3」に修正可能ですが、判断基準は「セクハラの内容、程度」とあるだけで、修正例は少ないようです。

◆セクハラによる労災の新基準
新基準では、どのようなセクハラなら「3」や「1」に修正されるかの例示を行っています。 「3」に修正される具体例として、「強姦や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為」、「胸など身体への接触が継続した」、「接触は単発だが、会社に相談しても対応・改善されない」、「言葉によるセクハラが人格を否定するような内容を含み、かつ継続した」などの事例を挙げ、該当すれば「3」と判定すべきとしました。 この他、長期的に繰り返されるセクハラ行為が少なくないことから、対象疾病の評価期間を、従来の「発症前6カ月」よりも前の部分も評価する等の意見も盛り込まれています。

労使トラブルに「合同労組」が 関与するケースが増加

◆「合同労組」関与の事件割合が過去最高
近年、労使トラブルに「合同労組」「ユニオン」などと呼ばれる団体が関与するケースが増えていると言われていますが、そのことがデータ上からも明らかになりました。 先日、中央労働員会から、「平成22年 全国の労使紛争取扱件数まとめ」が発表されましたが、「合同労組」が関与した集団的労使紛争事件の割合が69.8%(前年比3.1%増)となり、過去最高となったことがわかりました。

◆「合同労組」の特徴
この「合同労組」には、"柔軟路線"をとる組合、イデオロギー性の強い"労使対立路線"をとる組合など、その性格は様々です。また、"労使対立路線"の組合の中にあっても、冷静に落としどころを考える組合、逆にあまり考えない組合もあるようです。 さらに、組合の交渉担当者によって会社への対応が変わってくるケースもあります。また最近では、小規模な「地域労組」(コミュニティ・ユニオン)と言われる団体も増加しております。

◆駆け込み訴え事件の増加
労働者が、労使トラブルの解決のため合同労組に加入し、その合同労組が使用者に団体交渉を申し入れてくる例も多くあります。 先ほどの中央労働委員会のまとめでは、懲戒や解雇などの処分を受けた後に労働者が加入した組合から調整の申請があった「駆け込み訴え事件」の占める割合は36.8%(前年比横ばい)で、過去最高となっています。

◆対応として重要なことは?
これら「合同労組」「ユニオン」などから団体交渉の申入れがなされた場合、初めにとるべき対応が重要となります。安易に団体交渉の申入れに応じてはいけませんし、組合側が求めてくる「労働協約」の締結要求にも注意が必要です。 団体交渉の申入れがあった場合には、専門家に相談する等しながら、しっかりと事前準備を行うことが重要です。

社会保障改革案の「安心3本柱」とは?

◆「安心3本柱」の内容
政府から、「安心3本柱」を中心とした社会保障改革案の内容が発表されました。 この「安心3本柱」とは、(1)パートなどの非正規労働者への社会保険の適用拡大、(2)幼稚園や保育園の垣根をなくす「幼保一体化」の推進等による子育て基盤の強化、(3)医療・介護などを中心に自己負担の合計額に上限を設定する「合算上限制度」の導入です。 以下では、主な年金制度改革案について見ていきます。

◆年金制度の改革案
年金制度改革案の具体策は、パートなどの非正規労働者の厚生年金の加入条件を、現在の「週30時間以上勤務」から「週20時間以上勤務」に緩和すること、また、現在は育児休業中だけとしている厚生年金保険料の免除期間について産前・産後の休業期間まで広げるということです。一方、高所得の会社員については保険料の負担増を求める方向です。厚生年金保険料は報酬に応じて決まる仕組みになっていますが、改革案では上限額を引き上げる考えです。

◆60歳代前半の就労促進
この他、60〜64歳で働きながら厚生年金を受け取る場合、年金と給与の合計額が月額28万円を超えると、28万円を超えた分の半分だけ受け取る年金が減り、46万円超では給与の増加分だけ年金がカットされます。 現在、この仕組みで約120万人が総額1兆円程度を減額されていますが、厚生労働省では、給与と年金の合計額が46万円を超えるまで年金を減額しない制度に変更し、年金の減額幅を縮小することにより高齢者の就労を促す考えです。
平成23年6月号 Kitamura SR News

被災者雇用開発助成金

◆5月2日以降に被災者を雇入れた事業主に支給されます。
東日本大震災による被災離職者および被災地域に居住する求職者の方を、ハローワーク等の紹介により、継続して1年以上の雇用することが見込まれる労働者として雇入れる事業主に対して、助成金を支給します。

◆対象労働者
1.震災により離職された方(以下の@からBのいずれにも該当する方)
@被災地域(震災に際し、災害救助法が適用された市町村の地域)において就業してた方
A震災後に離職し、その後安定した職業についたことのない方
B震災より離職を余儀なくされた方
2.被災地域に居住する方
@震災後、安定した職業についたことのない
A震災により被災地域外に住所または居所を
変更している方を含み、震災後に被災地域に
居住することとなった方を除く

◆支給額
1.短時間労働者以外   大企業   50万円
                  中小企業 90万円
2.短時間労働者      大企業   30万円
                  大企業   60万円

今年の新入社員は何を重視?理想の上司像は?

◆「良好な人間関係」を最も重視
株式会社毎日コミュニケーションズから、今年4月入社の新入社員を対象に実施した「2011年マイコミ新入社員意識調査」(984名が回答)の結果が発表されました。
この中で、「社会人として仕事をしていく上で重要だと思うこと」(複数回答)について聞いたところ、回答の上位ベスト3は次の通りでした。
(1)良好な人間関係(69.8%)
(2)挑戦(46.2%)
(3)楽しさ(43.8%)


◆理想の上司は「指示・指導が的確」
上記と同じ意識調査の「理想の上司像」(複数回答)に関する質問では、次の通りの結果となりました。
(1)指示・指導が的確である(67.8%)
(2)よくアドバイスをくれる(47.8%)
(3)相談に乗ってくれる(45.4%)

◆新社会人の多くは「上司に本音を語れない」
また、レジェンダ・コーポレーション株式会社では、今年4月に新社会人となった入社1年目と入社2年目の社員を対象に行った意識調査(665名が回答)の結果を発表しました。 その中で、「目上の人に対して仕事上の本音の話ができるか」を尋ねたところ、入社1年目の人のうち63.8%が「本音を語れない」(「ためらう」が57.9%、「できない」が5.9%)と回答しました。これが入社2年目の人になると57.2%に下がります。

◆20代の若者は「伝える力」が低い!?
逆に、先輩社員は20代の後輩社員をどのように見ているのでしょうか。株式会社電通では、首都圏の会社員800名を対象に「伝える力」に関するアンケート調査を行いました。 その結果によれば、30〜50代の会社員のうち、52.5%の人が「新入社員をはじめ20代前半の若者の『伝える力』は低くなっている」(「低くなっていると思う」および「どちらかと言えば低くなっていると思う」の合計)と回答したそうです。

パート社員から正社員への登用の現状と今後

◆パート社員として仕事に復帰
結婚・出産などを理由に仕事を辞めて一旦家庭に入ったものの、パート社員として仕事に復帰し、その後正社員に登用されて活躍する女性が増えています。 労働力人口が減っていく中、柔軟な働き方の実現は企業の人材確保には欠かせません。

◆優秀な人材確保の一選択肢
パート社員の正社員登用により、優秀な人材を確保できます。その反面、正社員になると雇用調整が難しく、一般的に人件費も高まります。 そのため、登用制度を有する企業では、パート社員を正社員に登用する選考過程において能力を厳しく見極める傾向にあります。 その結果、パート社員から登用された正社員は即戦力として評価されることが多く、新卒採用と中途採用に加えて、新たな採用ルートとして確立しつつあります。

◆正社員への登用の現状
昨今は、パート社員が正社員並みに企業内で基幹的な役割を担うケースも増え、仕事内容と雇用条件との間にギャップも見られます。 2008年に「改正パートタイム労働法」が施行され、正社員と均等のとれた待遇の確保や正社員への転換推進措置などが企業に義務付けられました。
しかし、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の「短時間労働者実態調査」(2010年)によると、正社員への転換推進措置をとっている企業は約5割にとどまっています。

◆結婚・子育て後のやる気を活用
 パート社員のさらなる待遇改善に向けて、厚生労働省は今年2月に「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」を立ち上げ、今夏に報告書をまとめる予定です。 すべてのパート社員が正社員への登用を望んでいるわけではありませんが、やる気と能力のあるパート社員を正社員に登用し、活躍の場を提供することは、企業にとっても様々な利点があります。

震災発生後に外国人労働者の不足が深刻に

◆幅広い分野で影響が
震災の影響を受け、外食産業や農業などの分野で人手不足が問題になっているようです。これは、原発事故等を不安視する外国人の帰国が増えているためです。 状況が多少落ち着き、再び日本に戻ってくるケースも出てきているようですが、外国人労働者に依存していた企業では、対策が求められています。

◆原発事故を不安視して帰国する外国人
法務省によれば、日本における外国人登録者数は約218万人(2009年末)です。中でも約68万人で最も多い中国人は重要な労働力として役割が高まっています。 原発事故発生後、帰国者が増加し、中国政府は航空便を増やすなどして約9,300人を自国に戻したとされています。 この影響をまともに受けたのは、接客スタッフなど多くの外国人を雇う外食産業です。外食産業では営業時間が深夜に及ぶなど、労働条件の厳しさが見立つため、慢性的な人手不足に悩まされていますが、それを支えていたのが外国人の労働力でした。

◆農業分野でも人手不足が問題に
外国人の帰国問題は農業分野でも影響が出ています。外食産業と同様、重要な労働の担い手であった外国人が帰国してしまったために「出荷間近で人手がほしい」と苦慮しています。 残された日本人が長時間働くしかないのが現状ですが、被災して生産を続けることができない生産者たちを募集して受入れる仕組み作りなども政府に期待されています。

◆暮らしやすく働きやすい日本に
余震と原発の不安が治まらない中、外国人が戻ってくることは期待できず、企業には何らかの対応策が迫られます。今後、外国人も暮らしやすく、働きやすい日本に進化することを願います。
平成23年5月号 Kitamura SR News

8割が自宅待機に賃金全額支給

東京経営者協会は、「東北地方太平洋沖地震による人事・労務に関する緊急アンケート調査」結果をまとめました。震災によって操業時間の短縮などの影響を受けた企業のうち、何らかの勤務体制上の措置を講じた企業は9割に上がり、従業員に自宅待機を命じた企業の8割が、待機中の賃金を減額せずに支給したことがわかった。2012年新卒者の採用活動については、4割超が、選考開始時期を遅らせたり、選考期間を延長するなど、被災した学生に配慮した日程に変更している。

◆精神疾患を加えて「5大疾病」に
日本ではこれまで、がん、脳卒中、心臓病(急性心筋梗塞)、糖尿病を「4大疾病」と位置付け、重点的に対策に取り組んできましたが、これに精神疾患(うつ病、統合失調症、認知症など)を新たに加えて「5大疾病」とする方針を厚生労働省が決めたそうです。 うつ病をはじめとする精神疾患は年々増加しているため、国では、診療の中核を担う病院の整備や訪問診療の充実など、精神疾患に関する医療体制の強化を図っていく方針です。

被災者の就労支援・雇用創出と 雇用調整助成金

◆プロジェクト第1段階
東日本大震災などの発生を受け、政府が設置した「被災者等 就労支援・雇用創出推進会議」は、被災者の就労支援、雇用創出を促進するため、「『日本はひとつ』しごとプロジェクト」第1段階(フェーズ1)を発表しました。 まずは、復旧事業などによる被災者への就労機会の創出や被災地企業・資財の活用、希望する被災者が被災地以外の地域で就労可能とすることなどを実施する考えです。

◆主な施策内容
(1)ハローワークを活用した被災者向けの求人確保ときめ細かな就職支援
(2)雇用調整助成金制度の拡充
(3)3年以内の既卒者を採用する企業への奨励金(被災地に居住する方を採用した場合120万円を支給(従来は100万円))をはじめとする助成金の拡充
(4)震災被害者への失業手当の特例支給
(5)地域障害者職業センターにおける障害者の雇用継続のための特別相談の実施等

◆雇用調整助成金の拡充
上記(2)の雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を一時的に休業などさせた場合に、休業手当相当額の一部(中小企業で原則8割)を助成する制度です
。 震災被害に伴う経済上の理由により事業活動が縮小した場合、この雇用調整助成金が利用でき、さらに、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、長野県、新潟県の9県のうち、災害救助法適用地域にある事業所については、次の(A)〜(C)の通り、支給要件が緩和されます。
(A)今回の地震に伴う「経済上の理由」により、最近1か月の生産量、売上高などがその直前の1か月、または前年同期と比べ5%以上減少していれば対象となる。
(B)平成23年6月16日までの間については、災害後1か月の生産量、売上高などがその直前の1か月、または前年同期と比べ5%以上減少する見込みである事業所も対象となる。
(C)平成23年6月16日までの間に提出された「計画届」については、事前に届け出たものとして取り扱う。

災害発生時に活用できる公的支援制度

◆生活を支え、暮らしを立て直すために
今回のような大震災・大災害が発生した場合 、被災者の生活を支え、少しでも早く暮らしを立て直すために、様々な公的支援制度を活用することができます。

◆「生活資金」と「住宅再建」
被災してまず困ることは、生活資金の工面が 挙げられますが、生活資金を国が無利子で貸してくれる「生活福祉資金(緊急小口資金)」を利用することができます。本来は低所得者向けの制度ですが、今回の大震災に伴う特例で、被災者は、所得に関係なく原則として10万円以内(世帯内に死亡者や要介護者がいる場合などは20万円)まで融資が受けられます。 また、災害が起こった際に重要となるのは住宅 再建です。阪神・淡路大震災を契機に作られた「被災者生活再建支援制度」では、住宅の被害状況や再建方法に応じて、最大で300万円まで支給されます。

◆社会保険制度の活用も
健康保険では、怪我などで働けない場合に最長1年6カ月間、傷病手当金として収入の3分の2が支給されます。地震に伴う怪我なども対象となり、また、要件を満たせば遺族年金や障害年金などの支給対象にもなります。
業務中・通勤中の怪我などが対象の労災保険は、原則として自己負担なしで治療が受け続けられるなど、補償が手厚い制度です。ただし、業務との因果関係が必要なため、「地震が原因であれば対象外」と思われがちですが、仕事中に地震による建物倒壊などで被災した場合も、仕事の環境がもともと危険だったとして労災が適用された事例が過去に多くあります。
また、厚生労働省は、労災認定を行う都道府県の労働局に対し「天災地異による災害なら業務起因性がないといった予断をもたないように」といった注意を促しています。

4月からの社会保険関係の制度改正

◆「協会けんぽの保険料率」の改定
協会けんぽにおける保険料率が、平成23年4月給与天引き分から、全国平均で9.50%(従来は9.34%)に引き上げられています。 保険料率の高い順にならべると次の通りです。最も高いのは、北海道、佐賀県の「9.60%」、最も低いのは「長野県」の9.34%となっています。
・9.60%:北海道、佐賀県
・9.58%:福岡県
・9.57%:香川県、大分県
・9.56%:大阪府、徳島県
・9.55%:岡山県、高知県、熊本県
・9.54%:秋田県、山口県
・9.53%:広島県、長崎県 ・9.52%:石川県、兵庫県、奈良県
・9.51%:青森県、和歌山県、島根県、愛媛県、鹿児島県
・9.50%:宮城県、福井県、岐阜県、京都府、宮崎県
・9.49%:神奈川県、沖縄県
・9.48%:東京都、愛知県、三重県、滋賀県、鳥取県
・9.47%:福島県、栃木県、群馬県
・9.46%:山梨県
・9.45%:岩手県、山形県、埼玉県
・9.44%:茨城県、千葉県、富山県
・9.43%:新潟県、静岡県
・9.39%:長野県


◆「出産育児一時金制度」の見直し
出産育児一時金の支給額は、引き続き「原則42万円」となっていますが、直接支払制度を継続したうえで、小規模施設などでは「受取代理」(妊婦などが、加入する健康保険組合などに出産育児一時金の請求を行う際、出産する医療機関等にその受け取りを委任することにより、医療機関等へ直接出産育児一時金が支給される)が制度化され、窓口での負担軽減が図られています。

◆在職老齢年金の支給停止基準額の改定
在職老齢年金の支給停止の基準額について、「47万円」が「46万円」に改定されました。 なお、支給停止の基準額は、賃金の変動などに応じて自動的に改定される仕組みとなっており、平成23年度については、平成22年の名目賃金の下落(マイナス2.0%)により、「47万円」が「46万円」に引き下げられました。
平成23年4月号 Kitamura SR News

「求人を通じ被災地支援」の活動を紹介

東日本大震災で職を失った被災者の方々が新たな職探しなど再建に向けて動き始めています。ただ、沿岸は基幹産業が壊滅した地域や採用を取りやめる企業も多く、職に就き、元の生活を取り戻すまでの道程は、長く険しいものと予想されます。被災地支援の一環として、被災者の職・住の支援に乗り出す企業も出てきました。
中央区の運送業「青葉運輸」では、被災地のハローワークに配送ドライバーの募集をかけました。直接、ハローワーク釜石に出向き、求人ポスターを貼り、東北地方で開設しているハローワークにも求人公開しました。同社は「15名程度の採用を予定している。避難所では家族のプライバシーを守るのは難しい。そのため家族でも住める寮を用意した」と話しています。
移動手段を持たない被災者も考慮し、4月2、3日に担当者が被災地に出向き、巡回面接などを行います。
採用が決まれば上京の旅費を支給し、家族用・単身用の寮費は6カ月間無料とする旨、求人票に記載されています。もう既に10名前後の応募者が来ているそうです。
今、本社総務部門の社宅担当者は、寮の確保のため昼夜走り回っています。

今回の地震に伴う休業に関する取扱いについて
(休業手当の支払義務は?)


◆事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労基法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由」による休業にあたるか?

労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、@その原因が事業の外部より発生した事故であること、A事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければなりません。
今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。ただし、従来、労働契約、労働協約、就業規則、労使慣行に基づき、天災事変等の不可抗力による休業中についても休業手当を支払われていた場合、今般の計画停電に伴う休業については支払わないとすることは、労働条件の不利益変更に該当します。

◆事業場は直接的な被害を受けていないが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合

今回の地震より、事業場の施設・設備は直接的には被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。ただし、休業について@その原因が事業の外部より発生した事故であること、A事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす場合には、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当しないと考えられます。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があります。

◆今回の地震に伴って計画停電が実施され、停電の時間は休業とする場合、労基法第26条の休業手当の支払義務は

事業場に電力が供給されないことを理由として、計画停電の時間帯、すなわち電力が供給されない時間帯を休業する場合は、原則として、労働基準法第26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当せず、休業手当を支払わなくても労基法違反となりません。

◆今回の地震に伴って計画停電が実施される場合、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて1日全部を休業とする場合、労基法第26条の休業手当の支払義務は

計画停電以外の時間帯については、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。ただし、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて、原則として、労働基準法第26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当せず、休業手当を支払わなくても労基法違反とならないと考えられます。

◎特例的な失業給付の支給

ハローワークでは被災地の事業所が今回の震災被害を受けたことにより休業や再雇用予約付で一事離職し、賃金が支払われない労働者に、特例的に失業給付を支給する特例措置を実施します。

年金保険料「免除・猶予制度」の活用

◆保険料の納付率は過去最低に

平成21年度における国民年金保険料の納付率が59.8%と、過去最低となりました。保険料を納めないと、将来受取れる年金が減ったり全く受取れなくなったりすることから、こうした事態を避けるための制度を知ることが必要です。

◆滞納者は増加傾向に

国民年金は、全ての国民が加入することが義務付けられた年金制度であるにも拘らず、滞納者は増加傾向にあります。これは年金制度への「不信感」や「不安感」が増したことに加え、正社員と比べ所得の低いパートタイマー労働者が増えたことも一因とされています。
また、大学生の就職内定率が改善されなければ、パート社員やアルバイトで働く若者が増え、未納者はますます増える可能性があります。

◆将来確実に受取るために

 「所得が少なくなった」という理由で国民年金保険料が納められなくなった人には、免除や猶予の制度が設けられています。 年齢に関係なく所得の低い人が利用でき、免除額が所得基準に応じて変わる「免除制度」、そして、20歳以上の学生が利用できる「学生納付特例制度」平成17年4月に10年間の時限措置として導入され30歳未満の若者を対象とした「若年者納付猶予制度」です。 これらの制度には、所得基準などが設けられているため、利用するには自分が対象となり得るかの確認が必要です。

◆書類1枚で大きな差が

免除や猶予の制度を利用する利点は2つです。1つは障害年金や遺族年金の受給資格期間に算入されるという点です。例えば、全額免除を受けていれば、ケガや病気で障害者になったり、死亡したりした場合でも、障害年金を本人が受取れたり、残された配偶者や子供が遺族年金を受取れたりします。もう1つは、老齢年金の受給資格期間に算入されるという点です。老齢年金は国民年金に原則25年加入していないと受給されません。未納状態が長く続いて受給資格期間が不足している人は将来年金を受取れなくなりますので、免除や猶予の制度を利用して、保険料未納期間をなくすことが必要です。
平成23年3月号 Kitamura SR News

通勤途中の事故でけがパートでも労災保険が使える!
◆正社員に限定せず
仕事や通勤の途中でけがをしたり病気になったとき、頼りになるのが労災保険です。国が治療費を肩代わりするほか、仕事ができなくなり賃金をもらえなくなった被害者に収入を補償し、亡くなった場合は遺族の生活を支援します。
加入は個人単位でなく、事業所ごとです。一部の例外を除き、一人でも労働者を雇っている事業主は加入しなくてはならず、保険料は全額、事業主が負担します。その事業所に有給で働いている労働者は、雇用形態を問わず、正社員のほか、パートや契約社員、アルバイトも補償が受けられます。

◆通勤中のけがも対象
補償を受けるには、労働基準監督署から「業務上災害」または「通勤災害」との認定を受ける必要があります。
業務上災害は、被災時に業務中だったことに加え、仕事に関連して被害にあったことが要件です。
通勤災害は、自宅と職場の間を合理的な経路・方法で往復し、通勤に関連した被害であることが必要です。通勤途中で寄り道をして、その後の経路で被害あっても通勤災害とは認められません。
例えば、仕事帰りに洋服を買う、居酒屋で飲む、映画館に入るなどした後の被災は対象外です。ただし、日常生活に必要な寄り道、例えば、夕食の惣菜を買う、病院へ行く、選挙の投票をする、独身者が食堂に寄るなどしたときは、その後の帰宅経路も通勤途中となります。
以前の相談で、自転車で通勤している途中、転倒し、右手を骨折した。しかし、会社にはバス通勤と申告しており、所定の通勤方法でないからと会社は「通勤災害」の手続きを渋ったケースがありましたが、直接、労働基準監督署に請求するよう回答しました。結果、療養給付ならびに休業給付の支給が受けられました。
 「自転車」か「バス」かは、会社内の服務規律・懲戒の問題で、「合理的な経路・方法」であれば認定されます。
また、今回の大震災の影響で、交通機関がマヒし、徒歩で帰宅する際、足を挫いた、転んで手にけがした場合、よほど居酒屋に立ち寄ったとかを除き、通勤災害と認定されるでしょう。

厚労省・既卒採用奨励金 適用者5,900人に到達
◆3年以内既卒者
厚生労働省が昨年9月にスタートさせた、3年以内既卒者(平成20年3月以降、卒業者)を採用する企業への奨励金の適用を受けて雇用を開始した者が、今年1月始めの段階で5,900人に達しました。奨励金は、有期雇用から正規雇用に移行させた企業には1人当たり50〜125万円を支給されます。全都道府県に設置した「新卒応援ハローワーク」の利用も活発で、来所者延べ9万人のうち約7,600人の就職が決まりました。

◆奨励金の一覧
@既卒者育成支援奨励金
今後、人材需要が見込まれる成長分野の中小企業は、3年以内既卒者を6ヶ月間有期雇用し、その間に、座学等(Off−JT)の研修を行い、その後、正規雇用に移行させた場合、事業主に対し、対象者1人当たり最大125万円の奨励金が支給されます。
A3年以内既卒者トライアル雇用奨励金
 高校・大学等を卒業後3年以内の者を正規雇用に向けて育成するに当たり、まずは有期雇用(原則3ヶ月)で雇用し、その後、正規雇用に移行させた事業主に最大80万円が支給されます。
B3年以内既卒者採用拡大奨励金
大学等を卒業後3年以内の者を正規雇用し、正規雇用から6ヶ月経過後に、100万円を支給されます。

始業時刻・終業時刻と出社時刻・退社時刻は同じ!?
◆労働基準法の原則
 所定労働時間は、指揮命令に基づく実作業の開始および終了までを労働時間として把握する「実労働時間主義」を採用します。
必ずしも「終業時刻を過ぎて仕事をしたら残業」ということになりません。また、自主的な早出や延長は基本的には、ここでいう労働時間には含まれません。
「始業時刻から1時間はウォーミングアップ」といった従業員を始業時刻に出社しているからといって同等に処遇するのは望ましくないでしょう。
「始業時刻=実作業の開始時刻」という従業員に対する意識付けが必要です。

◆実務に則した就業規則例
(労働時間)
第○条 所定労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。
2.始業時刻(会社の指揮命令に基づく実作業の開始時刻をいう。以下同じ)、終業時刻(会社の指揮命令に基づく実作業の終了時刻。以下同じ)および休憩時間は次の通りとする。
ただし、パートタイマー等に関しては、1週40時間、1日8時間の範囲内で個別に定める。

高額医療費における 患者の立替払いが不要に
◆平成24年度から全面スタート
厚生労働省は、がんや難病などの高額な治療薬が増え、患者の立替えの負担が大きくなっている現状を踏まえ、「高額療養費制度」について、上限額を超える部分の患者の立替払いをなくす方針を示しました。平成24年度から、すべての医療機関・薬局で対応させる方針のようです。

◆高額療養費制度とは?
高額療養費制度は、患者の収入に応じて医療費に一定の金額(自己負担限度額)が設けられ、それを超えた場合に、一旦、病院の窓口で本人負担分を支払い、支給申請をすることにより、患者が加入する保険者から後から払い戻される仕組みです。1カ月の自己負担限度額は、70歳未満で「上位所得者」(標準報酬月額53万円以上)の場合は15万円強、「一般所得者」の場合は8万円強、「低所得者」(住民税が非課税)の場合は35,400円です。
現在の制度では、原則として医療費の3割を医療機関・薬局の窓口で支払い、上限額を超える分について、後から払い戻しを受けます。

◆「限度額適用認定証」の発行
制度の変更後は、費用の「立替え」と「払戻し」の手間がかからなくなります。事前に、自分の加入する保険者から所得区分の記載されている「限度額適用認定証」の発行を受け、医療機関・薬局の窓口に提示すれば自己負担の上限額までの支払いで済み、超過分の医療費については、医療機関・薬局が患者に代わって保険者に請求します。

◆治療薬などが高額化の傾向
最近は、がんや難病などの治療薬が高額になる傾向があります。例えば、血液がんの一種の慢性骨髄性白血病の治療薬(グリベック)の場合は、1カ月あたりの薬代が約33万円、同種の治療薬(タシグナ)の場合は約55万円かかるそうです。患者が一度に多額の現金を用意する必要がなくなる今回の制度変更は非常に有効です。本年度から、まずは一部の医療機関・薬局で対応可能となり、24 年度からはすべての医療機関・薬局で対応できるようです。

=今月はここまで。また次回お会いしましょう=
平成22年12月号 Kitamura SR News

平成22年9月以降に新設・改正された
厚生労働省関係の奨励金・助成金

◆新設の奨励金
(1)3年以内既卒者トライアル雇用奨励金
「既卒者トライアル求人」をハローワークに提出し、ハローワーク紹介により、高校、大学等卒業後3年以内の方を原則3カ月間の有期雇用として雇入れ、その後に正規雇用で雇入れた事業主に支給される奨励金です。
1人当たり月額10万円、トライアル後に正規雇用に移行した場合1人当たり50万円が支給されます。
(2)3年以内既卒者採用拡大奨励金
卒業後3年以内の大卒者等も応募可能な新卒求人を提出し、ハローワーク紹介により、卒業後3年以内の既卒者を正規雇用として雇入れた事業主に支給される奨励金です。
雇入れから6カ月経過後に100万円が支給されます。こちらは同一事業主1回限りの奨励金です。

◆改正された助成金
(1)雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金の要件緩和(平成22年12月1日(大企業は12月13日)以降1年間緩和)
12月から1年間に限り、生産量要件が次のいずれかにも該当する場合に適用されます。
@直近3カ月の生産量が3年前の同時期に比べ15%以上減少していること
A円高の影響により生産量が減少したこと
B直近の経常損益が赤字であること
(2)雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金の不正受給防止対策  第3弾(11月1日)
今年度に入り7月までの4カ月間で54事業所(約10億7,617万円)の不正受給について処分が行われ、11月から更に不正受給防止対策が強化されています。

いまどきの「課長」の実態は?
◆一部上場企業の課長428人の回答
産業能率大学がインターネット調査会社を通じて「上場企業の課長を取り巻く状況に関する調査」を今年9月に行い、その結果が公表されました。 従業員が100人以上の上場企業に勤務し、部下が1人以上いる「課長」428人が、「昇任前の経験」、「現在の悩み」、「上司の支援」、「今後のキャリア」などについて回答しています。

◆多くはマネージャー兼プレイヤー
まず、「プレイヤーとしての仕事の割合」についての質問では、「0%」と答えた人はわずか1.4%でした。プレイヤーとしての活動割合が半分より多い人は4割を超えています。
プレイングマネジャー化しているケースが多く、多くの課長がプレイヤーとしての活動を兼務していることがわかります。この傾向は、中小企業においてはなおさら強くなるでしょう。

◆仕事上の悩みとメンタルヘルス
次に、「仕事上の悩みを相談できる人がいるかどうか」との質問には、「いる」と答えた人が50.2%、「いない」と答えた人が49.8%と、ほぼ半数に分かれました。
「いる」と答えた人に対して「どのような相談者がいるのか」を尋ねたところ、「会社の上司」「会社の同僚」が多数でした。
また、「自分自身のメンタルヘルスに不安を感じたことがあるか」との質問には、「ある」と答えた人が43.7%、「ない」と答えた人が56.3%でした。その原因としては、「上司との人間関係」、「成果創出へのプレッシャー」、「仕事の内容」などが多くありました。
自分の身近に相談できる人がいるかどうかも、不安の有無に関係しているものと思われます。

◆遣り甲斐をもって仕事に取り組めるか
自分が「課長としてイキイキと働いていると思うか」との質問では、「どちらかといえばイキイキと働いている」が54.9%、「イキイキと働いている」が6.8%でした。逆に言えば、イキイキと働いていない人が約4割もいるということになります。
これら課長クラスにある方たちが、イキイキと遣り甲斐をもって仕事に取り組める環境をつくることが会社の仕事でもあり、それらができている会社はきっと成果を残している会社ということになるでしょう。

賃金収入は減少傾向、4人に1人は「失業の不安」
◆労働者にとっては厳しい状況
連合総研では、10月に労働者を対象に実施した「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」(勤労者短観)の結果を発表しました。
「景気や勤め先の経営状況」「賃金収入と失業不安」などの項目について調査しており、労働者の厳しい状況がうかがえる結果となっています。

◆賃金収入は減少傾向に
1年前と比較した賃金収入の増減については、「減った」(32.9%)と回答した人が3割を超えており、前回調査(34.6%)と比べてもほとんど改善が見られませんでした。
また、今後1年の賃金収入見込みについて「減ると思う」(25.5%)と回答した人が前回調査(21.8%)を上回り、「増えると思う」(16.9%)と回答した人は前回調査(21.0%)から減少しています。悲観的な見方をする人の割合が高まっています。

◆4人に1人が「失業の不安」
次に、「今後1年間の失業の不安」について「感じる」と回答した人は25.0%で、過去最高を記録した昨年同月(28.3%)よりは低下しましたが、一昨年の同月調査(23.8%)を上回っています。
また、非正社員(男性53.6%、女性34.8%)や20代(32.9%)が感じる失業の不安は、相対的に高くなっています。

◆所定外労働、賃金不払い残業
このアンケート調査では、他にも「所定外労働の状況」「賃金不払い残業の状況」などについての調査を行っており、非常に興味深いものとなっていますので、連合総研のホームページ(http://www.rengo-soken.or.jp/webpage/21.html)を覗いてみてください。

解雇予告手当は賃金に準ずる
◆解雇予告手当は賃金に準ずる
会社が従業員を解雇しようとするときには、30日前に解雇予告するか、平均賃金の30日分に相当する解雇予告手当を支払わなければなりません。これは労働基準法第20条で定められた解雇手続きですが、就業規則で定めた解雇事由に該当するときでも、労働者がそのまま応じると限らない。労働条件相談コーナーに駆け込んだり、地域ユニオン(合同労組)に加盟するなど強硬に抵抗する場合も珍しくない。解雇予告手当についても受取拒否に出る場合もあります。
ところで、解雇予告手当は賃金ではない。しかしながら行政解釈では、賃金に準じて扱うこととしており、労基法第24条で定める賃金支払いの5原則が適用されます。判例では、この解雇予告手当を小切手で支払ったため、通貨払いでないことを理由に解雇予告が否定されたケースもあるので、細心な注意を要します。

◆解雇予告手当の支払い時期
(1)即時解雇しようとする場合は、解雇と同時に支払うことが必要です。
(2)解雇予告と解雇予告手当を併用する場合は、遅くても解雇の日までに支払うことが必要です。

事務所から一言
今、当事務所ホームページが工事中です。
来年には、ご覧頂けるかと存じます。
今年も1年誠にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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