東京都江戸川区の社会保険労務士事務所、ヒトと会社の絆を結ぶエキスパート

北村社労士事務所事務所通信

最新号

平成29年10月号 Kitamura SR News

従業員が「iDeCo」に加入する際に事業主が行わなければならない事務手続とは?

◆改正を契機に加入者数が増加
今年1月からの改正確定拠出年金法の施行により、個人型確定拠出年金(通称:iDeCo)は、基本的に20歳以上60歳未満のすべての方が任意で加入できるようになりました。 この改正により、今年に入ってから加入者が大幅に増加しており、平成29年6月時点における加入者数は54万9,943人(前年同期比203.8%)となっています。

◆iDeCoの仕組み
iDeCoは、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金の1つであり、加入者の老後の所得確保の一助となる制度です。 加入者が自ら定めた掛金額を拠出・運用し、原則60歳以降に、掛金とその運用益の合計額をもとに給付額が決定し、給付を受ける仕組みとなっています。

◆事業主が行わなければならない事務手続は?
企業で働く従業員がiDeCoに加入する際、事業主が行わなければならない事務手続が発生しますが、そのポイントは以下(1)〜(5)の通りです。厚生労働省では、従業員がiDeCoへの加入を希望した場合に速やかに加入できるよう、事業主への協力を呼びかけています。 (1) 事業所登録 加入者となる従業員(2号被保険者)を使用する事業所は、国民年金基金連合会(国基連)に事業所登録を行います。 (2) 事業主証明書の記入 加入を希望する従業員から提出される事業主証明書に必要事項を記入します。 (3) 事業主証明(年1回) 年に1回、国基連が加入申出時に得た情報をもとに、加入者の勤務先に資格の有無の確認を行いますが、その際に事業主の証明が必要となります。 (4) 事業主払込の場合の掛金納付 加入者が事業主払込を希望する場合、事業主から国基連に掛金を納付します。 (5) 年末調整 所得控除があるため、加入者が個人払込を選択した場合は年末調整を行います。

法令違反の多い「自動車運転者を使用する事業場」の実態

◆約83%の事業場で法令違反
厚生労働省から、トラック、バス、タクシーなどの自動車運転者(ドライバー)を使用する業場に対して行われた監督指導や送検の状況(平成28年)が公表されました。 監督指導が行われた事業場は4,381事業場で、前年の3,836事業場より多くなっています。 このうち、時間外労働、賃金台帳の記載内容、健康診断などに関して労働基準関係法令違反が認められたのは3,632事業場(82.9%)、拘束時間や休息期間などに関する改善基準告示違反が認められたのは2,699事業場(61.6%)となっています。

◆監督指導等の状況
監督が実施された事業場数の内訳は、トラック:3,105、バス:487、ハイヤー・タクシー:405、その他:384でした。労働基準関係法令違反については、特にハイヤー・タクシーで86.7%の違反率となっており、主な違反事項としては、どの業種でも「労働時間」「割増賃金」が多くを占めています。また、改善基準告示違反については、「最大拘束時間」「総拘束時間」「休息時間」「連続運転時間」「最大運転時間」の順で多く指摘されています。 重大または悪質な労働基準関係法令違反による送検件数は60件となっており、前年より8件増えています。すべての業種でもすべて前年より送検件数が増加しており、特にトラックは上昇傾向が続いています。

◆省庁間の連携による監督指導・合同監督
以前から、労働基準監督機関と地方運輸機関が、臨検監督等の結果(改善基準告示違反等)を相互に通報する取組みが行われています。労働基準監督機関から地方運輸機関への通報件数は、前年より増え867件となっています。「労基署の監督だから大丈夫」というような考えは、もはや通用しないでしょう。 また、平成28年は、ツアーバスを運行する貸切バス事業場に対する緊急の集中監督指導が行われたため、労働基準監督機関と地方運輸機関による合同監督・監査が行われたバス事業場は130に上りました(平成27年は17事業場)。社会的に注目される事件・事故を契機に、行政の対応が強化されます。

◆健康面の取組みが重要
近年、「健康経営」という言葉もあるように、従業員の健康について社会的な関心が高まっていますし、ドライバーに対する健康診断等も監督・監査での指摘事項に多く上がっています。人手不足の状況の中、ドライバーが健康を害することはさらなる人手不足を招きますので、「健康」を中心にした労務管理を考える必要がありそうです。

職場のストレス調査結果にみる「相談対応」の重要性

◆「労働安全衛生調査」最新版を公表
厚生労働省は、事業所が行う労災防止活動や安全衛生教育について調査した「労働安全衛生調査(実態調査)」の平成28年の結果を公表しました。ここでは、調査結果から「職場のストレス」についてまとめてみます。

◆従業員は何にストレスを感じているのか
同調査によれば、「現在の自分の仕事や職業生活に関することで強いストレスと感じる事柄がある労働者」の割合は59.5%でした。この割合は平成25年以降、増加傾向にあります。具体的な強いストレスの内容(複数回答)では、「仕事の質・量」(53.8%)が最多で、「仕事の失敗、責任の発生」(38.5%)、「対人関係(ハラスメントを含む)」(30.5%)と続いています。

◆従業員の心の健康のための4つのケア
強いストレスによる労働者のメンタルヘルスの不調は、精神疾患の発症、パフォーマンスの低下をはじめ、様々なトラブルの要因となります。厚生労働省は、「労働者の心の健康の保持推進のための指針」において、メンタルヘルスケアの基本的な考え方として、以下の4つのケアが重要であるとしています。 (1) セルフケア(従業員自らが行う、ストレスへの気づきと対応) (2) ラインケア(管理監督者が行う、職場への改善と相談対応) (3) 産業医・衛生管理者等によるケア (4) 外部の機関・専門家によるケア 4つのケアのうち(2)が企業に求められるものになります。 「ストレスは従業員個人の問題」と矮小化することなく、現状の把握・改善や、従業員が相談しやすい環境づくりが大切です。

◆相談対応はストレス減に効果あり!
前述の調査では、誰かに相談したことでストレスが「解消された」という回答が31.7%、「解消されなかったが、気が楽になった」という回答が60.3%ありました。 管理監督者や同僚が相談に応じるだけでも一定の効果があることがわかります。また、「対策の取組内容」(複数回答)として、35.5%の事業所が「相談体制の整備」を挙げています。



平成29年9月号 Kitamura SR News

増加の一途をたどる過重労働に関する脳・心臓疾患、精神疾患における労災請求

◆平成28年度「過労死等の労災補償状況」
厚生労働省は、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害に関して、平成14年から、労災の請求件数や支給決定件数などを年1回取りまとめています。 このたび平成28年度の集計結果が公表されましたので、その内容をまとめます。

◆脳・心臓疾患に関する労災補償状況
請求件数は825件で、前年より30件増加しました。支給決定件数は260件で前年比9件増、うち死亡件数も同11件増の107件でした。業種別に見てみると、請求件数・支給決定件数ともに「運送業、郵便業」が212件と最も多く、次いで「卸売業、小売業」106件、「製造業」101件と続きます。 年齢別では、「50〜59歳」が請求件数266件、支給決定件数99件とともに一番多く、「40〜49歳」が請求件数239件、支給決定件数90件と、ともに2番目に多くなっています。時間外労働時間別の支給決定件数は、「80時間以上〜100時間未満」が106件で最多、「100時間以上」の合計件数は128件ありました。

◆精神障害に関する労災補償状況
精神障害の請求件数は、前年から71件増え1,586件と、過去最多となりました。そのうち未遂を含む自殺件数は前年から1件減の198件でした。支給決定件数は498 件で前年から26件増加し、うち未遂を含む自殺の件数は前年から9件減の84件となっています。 業種別で見ると、請求件数は 「医療、福祉」302件、「製造業」279件、「卸売業、小売業」220件の順に多く、支給決定件数は「製造業」91件、「医療、福祉」80件、「卸売業、小売業」57件の順になっています。年齢別では、「40〜49歳」歳の請求件数が542件、支給決定件数が144件とともに最も多く、次いで「30〜39歳」の請求件数が408件、支給決定件数136件という順に多くなっています。  そして、出来事別の支給決定件数は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が74件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が63件となっています。

◆裁量労働制対象者に係る支給決定件数
過去6年間で、「裁量労働制対象者」に係る脳・心臓疾患の支給決定件数は22件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が21件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が1件ありました。企業側は、事業場の事故に限らず、労働時間・働き方等の管理に配慮が必要です。

「人手不足倒産」が増えている! 深刻化する企業の人手不足問題

◆「人手不足倒産」増加の状況
人手不足の問題が各方面で叫ばれているとろですが、帝国データバンクが7月上旬に公表したデータによると、人手不足による倒産件数は4年前の約2.9倍に増えているそうです。2017年上半期の人手不足による倒産件数は前年同期比で44.1%増となり、2年連続の前年同期比増となりました。 倒産件数全体に対する「人手不足倒産」の割合はまだまだ小さいものですが、業種や倒産する会社の規模に変化が出てきているそうであり、人手不足の影響の広がりが懸念されています。

◆影響が出ている業界にも変化が
人手不足倒産が発生する業種としては、従来から「介護事業」や「IT関連」などの割合が高くなっていますが、近ごろはこれらの業種のように特殊な資格やノウハウが必要でない業種でも人手不足倒産が増えているそうです。ある社員が待遇面や給与面を理由にして他の従業員を引き連れて退社してしまい、人材不足から倒産に陥るという事例も見られるそうです。

◆影響が出ている中小企業は約7割
また、日本商工会議所が発表した調査(全国約3,500の中小企業を対象)では、「人手不足の影響が出ている」と回答した企業は約7割に上ったそうです。人手不足による具体的な影響については、「売上維持・売上増への対応が困難」が53.3%、「従業員の時間外労働の増加や休暇取得の減少」が48.8%、「業務・サービスの質の低下」が46.1%となっており、人手不足への対応としては、「既存従業員の多能工化・兼任化」が53.5%、「採用活動の拡大」が51.6%、「離職防止や新規人材獲得のための労働条件の改善」が38.8%となっています。

◆いま問題が起きていない企業も他人事ではない
先行きの改善が見込みづらい中で、今後は人手不足の問題はさらなる影響の拡大が懸念されるところです。実際、現状で具体的な問題が起きていない企業であっても、今後問題が顕在化してくることは大いに考え得るところです。経済産業省では、昨年10月に『中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会』を立ち上げ、様々な施策を検討中です。企業としても「倒産」という最悪の状況に陥らないために、これらの動向も見極めながら、今後の人手不足問題への対策、人材確保策を考えていくべきでしょう。

平成28年度 個別労働紛争件数にみる労働紛争の現状

◆総合労働相談件数は100万件超で高止まり
厚生労働省「平成28年度個別労働紛争の施行状況」(6月16日発表)によると、平成28年度の総合労働相談件数は113万741件で、前年度と比べると9.3%増となりました。 件数が100万件を超えるのは9年連続であり、高止まりしています。 泣き寝入りせずに、職場改善を求める動きが広がっていることが、その背景にあるようです。

◆「いじめ・嫌がらせ」が問題のトップ
中でも大きな問題となっているのが「いじめ・嫌がらせ」です。民事上の個別労働紛争の相談件数(70,917件)、助言・指導の申出(2,206件)、あっせんの申請件数(1,643件)のすべてでトップとなりました。 「いじめ・嫌がらせ」は、近年、職場で問題視されている「ハラスメント」と同じものと考えることができます。例えば、厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」(今年3月公表)においても、3人に1人が「パワーハラスメントを受けた経験がある」との結果が示されているなど、企業での対策が急務となっています。

◆ハラスメントをめぐる労働紛争防止のために
特に近時は、「個別の労働者vs企業」のトラブルがマスコミにも取り上げられ、企業イメージが大きく損なわれるといった事案も増えています。 ハラスメントの問題を「個人同士の問題で会社には関係ない」と捉える人はまだまだ多いようですが、トラブルを未然に防ぐためにも適切な対策を講じることが大切です。 ハラスメントの研修会を実施したり相談窓口を設置したりするなどの手を打っておきましょう。



平成29年8月号 Kitamura SR News

「同一労働同一賃金」に関する報告書の内容は?

◆関連法案を秋の臨時国会に提出へ
厚生労働省の労働政策審議会は6月9日、「同一賃金同一労働」に関する法整備について検討してきた結論を報告書にまとめました。これを受けて政府は関連法案をまとめ、秋の臨時国会に提出する予定です。 以下では報告書の骨子を紹介します。

◆短時間労働者・有期契約労働者の待遇差の「考慮要素」を明確化
待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、その性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき点を明確化し、「待遇の性質・目的」は実態を踏まえて判断されるものと考えられることに留意が必要としました。また、「考慮要素」として内容を明記すべき事項として、新たに「職務の成果」「能力」「経験」を明記します。なお、現行法においては短時間労働者についてのみ規定されている「均等待遇規定」を、フルタイムの有期契約労働者についても対象とすべきとしています。

◆派遣労働者の待遇決定の方法は選択制に
派遣労働者の待遇を決める方法として、(1)派遣先の労働者との均等・均衡による待遇改善、(2)労使協定による一定水準を満たす待遇決定による待遇改善のいずれかの選択制とします。具体的には、(1)については、派遣労働者と派遣先労働者の待遇差について、短時間労働者・有期契約労働者と同様の均等待遇規定・均衡待遇規定を設けたうえで、派遣元事業主がこの規定に基づく義務を履行できるよう、派遣先に対し、派遣先の労働者の賃金等の待遇に関する情報提供義務を課すとともに、派遣元事業主は、派遣先からの情報提供がない場合は、労働者派遣契約を締結してはならないこととします。 また、(2)については、派遣元事業主が、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数代表者と話し合い、十分に派遣労働者の保護が図られると判断できる労使協定を締結し、当該協定に基づいて待遇決定を行うこととしています。そして、(1)(2)のどちらの方式によるかを派遣先や労働者が知りうるようにすることなどについても必要な措置を講ずることが適当だとしています。

◆労働者に対する待遇に関する説明の義務化等も
さらに、短時間労働者・有期契約労働者、派遣労働者のいずれに対しても、労働条件や待遇についての説明義務を厳格化するとともに、労働者が事業主に対し説明を求めたことを理由とする不利益取扱いを禁止することが適当としています。この他、行政による裁判外紛争解決手続の整備等や有期契約労働者の就業規則作成・変更時の意見聴取(努力義務)などが盛り込まれました。

改正育介法が10月より施行、 育児休業期間が延長されます!

◆10月1日施行!
今年10月1日から「改正育児・介護休業法」が施行されますが、今回の改正により、保育園などに入れない場合の育児休業期間が最長2歳まで延長可能となりました。

◆「1歳6カ月まで」が「2歳まで」に
現在の育児休業期間は、原則、子が1歳になるまでですが、保育園に入れないなどの場合は1歳6カ月まで延長することができます。それが今回の改正により、1歳6カ月までの育児休業を取得してもなお、雇用継続のために、子が1歳6カ月に達した後に休業することが必要と認められる特別の事情があるときは、従業員から申し出ることにより、最長2歳に達するまで再延長することが可能となりました。例えば、12月で1歳6カ月までの育休が終わってしまうのに保育園に入れないという場合でも、比較的保育園に入りやすい4月まで育休を取得できるようになれば、やむを得ず退職するということが防げるようになります。延長が認められるのは、保育園へ入ることができない場合だけでなく、子の養育を行っている配偶者が病気等により子を養育することが困難になった場合なども対象です。2歳までの育児休業の申出は、1歳6カ月到達日の翌日を育児休業開始予定日としなければならないこととされていることから、遅くとも1歳6カ月到達日の翌日の労務提供開始時刻までに行わなければなりません。なお、今回の改正に伴い、育児休業給付金の給付期間も2歳までとなります。

◆その他の改正事項
今回の改正では、上記以外にも、いずれも事業主の努力義務ではありますが改正がなされました(10月1日施行)。 (1)子どもが生まれる予定の方などに育児休業等の制度などをお知らせ 従業員やその配偶者が妊娠・出産をしたこと等を知った場合、事業主はその方に個別に育児休業等に関する制度(育児休業中・休業後の待遇や労働条件等)を知らせるよう努めなければなりません。 (2)育児目的休暇の導入を促進 未就学児を育てている従業員が子育てしやすいよう、事業主は、育児に関する目的で利用できる休暇制度(例えば、配偶者出産休暇、子の行事参加のための休暇等)を設けるよう努めなければなりません。 労基法改正案成立を目指し「高度プロフェッショナル制度」修正へ

◆連合からの要請を受け法案修正の動き
7月11日、労働基準法改正案の修正をめぐる政労使会合の合意文書案が明らかになりました。改正案に盛り込まれている、年収1,075万円以上の金融ディーラーや研究開発職等を労働時間規制の対象外とする「高度プロフェッショナル制度」について、労働界の求める長時間労働対策を盛り込んだかたちに修正し、秋に開かれる臨時国会での成立を目指します。

◆具体的な修正内容
合意文書案では、制度対象者の長時間労働対策として、「年間104日以上かつ4週4日以上の休日を与えること」を義務付けることとしました。また、(1)退社から出社までの間に一定の休息時間を設ける勤務間インターバル制度の実施、(2)労働時間の上限設定、(3)2週間連続の休日取得、(4)(一定条件の下での)臨時の健康診断の実施のいずれか複数の措置を労使で決定し、実施を義務付けます。さらに、制度適用者の拡大を懸念する労働界への配慮から、「対象が営業職全般に拡大されるものでなない」との表現も、盛り込まれました。

◆修正案をめぐる動き
連合の逢見人事局長は7月11日に民進党の大串政調会長と会談し、条件付きで政府案を受け入れる内容を盛り込んだ連合の修正案を説明しました。

◆臨時国会での成立なるか?
継続審議となっている労基法改正案には、高度プロフェッショナル制度のほか、「中小企業の月60時間以上の時間外労働の割増賃金率の見直し」や「時間外労働時間の上限設定」等が盛り込まれています。



平成29年7月号 Kitamura SR News

厚生労働省が労働法令違反による送検企業名をHPで公表

◆全国の労働局の送検企業を一覧で公表
厚生労働省は5月上旬、長時間労働や賃金不払い、労災につながる安全配慮義務違反などの労働関係法令に違反した疑いで書類送検した企業名を、同省ホームページ(HP)に掲載しました。掲載されたのは334件で、全国の労働局が昨年10月以降に書類送検した企業・事業所名、所在地、公表日、違反した法律、事案概要などを県別に並べたものです。各労働局の発表内容を一覧表にまとめて公表したのは初めてのことです。

◆安衛法違反の事例が最多
公表されたリストの内訳をみると、企業が安全対策を怠った労働安全衛生法違反が209件で最も多く、次いで賃金未払いなど最低賃金法違反が62件、違法な長時間労働をさせるなどした労働基準法違反が60件、労働者派遣法違反19件などとなっています。 労働基準法違反では、女性社員が過労自殺した電通や、社員に違法な残業をさせた疑いで書類送検されたパナソニック、労災事故を報告しなかった疑いで書類送検された日本郵便などの大企業も含まれています。 また、他にも三六協定で定めた時間を超える違法な残業をさせた疑いで、印刷会社や運送会社などが書類送検されています。 同じ会社が複数回書類送検されたケースもあり、地域別では最も多かったのが愛知労 労働局の28件、次いで大阪労働局の20件、福岡労働局の19件となっています。

◆一覧は毎月公表、掲載期間は1年
厚生労働省は各労働局に対し、企業を書類送検したら公表するよう通達していますが、これまでは報道機関に資料を配布するだけの労働局が大半で、企業名をHPで公表する労働局は大阪や岩手など7局だけでした。 今回の公表は、昨年末に発表した「『過労死等ゼロ』緊急対策」の一環で、同省は「一覧表にすることで社会に警鐘を鳴らす狙いがある」としています。なお、今後は月に一度内容を更新する方針とのことであり、公表期間は書類送検した日から約1年ですが、期間中に違法状態を改善した企業名はホームページから削除されるそうです。

企業が実施するメンタル不調対策が的を射ていない!?

◆ストレスマネジメントに関する調査
一般社団法人日本経営協会が実施した「組織のストレスマネジメント実態調査」の結果から、メンタルヘルス不調の要因と企業が行う対策がうまくかみ合っていない状況があることがわかりました。この調査は、ストレスチェック制度開始後、最初の実施期限直後である2016年12月から2017年1月にかけて行われました。企業におけるストレスチェック制度の進捗状況やストレスマネジメント全般の状況、今後の課題等について、「勤務先事業所の現状」「メンタルヘルスに関する取組状況」「ストレスチェック制度の実施状況」「職場環境の改善」についてまとめられています。

◆要因と対策にズレがある
この調査の中で、「職場環境の改善」について、メンタルヘルス不調者を出さないために企業が行った対策は、1位:「超過勤務(残業)時間の削減」(69.4%)、2位:「従業員のハラスメントに対する知識と意識の向上」(44.2%)、3位:「ハラスメント防止・対策の強化」(35.5%)という結果となっています。 一方、メンタルヘルス不調者が発生する主要因としては、1位:「職場の人間関係」(64.3%)、2位:「本人の性格」(43.7%)、3位:「上司との相性」(40.0%)となっており、対策のほうで1位となっている「長時間労働」は、要因としては6位となっています。 つまり、要因と対策がかみ合っていないことがうかがえます。

◆スキル不足と人員不足
また、ストレスマネジメントを実施するうえでの問題として、専門知識やスキルを持つ人材がおらず、マネジメントとの中心となる上司自身も多忙で手が回らないことがあるようです。こうした状況で、部下のマネジメント対策を行う上司がメンタル不調に陥ってしまっては意味がありません。また、対策がうまくいかなければ、メンタル不調にならずとも他社へ転職してしまう等の人材流出や、他の従業員のストレス増加、士気の低下などにもつながりかねません。

◆経営戦略としてのメンタルヘルスマネジメント
メンタルヘルス不調の主要因が、職場のコミュニケーションや人員構成にあるとすれば、その対策には労働時間等に関する個別の労務管理はもとより、「ストレスなく健康に働くことを尊重する雰囲気・マインドを醸成する」という、企業の経営戦略ともリンクした人事マネジメントの視点での全社的な取組みが重要となるでしょう。

中途採用者の確定拠出年金の取扱いで注意したいこと

◆「iDeCo」の加入者が急増中
確定拠出年金の加入者数は、会社が社員を加入させる「企業型」が500万人超となる一方、自営業者等が加入する「個人型」は2016年3月末時点で26万人弱(25.7万人)しかいませんでした。ところが、今年1月より確定拠出年金法が改正され、20歳から60歳までの人はほぼ全員が「個人型」(以下、「iDeCo」)に加入できるようになって以降、急速に加入者数が増えています。2017年3月末時点のiDeCo加入者数は43.0万ですが、2014年3月末が18.3万人、2015年3月末が21.2万人、2016年3月末が25.7万人だったことを考えると驚異的な伸びとなっています。

◆会社員等の新規加入も増加
厚生労働省が毎月公表している「確定拠出年金の施行状況」で、厚生年金や共済年金に加入する第2号被保険者のiDeCoの新規加入者を見ても、1月時点が2万2,647人(8,719人)で、2月時点が4万3,694人(2万3,268人)、3月時点が4万7,532人(2万372人)、4月時点が5万2,487人(1万6,939人)と、増加傾向にあります(カッコ内は全体のうち共済組合員の数)。

◆確定拠出年金の「ほったらかし」問題も深刻化
確定拠出年金は、加入者が離転職をしても次の勤務先等へ資産を持ち運べる「ポータビリティ」が魅力とされますが、離転職時には資産の保管先を移し換える手続きが必要です。 この手続きを行わない人が55万人超もいて、将来の受取りへの影響が懸念されています。

◆中途採用者には手続きの呼びかけを
企業型の加入者は、退職後6カ月以内に移換手続を行わないと手数料だけが引かれ、資産が目減りしていきます。また、「ほったらかし」の期間は加入期間としてカウントされなくなるので、60歳になっても受取りに必要な10年の加入期間を満たせなくなるおそれがあります。iDeCoの加入者も、転職先が企業型を導入しているか否かにより異なる手続きが必要です。今後、中途採用者の中に確定拠出年金の加入者が増えることが予想されます。会社としては、速やかに手続きを行うよう呼びかけることが望ましいでしょう。



平成29年6月号 Kitamura SR News

実態調査にみる「職場のパワーハラスメント」の現状と予防・解決策

◆調査の概要
厚労省は、パワーハラスメント(以下、「パワハラ」)の発生状況や企業の取組状況などを把握し、今後の施策に反映させることを目的として実態調査を実施しました。全国の企業と従業員を対象に、平成28年7月から10月にかけて実施した調査結果に基づき、職場のパワハラの現状と予防策、解決策等についてまとめてみました。

◆パワハラの発生状況
従業員向けの相談窓口において従業員からの相談で最も多いテーマは「パワハラ」で、32.4%という結果が出ています。過去3年間に1件以上「パワハラに該当する相談を受けた」と回答した企業は36.3%。一方で、過去3年間に「パワハラを受けたことがある」と回答した従業員は32.5%と、調査を始めた平成24年度から7.2%増えています。

◆予防・解決に向けた取組状況
パワハラの予防・解決に向けた取組みを実施している企業は52.2%で、企業規模が小さくなると実施比率は相対的に低くなる傾向にありますが、平成24年度と比較するとすべての従業員規模の企業で比率が高くなっています。パワハラに限らず、従業員向けの相談窓口を設置している企業は73.4%あり、企業規模が小さくなると設置比率は相対的に低くなるものの、平成24年度と比較するとすべての従業員規模の企業で比率が高くなっています。

◆予防・解決に向けた取組みの効果
企業がパワハラの予防・解決に向けた取組みを積極的に実施すると、従業員にとってはパワハラに関する相談がしやすくなるとともに、企業にとってもパワハラの実態が把握しやすくなります。また、パワハラの予防・解決に向けた取組みを行っている企業で働く従業員は、パワハラを受けたと感じる比率やパワハラにより心身への影響があったとする比率が相対的に低くなる傾向にあり、この取組みにより、職場環境が変わる、コミュニケーションが活性化するほか、「休職者・離職者の減少」や「メンタル不調者の減少」などの付随効果も見られるようです。パワハラの予防・解決のための効果が高い取組みとして、「相談窓口の設置」や「従業員向けの研修の実施」を挙げている企業の比率が高く、企業がパワハラの予防・解決に向けた取組みを複数実施することが、従業員にとって職場環境の改善などの効果を感じやすいとの結果が出ています。

高齢従業員ドライバーがいる会社は要注意! 知っておきたい「道路交通法」の改正内容

◆3月から施行
今年3月より改正道路交通法が施行され、高齢運転者の交通安全対策が強化されました。加齢による認知機能の低下に着目した「臨時認知機能検査制度」や「臨時高齢者講習制度」の新設、その他制度の見直し等が行われています。これまで以上に免許の取消しや停止につながる可能性が大きくなる改正と言え、業務で運転をする高齢従業員や通勤で車を利用している高齢従業員がいる場合には、会社としても押さえておきたい内容であると思われます。

◆高齢運転者(70歳以上)の 運転免許更新手続の改正
免許更新期間が満了する日における年齢が75歳未満の方は、高齢者講習の合理化が図られ、これまでの3時間の講習が2時間となりました。一方、75歳以上の方に行われる認知機能検査の結果に基づいて、「認知機能が低下しているおそれがある方」「認知症のおそれがある方」は、より高度化または合理化が図られた講習が実施されることになりました(改正前:運転適性検査30分+講義30分+実車指導60分=計2時間→改正後:運転適性検査30分+双方向型講義30分+実車指導60分+個別指導60分=計3時間)。

◆各種制度の新設
75歳以上の運転免許を持っている方が「認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為」をした場合、臨時に認知機能検査を受けることとなりました(免許更新時における認知機能検査と同じ内容)。信号無視や横断歩道等における横断歩行者等妨害、徐行場所違反など18の違反行為が対象となります。臨時認知機能検査は原則、配達証明による受講の通知を受けた日の翌日から1カ月以内に受検しなければなりません。検査の結果、「認知機能が低下しているおそれがある」と判定されると、臨時高齢者講習(実車指導60分+個別指導60分)を受けることとなります。臨時認知症機能検査や臨時高齢者講習を受けないと、運転免許の取消しまたは停止となってしまいます。

◆臨時適正検査制度の見直し
免許更新時および臨時の認知機能検査等で、「認知症のおそれがある」と判定された方は、臨時の適性検査を受けるか、認知症に関し専門的な知識を有する医師等の診断書の提出が必要となります。その結果、認知症であると診断されれば免許取消し・免許停止となります。

残業規制の抜け穴!? 自主的な「休日出勤」にご用心

◆依然注目される「時間外労働の上限規制」
政府が推進している働き方改革の一環として、「時間外労働の上限規制」が大きな注目を集めています。現行法においては、「特別条項付き三六協定」を労使間で締結することにより、繁忙期に上限の無い残業をさせることも事実上は可能です。これが今後の法改正で、「たとえ労使協定を締結していても、労働時間は年間で720時間を上回ることができない」こととなる見通しです。

◆絶対に避けたい「長時間労働による摘発」
違反企業には当然、罰則が課されますし、公共事業に入札できなくなるといった影響もあります(厚生労働省は、違法な長時間労働が認められた企業名を各自治体などに向け積極的に公表しています)。また、ひとたび労基署の調査などを受け、“ブラック企業”としてネット等を通じ拡散するような事態になれば採用活動などにも大きく響く時代ですので、企業としては何としても避けたいところです。

◆残業規制の抜け穴である「休日出勤」
一方で、時間外労働の上限720時間には「抜け穴」が存在する、とも指摘されています。 その1つとして、「休日に働く時間」はこの時間が含まれていないことがあります。詳細はまだ決まっていませんが、休日労働の抑制は企業の努力義務となりそうです。今後は、就業時間内に業務を終えることができなかった従業員が、自主的に休日出勤する、ということも増えるかもしれません。

◆自主的な休日出勤をさせない取組みを
会社が命じていない休日出勤により、様々な問題が起こり得ます。休日の時間外労働には3割5分の割増賃金が発生しますし、この従業員が法律上定められた休日(1週間に1日、もしくは4週間を通じ4日以上)を取らないようなことがあれば、これも法律違反です。労災が発生するリスクもあります。



平成29年5月号 Kitamura SR News

平成30年4月から障害者の法定雇用率が引き上げられます!

◆企業に課されている義務
従業員を50人以上雇用している企業は、従業員に占める障害者の割合を法定雇用率以上にする義務が課されています。現在の民間企業における法定雇用率は2.0%ですが、厚生労働省は、平成30年4月から2.3%に引き上げる方針を固めました。これは、来年4月から、障害者雇用率の算定式に精神障害者を追加することとなることを踏まえたものです。

◆障害者雇用率の引上げ率は?
民間企業の障害者雇用率は現行2.0%ですが、2.3%(当分の間2.2%、3年を経過する日より前に2.3%)に引上げられます。 国および地方公共団体ならびに特殊法人については現行の2.3%から2.6%(当分の間2.5%、3年を経過する日より前に2.6%)に、都道府県等の教育委員会については現行の2.2%から2.5%(当分の間2.4%、3年を経過する日より前に2.5%)に引上げられます。いずれも0.3%の引上げ幅となります。

◆算定式に精神障害者を追加
平成30年4月より、法定雇用率の算定基礎の対象に、新たに精神障害者が追加されます。これにより、身体障害者・知的障害者・精神障害者を算定基礎として法定雇用率を計算することになります。 <算定式> 法定雇用率=(身体障害者、知的障害者および精神障害者である常用労働者の数+失業している身体障害者、知的障害者および精神障害者の数)÷(常用労働者数+失業者数) ※「障害者」の範囲は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者を実雇用率の算定対象とします(短時間労働者は0.5人としてカウント)。

◆「サポーター」を養成へ
厚生労働省は、今秋から、精神障害者などが働きやすい職場づくりの旗振り役となる「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を始めるようです。民間企業で働く従業員に障害の特性などを把握してもらい、障害を持つ同僚への声かけなどをしてもらうなど、精神・発達障害者を支援する環境づくりを推進していくことを目的とするものです。 なお、サポーター養成のため、民間企業の従業員を対象に障害の特性やコミュニケーションの取り方などを学ぶ講習会を全国で開催する予定とのことです。

その不調、「夏うつ」かも!? 夏場を乗り切るために注意すべきこと

◆夏に発生するうつ病、「夏うつ」
「冬うつ」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。これは、日照不足により、体内で生成されるセロトニンの量が減ることで起こると言われる季節性のうつ病で、秋から冬にかけてうつ症状が出現するものです。確かに、どんよりと暗い日が多く日照時間も短い冬には、気分も暗くなりがち…なんとなく納得できますよね。 しかし近年、季節性のうつ病には、夏場に発生する「夏うつ」も存在すると言われるようになってきました。

◆「夏バテ」と誤解されることも
夏うつは、5月から9月に発症することが多く、涼しくなるにつれて症状は改善されていきます。主な症状は、食欲低下や不眠などの不調です。夏バテと症状が似ているため本人も周囲も気づきにくいのですが、夏バテとは異なり、気分の落込みや不安感などの精神的不調を伴うことが特徴です。明確なストレスや理由がないにもかかわらず、気分が優れない状態が長引くのであれば、夏うつが疑われます。

◆事業所でできる「夏うつ対策」
夏うつの原因には、日光の浴び過ぎ、室温の設定、栄養の偏り、就寝前のパソコン等の作業などがあります。これらを踏まえ、事業所でできる対策をいくつか挙げてみます。 ・日中の外出をなるべく避ける:日光によって疲労感が増す可能性があります。陽射しの強い時間帯の外出は、できるだけ避けたほうがよいでしょう。 ・冷房も適宜利用する:女性の冷えやすさや節電などを理由に、冷房を利用しない事業所もありますが、夏うつは気温や湿度などの外的要因が体に与える影響から発症するものですので、無理に暑さを我慢することは禁物です。 ・早めに専門病院の受診につなげる:本人は「夏バテが長引いている」くらいの認識かもしれません。少しでも調子がおかしいと思ったら、早めに専門病院を受診するよう勧めることが大切です。適切な処置を受けることは安心感につながり、早期回復にも結びつきます。

「技能実習」に関する改正法が11月施行〜介護職種を追加するとともに監督を強化

◆外国人技能実習機構を新設へ
政府は、外国人技能実習制度の範囲に「介護職」を加えるとともに、制度に基づき日本国内の企業や農家で働く外国人への人権侵害に対する罰則を設け、受け入れ先への監督を強化する技能実習適正化法の施行日を11月1日と定める政令を閣議決定しました。 受け入れ先の企業が今年1月に新設された認可法人「外国人技能実習機構」に実習計画を提出し、認定を受ける新制度が始まります。 また、政府は、外国人の在留資格に「介護」を新設する出入国管理及び難民認定法の改正法を9月1日に施行することも決めました。

◆実習生の増加とともに違法就労も拡大
「外国人技能実習制度」は、海外に日本の技術を伝える国際貢献を目的として、1993年に始まりました。安倍政権は製造業などでの人手不足を補うために受け入れを進め、5年ほど前の15万人程度から、昨年6月末時点では過去最多の21万人に達しています。 ただ、低賃金で長時間労働を強いる「安価な労働力」となっているという批判もあり、長時間労働など労働基準法に違反する職場や、労災事故が増加している現場に対しての監督強化も課題となっていました。

◆受け入れ対象は拡大、違法就労への監督は強化し罰則も
施行される法律のポイントは、以下の通りです。 (1)実習生の受け入れ先を監督する外国人技能実習機構を新設する (2)実習生ごとに実習計画をつくり、機構が内容をチェックする (3)実習生の人権を侵害する行為への罰則を設ける (4)実習生の受け入れ期間を最長3年から5年に延長する 受け入れ先の企業や団体を監督する「外国人技能実習機構」を新設し、受け入れ先は機構に実習計画を示し、認定を受けることが求められます。

◆入管法等の改正も9月に施行
また、改正入管法を9月に施行し、介護の現場で外国人がより多く働けるようにするため「介護」の在留資格を新たに設け、日本で介護福祉士の資格を得た人が対象となります。



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