東京都江戸川区の社会保険労務士事務所、ヒトと会社の絆を結ぶエキスパート

北村社労士事務所事務所通信

平成25年12月号 Kitamura SR News

アルバイトからみた「働きたい業種」「応募時に重視すること」

◆働いてみたい業種は?
「アルバイト人気ランキング2013年版」(過去3年以内にアルバイト・パート経験のある15〜59歳の男女5,483人が調査対象)の結果が発表されました。この調査によれば「働いてみたい業種」の上位は、下記の結果となりました。

(1)小売
(2)アパレル
(3)アミューズメント
(4)カフェ
(5)スーパーマーケット
(6)ファストフード
(7)ファミリーレストラン

また、「働いてみたいブランド」としては、東京ディズニーランド、無印良品、イオン、TSUTAYA、セブン−イレブン、ローソン、スターバックスコーヒー等が挙がっており、普段の生活で身近にあり、自ら好んで利用しているブランドがアルバイト先としても人気が高いようです。

◆応募時に重視する項目は?
アルバイトに応募する際に重視する項目として、上位から@「距離が近い」(女性でも1位)、A「シフトが都合に合う」(男性では1位)、B「仕事内容が魅力的」、C「給与が高い」、D「長期間にわたって働ける」、E「短時間でも働ける」と続きました。「給与」や「仕事内容」だけが重視されているわけではないようです。

◆面接時の印象はとても重要
採用面接時の企業(面接担当者)に対する悪印象として、「担当者が遅刻した」、「担当者が不在だった」、「担当者の態度が横柄だった」、「バックルームが汚かった」、「店長の無駄話が長かった」等が挙げられています。仮にこのような印象を持った人がアルバイトとして入社できなかった場合(入社を希望しなかった場合もあり)であっても、その後も「会社のお客さん」としての立場が続く可能性が高いわけです。
ですから、アルバイトの面接だからといって決して気を抜いてはならず、「会社や社員が応募者に見られている」という意識を持って真剣に面接に臨まなければなりません。

「年次有給休暇」に関する最近の動向

◆昨年の取得率は約47%
厚生労働省の発表によると、企業が昨年(2012年)、社員に付与した年次有給休暇(年休)は平均18.3日で前年と同でしたが、社員が実際に取得した日数は平均8.6日(前年9.0日)に減少し、取得率も47.1%(同49.3%)に低下したことがわかりました。また、時間単位の年休が取得できる制度のある企業の割合は11.2%(同8.8%)と若干増えたものの、全体の1割程度しかないことがわかりました。
さらに、年休の取得が進まないのは、上司の意識(取得する部下を「仕事より自分の予定を優先」等と否定的に考える)が原因である実態が明らかになりました。

◆「年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の取扱い」の改正
年休に関連して、注意が必要な通達の変更が行われています。これは、裁判により解雇無効が認められた労働者が、復職後に年休取得を請求して出社しなかったところ、会社がその期間を欠勤として取り扱い、その分の賃金を支払わなかったこと等に関する最高裁の判決があったことによります。

労働基準法では、雇入れの日から6カ月の継続勤務期間またはその後の各1年度において全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、翌年度に決まった日数の年休を与えなければならないと定められています。

この出勤率の計算根拠について、「労働者が使用者の正当な理由のない就労拒否によって就労することができなかった日」を、年休の発生要件である全労働日に含まれると解釈したのがこの最高裁判決です。この判決が出たことを受け、厚生労働省は、年休算定の基礎となる全労働日の取扱いを変更しました。具体的には、労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日は、出勤率の算定にあたっては出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるとしたのです。

◆規定の見直しを
解雇した労働者が復職した場合や、私傷病休職後の復職を認めずに退職扱いとした後に復職した場合などは、年休の出勤率の計算に影響がある可能性がありますので、注意が必要です。また、就業規則で年休に関する出勤率の計算方法を定めている場合には、規定の見直しが必要になる場合もありますので、確認が必要でしょう。

非ブラック企業!?「若者応援企業」って何?

◆すでに4,000社以上が登録
いわゆる「ブラック企業」が話題となっていますが、厚生労働省の審査を受けて「非ブラック企業」のお墨付きをもらい、学生らにアピールする企業が増えているようです。同省は今年4月、若者を積極的に雇用・育成する企業を認定する「若者応援企業宣言事業」をスタートさせましたが、今年10月末時点でこの宣言をした企業は4,375社に上っているそうです。

◆「若者応援企業」の定義
「若者応援企業」とは、一定の労務管理体制が整備されており、若者のための求人を提出し、若者(35歳未満)の採用・育成に積極的であり、通常の求人情報よりも詳細な企業情報・採用情報を積極的に公表する中小・中堅企業のことをいいます。

◆「若者応援企業」を名乗るには?
「若者応援企業」と名乗るためには、以下の基準をすべて満たしている必要があります。
(1)学卒求人など、若者対象のいわゆる「正社員求人」をハローワークに提出すること
(2)「若者応援企業宣言」の事業目的に賛同していること
(3)過去3年度分の新卒者の採用実績および定着状況などの就職関連情報を開示していること
(4)労働関係法令違反を行っていないこと
(5)事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
(6)新規学卒者の採用内定取消を行っていないこと
(7)都道府県労働局・ハローワークで取り扱っている助成金の不支給措置を受けていないこと

◆「若者応援企業」を名乗るメリット
「若者応援企業」を名乗ることで、企業にとって以下のようなメリットがあります。
(1)ハローワークに提出される通常の求人情報に比べて、より詳細な企業情報・採用情報を公表できるため、会社の職場環境・雰囲気・業務内容がイメージしやすくなり、より適した人材の応募が見込まれ、採用後の職場定着が期待できる。
(2)都道府県労働局のホームページで、就職関連情報も含めたPRシートを公表するため、会社の魅力を広くアピールできる。
(3)就職面接会などの開催について積極的に案内するため、若年求職者と接する機会が増え、より適した人材の採用が期待できる。

平成25年11月号 Kitamura SR News

企業における「懲戒処分」の実施状況は?

◆労働政策研究・研修機構の調査
近年、労使トラブルは増加傾向にありますが、それに伴い懲戒処分を実施する(または実施を検討する)企業も増えているようです。
ここでは、労働政策研究・研修機構から今年7月末に発表された「従業員の採用と退職に関する実態調査」(常用労働者50 人以上を雇用している全国の民間企業5,964社が回答)の結果、懲戒処分の状況は次の通りです。

◆懲戒処分の規定内容
まず、懲戒処分の規定が「ある」企業の割合は 94.6%で、規定のある企業を対象にその規定の形式を尋ねたところ、ほとんどの企業(98.1%)が「就業規則」に規定しています。なお、「労働協約」で定めている企業は6.4%でした。
規定内容は、割合の高い順に「必要な場合には懲戒処分を行う旨の規定」(75.7%)、「懲戒処分の種類」(69.9%)、「懲戒の対象となる事由」(61.9%)となっています。

◆最近5年間における実施状況
ここ5年間での懲戒処分の種類ごとの実施割合は、次の通りとなっています。

(1)始末書の提出(42.3%)
(2)注意・戒告・譴責(33.3%)
(3)一時的減給(19.0%)
(4)降格・降職(14.9%)
(5)懲戒解雇(13.2%)
(6)出勤停止(12.3%)
(7)諭旨解雇(9.4%)

なお、「いずれの懲戒処分も実施していない」企業の割合は39.0%でした。

◆懲戒処分実施時の手続き
懲戒処分を実施する際の手続きとして法律で定められた要件はありませんが、一般的には「理由の開示」、「本人の弁明機会の付与」が必要とされています。
また、「労働組合や従業員代表への説明・協議」を行うことにより、本人以外の従業員の納得性を高めることもできますので、実施する際には慎重な配慮が必要です。

労働時間と残業代計算

最近、未払い賃金が常態化している、長時間労働を強いる、いわゆる「ブラック企業」が問題になっています。時を同じくして、厚生労働省は若者の「使い捨て」が疑われる企業等へ長時間労働の抑制、パワハラ・セクハラの予防・解決の為の取り組みを強化していくと発表しました。そのせいか江戸川区でも労働基準監督署からの調査来訪を受けた事業所が相次いでいるようです。
特に「残業代の未払い≒サービス残業」については、労働基準監督署の調査対象項目でもあり、従業員からの労働相談の中で解雇・雇止めに次ぐ相談数の多さになっています。

◆労働時間とは
最高裁の判例によると「労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解される」となっています。
また、「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当すると解される」としています。(三菱重工業長崎造船所事件(最高裁一小 平12.3.9判決))。
つまりは労働契約や就業規則で始業までに業務準備をするのは労働時間ではないと明記してあったとしても、使用者によって義務付けられている場合は労働時間になり得るということになります。
上述した「労働時間」は、労働基準法上の限度時間(働かせていい時間)が決まっています。これを「法定労働時間」といいます。

法定労働時間=1日8時間、1週間40時間

◆時間外労(残業時間)とは
時間外労働(残業時間)は所定労働時間を超えて働く時間のことを言い、法定労働時間を超える場合は、割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金は次の3種類です。
@時間外労働―8時間/日、40時間/週を超えて働かせた…割増率25%以上
A休日労働―法定休日に働かせた…割増率35%以上
B深夜労働―22時〜5時までの間、働かせた…割増率25%以上

◆勘違いし易いケース
@1日の労働時間は実際の出勤時間から起算
A社は所定の労働時間は8時間ですが、社長が地域のためにと会社の周りを始業時間の1時間前に交替で従業員を出勤させ清掃させていました。この場合、業務命令として清掃を断れない状況にありますので、1時間分の割増賃金が必要です。
また、遅刻により1時間遅れてきた場合は、休憩を除く8時間を超えたときから割増賃金が発生します。

A週40時間を超えたら時間外労働
週休2日制で土曜日が所定休日の会社では40時間を超えた部分に対し、割増賃金は発生します。

B労働時間の端数切捨てはできない
給与計算が面倒なのでタイムカードの時刻の15分未満を切捨てている。この場合、1日の労働時間は1分単位で計算しなければなりません。ただし、1ヶ月の労働時間を合計して30分未満の端数が出た場合には切捨て、30以上の端数を1時間に切上げて計算することは認められています。

「応募者」から見られている「採用面接官」

採用する際、採用面接を実施しない企業はほとんどないでしょう。実はその面接官自身も応募者からじっくりと観察されているのです。

◆採用コンサル会社の調査結果
今年4〜5月に来年度卒の学生を対象に「就職活動振返り調査」を実施しました。この調査で「面接で志望度に影響すること」について尋ねたところ、「かなり影響した」項目の上位5つは下記の結果となりました。

(1)「面接官の態度・話を聞く姿勢」(67.3%)
(2)「面接で自分自身の素が出せたかどうか」(47.6%)
(3)「面接官の話の促し方」(46.1%)
(4)「学生からの質問に対する面接官の受け答え」(45.6%)
(5)「面接官の人選」(42.1%)

◆「面接官として相応しい人材育成」が重要
上記の結果からお分かりの通り、応募者の志望度に最も影響するのは「面接官の態度・話を聞く姿勢」だということです。有望な人材の内定辞退を招かないようご注意を…

平成25年10月号 Kitamura SR News

「社会保険の適用拡大」に伴う企業と労働者の対応は?

◆調査の内容
社会保険の適用拡大が短時間労働者の雇用管理に及ぼす影響や、適用拡大が実施された場合の短時間労働者の対応の意向に関する調査の結果が公表されました。この調査は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が、常用労働者5人以上の事業所(1万5,000社)に対するアンケート調査と、短時間労働者が多いとされる業種の企業および労働組合にインタビュー調査を行ったものです。

◆企業の意向は?
◎短時間労働者の雇用管理について見直す(と思う)企業が半数超
・「所定労働時間の長時間化を図る事業所」…約3割
・「短時間労働者の人材を厳選し、一人ひとりにもっと長時間働いてもらい雇用数を抑制」するという企業が30.5%。
・「所定労働時間の短時間化を図る事業所」…約3割
・「適用拡大要件にできるだけ該当しないよう所定労働時間を短くし、その分より多くの短時間労働者を雇用」するという企業が32.6%

◆従業員の意向は?
社会保険が適用拡大されたら働き方を「変えると思う」短時間労働者は約6割おり、具体的には、次のような意向が多くなっています(無回答:36.3%)。
・「適用されるよう、かつ手取り収入が増えるよう働く時間を増やす」…26.7%
・「適用されるよう働く時間を増やすが、手取り収入が減らない程度の時間増に抑える」…15.6%
・「適用にならないよう働く時間を減らす」…14.5%
・「正社員として働く」…8.7%
社会保険適用を希望しているが、会社から労働時間の短時間化を求められた場合の対応として、「他の会社を探す」「分からない・何とも言えない」「受け容れる」がそれぞれ約3割となっています。

◆短時間労働者の二極化
社会保険の適用拡大に伴い、「短時間労働者」という雇用形態では、"長時間化する層"と"短時間化する層"への二極化が進むと予測されます。また、基幹となる短時間労働者については、業務上の高度な役割を担う割合が高くなってくるでしょう。その際、処遇や労働条件を適切に確保しなければ、貴重な人材の流出につながる可能性が高まります。自社の状況を踏まえながら、今後の対応を検討してみてはいかがでしょうか。

「健康管理体制」に関する行政の監督指導の強化

◆「過労死等発生事業場」への監督指導結果
東京労働局から、平成24年度に実施された、過労死・過労自殺など過重労働による健康障害を発生させ労災申請が行われた事業場に対する監督指導結果の概要が公表されました。
対象となった93事業場の業種は、「交通運輸業」が最も多く、次いで「ソフトウェア・情報処理業」、「建設業」、「卸・小売業」の順で多くなっています。
また、企業規模としては、「10〜49 人」が最も多く、次いで「100〜299 人」、「10 人未満」、「300〜999 人」の順となっています。

◆法違反の割合が90%
今回の結果から、過労死等を発生させた事業場では「労働関係法令違反」の割合が 90%と高く、被災労働者に対する健康管理体制の不備のある事業場も高い割合であることがわかりました。違反の状況としては、不適切な労働時間管理(労働時間の違反、未払残業など)によるものが多くなっており、特に「三六協定」の取扱いが厳しく監督指導されているようです。また、違反のあった事業場のうち半数以上で、1カ月の時間外労働が100 時間を超えるか、2カ月〜6カ月の時間外労働が平均して月80時間を超えると認められた。

◆健康管理体制についての指導を強化
近年では、過重労働による健康障害を防止するためとして、衛生管理体制の不備についても重点的に指導が行われています。 内容は、健康診断の受診、有所見者への対応(医師等からの意見聴取、勤務軽減措置、保健指導)や、時間外・休日労働が多い労働者に対する医師による面接指導です。これらの中には努力義務のものもありますが、適切に取り組んでいない場合、いざ過労死や精神疾患の発症等が起きた際には、訴訟等において企業は不利な立場に置かれることになります。

◆「ブラック企業」への取締りも
その他、社員が過重労働により亡くなってしまったり精神疾患等で業務に就けなくなったりすれば、その影響は社員の家族や他の社員に多大な負担を強いることになります。ひいては企業の社会的評価が低下するなど、経営自体にマイナスとなります。
また、いわゆる「ブラック企業」に対する集中的な指導監督も進められていますので、今後も行政による指導監督は強化されていくことと思われます。この機会に、健康的に働くことができ、会社経営にもプラスとなる労働時間管理について検討してみてはいかがでしょうか。

最近の「会社帰りの飲み会」事情

◆最近3カ月で「外飲み」した人は約7割
株式会社インテージが今年8月に実施した「仕事帰りの外飲み事情2013」(ビジネスパーソン意識調査)の結果が発表されましたが、これによれば、最近3カ月で仕事帰りに飲みに行った人は、全体の約7割だったそうです。20代の男性が78.0%で最も多く、飲みに「行っていない」と回答したのは50代の女性が41.0%で最も多く、次いで40代の男性が38.0%となりました。

◆仕事帰りは誰と飲みに行く?
仕事帰りの飲酒の相手で最も多かったのは、「職場の同僚(同性、異性問わず)」が55.9%で、すべての性別・年代において共通でした。
性別・年代別では、20〜30代の男性は「職場の上司」、50代の男性では「職場の同僚(同性のみ)」と職場関係の割合が高いのに対し、女性は「会社、職場以外の友人・知人(同性のみ)」の割合が男性よりも高かったようです。

◆飲みに行く目的は?
飲みに行く目的・理由で最も多かったのは「コミュニケーションをとりたかったから」(50.6%)で、「付き合いで、誘われたから」(44.9%)、「会話、話を楽しみたかったから」(36.8%)と続きました。
性別・年代別でみると、20代男性が「ストレスを解消したかったから」が39.7%で最多となり、20代女性では「コミュニケーションをとりたかったから」が63.5%で最多でした。
20代〜40代の女性は、「会話、話を楽しみたかったから」が多く、飲酒の相手と同様に、男性と意識に差があるようです。

◆1回の飲み代はいくら?
1回の飲み代の平均予算は「3000円程度」(38.2%)が最も多く、次いで「4000円程度」(27.7%)、「5000円程度」(17.8%)となっています。性別・年代別でみると、最も飲み代の予算が高かったのは50代の男性でした。飲み代の平均予算については、過去の調査と比較してもあまり変化は見られませんでした。

平成25年9月号 Kitamura SR News

厚労省が「ブラック企業」の取締りを強化へ

◆8月11日「ブラック企業大賞2013」授賞式が行われ、『ワタミフードサービス(株)』が大賞を受賞しました。
ブラック企業大賞とは、従業員に対し過労やサービス残業を強いたり、パワハラや偽装請負や派遣差別を行い問題視されている企業の頂点を決める企画です。

ブラック企業大賞:ワタミフードサービス(株
業界賞:アパレル業界・クロスカンパニー(株)特別賞:国立大学法人 東北大学
教育的指導賞:ベネッセコーポレーション

◆ようやく「ブラック企業」の本格取締りがスタート
厚生労働省は、若年労働者等の使い捨てが疑われる企業(いわゆる「ブラック企業」)が社会問題となっていることを受けて、9月に集中的な監督指導を行うことを発表しました。
具体的には、以下の3つを柱として対策を行っていくとのことです。

◆(1)長時間労働抑制に向けた集中的な取組みの実施
9月を「過重労働重点監督月間」と定め、過重労働が行われている疑いのある約4,000事業所について、重点的に指導・監督を実施します。主な重点確認事項については、時間外・休日労働が36協定の範囲内であるかの確認やサービス残業の有無についての確認があり、これらについて法違反が認められた場合は是正指導が行われます。また、長時間労働者に対しては、医師による面接指導などの健康確保措置が確実に講じられるよう指導も行っていくようです。過労死等事案を起こした、または、脳・心臓疾患等に係る労災請求が行われたなどの企業等については、再発防止の取組を徹底させるため、法違反の是正確認後もフォローアップのための監督指導が実施されるようです。監督指導の結果、法違反の是正が行われない場合は、是正が認められるまで、ハローワークにおける職業紹介の対象から外すことも決定しており、重大・悪質な違反が確認された企業を、送検、公表するとしています。

◆(2)しっかりとした相談対応
9月1日には、全国一斉の電話相談を実施し、過重労働が疑われる企業などに関する相談を踏まえ、法違反が疑われる企業に監督・指導を行います。9月2日以後も、「総合労働相談コーナー」、「労働基準関係情報メール窓口」で相談や情報を受け付けします。新卒応援ハローワークでも、情報・相談を受付、労働基準法などの違反が疑われる企業に関しては労働基準監督署に情報を提供するとしています。

◆(3)職場のパワーハラスメントの予防・解決を推進
ポータルサイト「あかるい職場応援団」を通じ、パワハラに関する裁判例を解説したり、パワハラ対策に取り組んでいる企業を紹介したりします。また、パワハラ対策の必要性等をわかりやすく説明したポスター、リーフレット等を作成し、全国の行政機関等で掲示・配布するとのことです。

世代によって大きく違う? "働き方"に対する意識調査

◆30〜40代の約半数「仕事にやりがいなし」
日本能率協会が同協会研究所のリサーチモニター(18〜69歳の有職者1,000人)を対象に、第1回「ビジネスパーソン1,000 人調査」を実施し、働き方に関する意識を調べた調査結果を発表しました。
それによると、30代〜40代の約半数が「仕事にやりがいなし」「能力発揮できていない」と考えていたことがわかりました。
現在の仕事に関するやりがいについて聞いたところ、全体ではやりがいを「感じている」「やや感じている」の合計が58.4%と半数以上を占めましたが、比率が高かったのは60代(70.2%)や50代(61.9%)といった高齢者で、30代(53.5%)や40代(54.9%)については低かったようです。

◆勤務先への愛着は?
同様に、現在の勤務先に対する愛着について聞いたところ、全体では58.7%が「愛着を感じている」と回答し、「愛着を感じていない」(41.3%)を上回りましたが、ここでも40代が53.9%、30代も54.6%にすぎなかったのに対し、60代が76.7%、50代が62.4%と高く、世代によって違いがみられました。

◆自己の能力を発揮できているか?
次に、「現在の仕事は自己の能力を発揮できていると思うか」という設問には、全体では「発揮できている」(55.2%)が「発揮できていない」(44.8%)を上回ったものの、30代(46.2%)、40代(51.5%)が「発揮できていない」と答え、上記の設問と同じような傾向となりました。

◆"疲弊するミドル層"への対策
この調査結果から、働き盛りの30代〜40代は、上の世代に比べ、「仕事に対するやりがい」、「勤務先への愛着」、「能力発揮の実感」が低かったことが明らかになりました。
同協会では、「組織の中核たるミドルの疲弊として危機感を持って受け止めるべきだ」と提言しています。

転職者は転職に際して何を重視している?

◆人材確保のためには何が必要?
アベノミクス効果などにより景気が上向きつつある現在、転職を希望する人も徐々に増えてきているようです。企業が「優秀な人材」「望む人材」「欲しい人材」を獲得するためには、転職者に「この会社に行きたい」と思ってもらわなければなりません。それでは、転職者は何を求めて(何を理由に「この会社に行きたい」と思って)転職をするのでしょか?

◆調査結果から
日本経済新聞社とNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションが共同で、転職に関する意識調査を実施しましたが、その結果によると、「転職の条件で重視するもの」(3つまで回答)の回答の上位7つは以下の通りだったそうです。
(1)給与水準
(2)会社の将来性
(3)福利厚生
(4)職場の人間関係
(5)スキルやキャリアを磨ける可能性
(6)職務やポスト
(7)会社の社会的貢献度

◆「給与以外」で重要な要素
やはり1位はダントツで「給与水準」(82.2%)でした。「どうせ仕事をするなら、できるだけ高い給与が欲しい」と考えるのは、会社員にとって当然のことかもしれません。
しかし、給与はもちろん重要な要素ですが、「仕事は大変でもやりがいがある」、「仕事を通じて自分の成長を実感できる」「仕事を通じて社会の役に立てる」などと感じてもらえる職場や業務を提供することが、とても大切なのではないでしょうか。
今後、少子高齢化の進展により人材が不足することが確実視されていますが、会社の発展のために、どのような仕事を従業員に提供できるかがより重要になってくることでしょう。

=残暑厳しい折柄、健康にご留意ください=

平成25年7月号 Kitamura SR News

ボーナス支給日在籍要件は完全定着

◆退職者と賞与支給日
賞与の支給要件の内、最も頻繁に論じられたものが「支給日要件」です。支給日に賞与対象者であって、支給日に社員である者に対してだけ、賞与を支払うというもの。賞与は、勤怠状況や勤務成績の考課・査定に基づいて決定するのが一般的。その前の条件として、対象賞与を支給する要件の1つに、計算期間中に在籍していることが必要とされているが、これは十分条件ではなく「支給日在籍」が絶対的要件とする。争いになるのは、計算期間中は社員だったから、支給される権利を持っていると主張する。支給日直前に定年に到達し、退社する者には特別に支給対象とするが、有期労働者の期間満了や解雇は対象としないため、過去、話がこじれるケースが多かった。最近では最高裁の大和銀行事件判決によって「支給日在籍要件」が有効とされたため、係争になるケースは少なくなりました。

8月1日より変更される雇用保険の基本手当日額等

◆賃金日額・基本手当日額の変更
厚生労働省発表の「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減により毎年8月1日に見直される雇用保険の賃金日額の上限額・下限額が、2012年度の平均定期給与額が前年比で約0.5%減少したことから、いずれも若干の引下げとなりました。
これにより賃金日額に基づいて算定される基本手当日額の支給額も減額となる場合があり、対象となる方には2013年8月2日以降の認定日に返却される受給者資格者証に印字して通知されます。
なお、変更後の基本手当日額は、全年齢の下限額が1,848円です。上限額は、29歳以下は6,405円、30〜44歳は7,115円、45〜59歳は7,830円、60〜64歳は6,723円です。
さらに、基本手当日額以外にも、今回の変更に伴い、下記の雇用保険給付について支給額等の変更が生じます。

◆就業促進手当の上限額の変更
 就業促進手当(再就職手当、就業手当、常用就職支度手当)の上限額も変更となり、就業手当の1日当たり支給額(基本手当日額の30%)の上限額が、59歳以下で1,752円、60〜64歳で1,418円となります。

◆高年齢雇用継続給付の支給限度額等の変更
高年齢雇用継続給付の支給限度額は34万1,542円となり、最低限度額は1,848円となります。支給対象月に支払われた賃金の額が支給限度額以上であるとき、また、高年齢雇用継続給付として算定された額が最低限度額を超えない場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。なお、支給額算定に用いる60歳到達時等の賃金月額については、上限額が44万8,200円、下限額が6万9,300円となります。

◆育児休業給付の支給限度額の変更
初日が2013年8月1日以後である支給対象期間の育児休業給付については、上限額が21万3,450円となります。

◆介護休業給付の支給限度額の変更
初日が2013年8月1日以後である支給対象期間の育児休業給付については、上限額が17万760円となります。

精神障害の労災認定が過去最多に!

◆脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況
厚生労働省が、平成24年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を発表しました。これは、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況についてまとめたものです。くも膜下出血などの「脳血管疾患」や、心筋梗塞などの「心臓疾患」は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、これにより死亡した場合は「過労死」とも呼ばれています。

◆精神障害の労災認定件数が過去最多に
今回注目すべきは、精神障害の労災申請自体は前年より若干少なくなりました(1,257件)が、労災認定件数が475件(前年度比150件増)となり、過去最多となったことです。
その内容を見ると、昨今、行政による是正指導でも多く指摘されている事項が並んでいます。
業種別では、製造業や卸・小売業、運輸業、医療・福祉といった業種が多くなっています。

◆仕事量・内容の変化、嫌がらせ・いじめに注意
次に、出来事別に支給決定件数をみると、(1)仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった、(2)(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた、(3)悲惨な事故や災害の体験、目撃をした、の順に多くなっています。
また、増加件数としては、(1)1カ月に80時間以上の時間外労働を行った(前年度比29件増)、(2)(重度の)病気やケガをした(同27件増)、(3)上司とのトラブルがあった(同19件増)、(4)セクシュアルハラスメントを受けた(同18件増)、(5)(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた(同15件増)の順に多くなっています。

◆体調の管理と併せて労働時間の管理も
「1カ月に80時間以上の時間外労働を行った」という部分については、脳・心臓疾患の時間外労働時間数(1カ月平均)別支給決定件数をみても、飛躍的に発症件数が増えてくるところですので、会社の労働時間の管理が非常に重要であることがわかります。時間外労働が多いと睡眠不足など体調の管理も難しくなり、こうした労災の発生につながってくることも考えられます。

「安定志向」が若者に広まっている?

◆「第一志望に入社」は5割
今年度の新入社員を対象に実施した「働くことの意識」調査結果によると、「第一志望の会社に入れた」と答えた新入社員は、質問を開始した2009年以降で最低となる52.0%(前年比8.9%減)だったそうです。
厚生労働省・文部科学省の「大学卒業予定者の就職内定状況調査」では、大卒者の内定率(4月1日現在)は、一昨年(91.0%)、昨年(93.6%)、本年(93.9%)と好転しているため、厳しい採用状況から、志望レベルを下げてでも「内定を得ること」を優先している学生が多かったと言えそうです。

◆「社長になりたい」はわずか1割
「2013年度新入社員の会社生活調査」によると、最終的に目標とする役職・地位についての質問で、「社長」と答えた人が11.9%となり、調査を開始した1990年以降で最低となったそうです。一方、「部長」は昨年度の23.2%(前年度比0.3ポイント増)で過去最高を更新し、「課長」「係長」についても増加する傾向が見られました。経営トップを目指すという気概よりも、安定を求める人が多かったようです。

◆「定年まで同じ会社で働きたい」は減少
また、「この会社でずっと働きたいか」という問いには、昨年は過去最高を記録した「定年まで勤めたい」が、30.8%(前年度比3.5%減)に減少し、代わって「状況次第でかわる」が33.1%(前年度比1.7%増)で「定年まで勤めたい」を上回りました。
内定を得ることを重視して志望レベルを下げたことが「定年まで」と回答しにくくさせているようです。

平成25年6月号 Kitamura SR News

健康診断の法律的位置付け

◆労働安全衛生法
同法第66条では、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」とされており、更に常時50人以上の労働者を使用する場合には定期健康診断報告書を労働基準監督署に提出しなければいけません。これに違反した場合50万円以下の罰金が科せられることがあります。

◆健康診断の種類・対象労働者
◎一般健康診断
@雇入れ時の健康診断・・・常時使用する労働者を雇い入れる時に行う。
A定期健康診断・・・常時使用する労働者に対し、1年以内に1回、定期に行う。
B特定業務従事者の健康診断・・・深夜業などの特定業務に従事する労働者に対して配置替えの際および6カ月以内ごとに1回行う。
C海外派遣労働者の健康診断・・・労働者を海外に6カ月以上派遣する際および6カ月以上海外派遣した労働者を国内で業務に就かせる時に行う。
D給食従事者の健康診断・・・給食従事者に対し、雇入れの際および配置替えの際に行う。

◎特殊健康診断
高圧室内作業に関わる業務、潜水業務、放射線業務、特定科学物質を取扱う業務等の有害な業務に従事する労働者に対する健康診断。6カ月以内ごとに1回行う。

◆常時使用する労働者とは
雇入れ時の健康診断や定期健康診断においては「常時使用する労働者に対して医師による健康診断を行わなければならない」とされています。この常時使用する労働者とは正社員はもちろんですが、パート労働者においても1年以上の雇用見込がある場合、また1週間の所定労働時間が正社員と比較し、4分の3以上である場合にも該当するので健康診断を受診させる必要があります。

◆健康診断の費用、賃金支払、その後の対応
健康診断を行う際の費用に関して、行政通達では、事業者に実施義務を課している以上、事業者が費用を負担すべきとされています。
受診時の賃金の支払に関しては以下の通り。

【一般健康診断】
一般的な健康の確保を目的として実施義務を事業者に課したもので、業務遂行性との直接の関連において行われるものでない。

所定労働時間内での支払義務は無いが、事業の円滑運営には健康の確保が不可欠なので労使協議で定めて、事業者が負担するのが望ましい。

【特殊健康診断】
業務の遂行に関して、健康確保のために当然実施しなければならない。

受診に要した時間は労働時間に含めるので、支払う必要がある。原則的に所定労働時間内で行い、時間外に診断を行った場合は割増賃金も支払う。

◆健康診断後の対応
診断の結果、労働者に異常の所見があった場合は、事業主は医師の意見を聴き、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業転換、労働時間の短縮、深夜業の回数減少等の適切な処置を講じる必要があります。また健康診断の結果に基づいて健康診断個人票を作成し、5年間保存しなければなりません。

◆就業規則に記載する
事業主が労働者に対して健康診断を行い、診断結果を保存する義務があるのに、社員が健康診断の受診を拒否したり、診断結果を提出してこないことがあります。労働安全衛生法では、労働者に対して、事業主が行う健康診断を受けなければならないとありますが、罰則についての記載がなく、事業主には強制力がありません。
そのため、あらかじめ就業規則や労働契約で受診や提出を拒否した際の懲戒処分などの規定を設けておく必要があります。

老齢基礎年金の合算対象期間があるかも…

◆合算対象期間とは
老齢基礎年金を受けるためには、原則として、保険料を納付した期間と免除された期間を合算して25年の年金加入期間が必要です。しかしながら、これまでの年金制度の変遷の中で国民年金に任意加入しなかったり、国民年金の被保険者の対象となっていなかったことなどにより25年を満たせない場合があります。そこで、このような方も年金が受給できるよう、年金額には反映されませんが受給資格期間としてみなすことができる期間があります。この期間を「合算対象期間」といい、保険料を納付した期間と免除された期間に合算対象期間を加えた期間が25年以上あれば老齢基礎年金の受給要件を満たすことになります。
厚生年金等の加入期間がある方は、生年月日により、25年の年金加入期間がなくても受給資格期間を満たす特例があります。

◆主な合算対象期間について
((※)は20歳以上60歳未満の期間に限ります)

◎昭和61年4月1日以後の期間
1.日本人で、海外に居住していた期間の内、国民年金に任意加入しなかった期間(※)
2.平成3年3月までの学生(夜間制、通信制を除き、年金法上に規定された各種学校を含む)であって国民年金に任意加入しなかった期間(※)
3.第2号被保険者としての被保険者の内、20歳未満の期間または60歳以上の期間

◎昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間
4.厚生年金保険、船員保険および共済組合の加入者の配偶者で国民年金に任意加入しなかった期間(※)
5.被用者年金制度等から支給される老齢(退職)年金受給権者と、その配偶者、老齢(退職)年金の受給資格期間を満たした人と、その配偶者、障害年金受給権者と、その配偶者、遺族年金受給権者で国民年金に任意加入しなかった期間(※)
6.学生(夜間制、通信制、各種学校を除く)で、国民年金に任意加入しなかった期間(※)
7.日本国籍を取得した方、または永住の許可がされた方の取得・許可前の期間であって昭和56年12月までの在日期間(※)
8.日本人で海外に居住していた期間(※)
9.厚生年金保険・船員保険の脱退手当金を受けた期間(昭和61年4月から65歳に達する日の前月までに保険料納付期間(免除期間を含む)がある人に限る)
10.厚生年金保険・船員保険の被保険者および共済組合の組合員期間の内、20歳未満の期間または60歳以上の期間
11.昭和36年4月以降の国会議員の期間(※)
12.昭和37年12月以降の地方議員の期間(※)
13.国民年金の任意脱退の承認を受けて、国民年金の被保険者にならなかった期間(※)

◎昭和36年3月31日以前の期間
14.厚生年金保険・船員保険の被保険者期間(昭和36年4月以後に公的年金加入期間がる場合に限る)
15.共済組合の組合員期間(昭和36年4月以後に引続いている場合に限る)
受給要件を満たしていない・・・(涙)と諦め ている方も一度確認されてみてください。

平成25年5月号 Kitamura SR News

「健康保険被扶養者資格」の再確認について

◆健康保険の「被扶養者」とは?
協会けんぽホームページによれば、被扶養者の範囲は次の通りとされています。
1.被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、弟妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
2.被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の(1)〜(3)の人
(1)被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
(2)被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
(3)(2)の配偶者が亡くなった後における父母および子

◆被扶養者認定の留意点
ところが、上記の要件を満たさない者を被扶養者として申告してしまっていることにより、結果として本来保険給付を受けるべきでない人が保険給付を受けてしまい、被保険者の保険料負担増の一因となってしまっていることがあります。
具体的には、生計維持関係のない両親等を被扶養者に含めていたり、共働き夫婦の夫と妻の両方が子どもを被扶養者として申告していたりする等です。中には、社会保険の被扶養者要件と税法上の被扶養者要件とが違っている点がわからずに誤った申告をしてしまっているケースもありますので、注意が必要です。

◆被扶養者資格の再確認の実施について
協会けんぽでは、5月末から7月末までの間、被扶養者資格の再確認を実施しており、今年度も5月末から順次、被扶養者のリストが事業主宛てに送られてきます。
再確認の対象となるのは、被扶養者のうち、「2013年4月1日において18歳未満の被扶養者」と「2013年4月1日以降に被扶養者認定を受けた被扶養者」を除く人です。
リストが送られてきたら(1)該当被扶養者が現在も健康保険の被扶養者の条件を満たしているか確認のうえ、被扶養者状況リスト(2枚目は事業主控)に必要事項を記入し、事業主印を押し、(2)確認の結果、削除となる被扶養者については、同封の被扶養者調書兼異動届を記入し、該当被扶養者の被保険者証を添付し、(3)(1)および(2)を同封の返信用封筒にて提出します。すると、協会けんぽで確認のうえ年金事務所へ回送され、年金事務所で扶養者調書兼異動届の内容審査および削除処理が行われ、被扶養者(異動)届の「控」が事業主宛てに送られてくることとなります。

高年齢者雇用に関連した助成金の 変更内容

◆法改正にあわせた変更
改正高年齢者雇用安定法の施行にあわせて、高年齢者雇用に関連した助成金の制度も変わっています。まだ不確定な部分もありますので、今後の動向に注目です。

◆法改正を機に廃止された助成金
従来の「中小企業定年引上げ等奨励金」「高年齢者職域拡大等助成金」は平成25年3月31日をもって終了となりました。なお、「中小企業定年引上げ等奨励金」については、平成25年3月31日までに、「65歳以上への定年引上げ」、「定年制の廃止」、「希望者全員を対象とする70歳以上までの継続雇用制度」などの導入を行った中小企業事業主については、支給の対象となります。また、「高年齢者職域拡大等助成金」についても、平成25年3月31日までに「職域拡大等計画書」を申請した事業主については、支給の対象となります。

◆法改正後も引き続き支給される助成金
「特定求職者雇用開発助成金」は、新たにハローワーク等の紹介により60歳以上65歳未満の者を継続して雇用する労働者として雇い入れた場合等に支給されるものですが、この助成金については、引き続き存在しています。

◆新設される予定の助成金
なお、「高年齢者労働移動受入企業助成金」(定年を控えた高年齢者で、その知識や経験を活かすことができる他の企業への雇用を希望する者を、職業紹介事業者の紹介により失業を経ることなく雇い入れた場合に支給)については、新しい助成金に移行する予定であり、今後、厚生労働省などから周知されるとのことです。

4月1日から失業認定の手続きが変わっています

◆基本手当の不正受給の実態
雇用保険の基本手当は、労働の意欲および能力を有しながら働くことができずに、求職活動を行っている方の生活の安定と早期再就職を促進するための給付ですが、いわゆる「不正受給」に当たるケースがあることが確認されています。
厚生労働省の発表によると、2005年から2009年までの間に4万件超の不正が確認されていますが、氷山の一角に過ぎないとも言われています。基本手当等の給付は、被保険者等が負担する保険料によって賄われているものですので、当然、同省もこのようなケースを見過ごすことはできず、法改正等の対応により対策を講じており、件数が減少する傾向になっていましたが、リーマンショックの影響があった2009年度は前年度比で20%近く件数が増えています。

◆不正受給対策の内容
不正受給で多いケースは、基本手当を受給しているにもかかわらず、求人に応募したりハローワークの職業相談を利用したりするといった求職活動の実態がないケース、求職活動の結果、再就職できたにもかかわらず、その報告をしないで基本手当を受給し続けるというケースが大半を占めます。そのため、ハローワークでは失業認定申告書に具体的な求職活動の内容を記載させたり、申告書に書かれた企業等に実際に応募があったかどうかの確認をとったりして、求職活動の実態を調査しています。
また、不正受給が発覚した場合には「2倍返し」「3倍返し」させる等の厳しいルールを設けることで、不正受給を抑止する効果をねらっています。

◆本人確認の徹底
さらに、基本手当の受給を申請するときには、離職票のほか、本人確認書類(運転免許証や写真付き住民基本台帳カード等)や本人名義の通帳等を持参して受給資格の決定を受けた後、受給説明会等を経て、指定した口座に給付が振り込まれることとなります。この本人確認について、今年4月1日より雇用保険法施行規則が改正され、受給資格決定時だけでなく、受給資格決定後においても、本人確認書類の提出を求めることができることとされました。

出張と業務上災害の関係

出張は、事業主の管理下を離れているが、その成否、遂行方法などについて包括的に事業主に対して責任を負っており、その全過程について支配下にあるといえ、業務起因性が認めらます。出張者は日常生活どおり、入浴や食事をするのは、私的行為でなく「付随行為」とされ、業務遂行性も認められるから、その過程で遭遇した事故は業務上とされます。ただし、晩酌の習慣のあるものが、夕食時に宿泊する旅館、ホテル内で飲食することは付随行為とされるが、外出してはしご酒をしたり、パチンコなどの遊戯中の事故は私的行為として「業務外」とされる可能性が高い。そのほか、運動競技・宴会・慰安旅行などは世話役だけが業務上、接待ゴルフは所定労働日の場合は業務上となるが、休日の場合には、業務の話が出ても業務外とされます。 (完)

平成25年4月号 Kitamura SR News

精神疾患の急増による人事管理対応

◆精神疾患者への会社ルールの整備
従業員を業務に就かせることが、不能または適当ではない場合、会社は一定期間労働義務を免除あるいは、労働を禁止する「休職制度」を設けているケースが一般的です。その内容については、法律は関与していないが、行政・司法などから妥当と認められるには、就業規則または労働協約による「定め=制度化」が必要であり、御社ではいかがでしょうか?
その規定に基づいて会社は休職制度の適用を行うことができる。休職期間は、会社毎に様々ですが、いろいろな休職の中でも、私傷病休職に問題が発生しています。メンタルヘルス対応は、厚労省でも注視していますが、不調者の多くは就業継続に適さず、休職となるケースが多い。うつ病の発症にも関係しており、治癒に至る前に、職場復帰と休職を繰返すことが多いのがこの疾病です。復帰後、再休職した場合、ゼロからスタートするといつまでもこの不安定労働力を抱えることになるため、同一疾病が再発した場合には「通算」して休業期間をカウントし、満了した時に「自動的」に退職させる規定設けたい。なぜなら、安全配慮義務違反や増悪した場合の「業務上疾病」を問われることを回避するために、御社の規定を一度確認してください。

「解雇権濫用」「名ばかり管理職」に関する裁判例

◆メーカーが多数の労働組合員を解雇
神戸市にある鋼管メーカーを解雇された従業員(22人)が地位確認などを求める訴えを提起していましたが、神戸地裁は「解雇権濫用のため無効である」として、会社に対して未払賃金の支払いを命じる判決を下しました(2月27日)。
この会社は、事業縮小を理由として2011年6月に工場勤務の従業員(28人)を解雇しましたが、28人のうち26人は労働組合員だったそうです。 裁判官は判決で「他部署への配転を検討するなど、解雇を避ける努力を尽くしていない」と指摘し、また、解雇された従業員の大半が労働組合に加入していたことが「明らかに不自然である」としました。
原告の男性の1人は、「会社は判決を重く受け止め、早く職場に戻してほしい」と話しているとのことです。

◆大学が財務課長を管理職扱い
広島県にある私立大学の元財務課長(57歳)が、実態は管理職ではないにもかかわらず管理職として扱われて残業代が支払われなかったとして、大学側に対して未払賃金等(約630万円)の支払いを求めて訴えを提起していましたが、広島地裁は「時間外手当の支給対象外となる管理監督者には該当しない」として、学校側に対して約520万円の支払いを命じました(2月27日)。
訴えていた男性は、2008年4月から2011年3月まで財務課長を務めており、最も多い月の残業時間は103時間30分だったそうです。
裁判官は判決で「原告の上司として法人事務局長などが置かれ、業務の大部分で上司の決裁が必要であり、権限は限定的だった」としました。また、出退勤時間等に関する裁量が限られていたことなども考慮され、「権限や責任が経営者と一体というのは困難である」とされました。
大学側はこの判決に不服のため、控訴を検討しているとのことです。

4月以降の「雇用関係助成金」の改正と新設・統廃合

◆平成25年度から新体系に
厚労省は、4月から雇用関係助成金制度の一部について、既存の助成金で類似するものを統廃合するなどして、わかりやすく、活用しやすい制度体系に変更することを発表しましたが、実態は縮小され且つ活用しづらくなった感じが強い。
具体的には、雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金のように類似する制度を統合して新設するもの(「雇用調整助成金」に一本化)、中小企業定年引上げ等奨励金など、平成24年度末で廃止となるものなどがあります。

◆雇用調整助成金の改正点
雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金が統合されて雇用調整助成金に一本化されますが、4月1日以降、以下のように一部内容を変更することが発表されています。

(1)助成率の変更
・大企業:3分の2(4分の3)→2分の1
・中小企業:5分の4(10分の9)→3分の2
※( )内の「労働者の解雇等を行わない場合、障害者の場合」も同様の助成率となる。
(2)教育訓練(事業所外訓練)の助成額の変更
・大企業:4,000円→2,000円
・中小企業:6,000円→3,000円
(3)円高の影響を受けた事業主に対する生産量要件緩和特例の廃止


◆日本再生人材育成支援事業奨励金の新設
また、4月以降も継続されるものとして、すでに1月より、重点分野(健康・環境・農林漁業分野等)において、有期契約労働者等も含めた労働者に対して、一定の職業訓練を実施した事業主や、被災地復興のために必要な建設関係の人材育成を行った事業主に向けて、以下のような助成金が実施されています。

・正規雇用労働者育成支援奨励金
・非正規雇用労働者育成支援奨励金
・海外進出支援奨励金(留学)
・海外進出支援奨励金(送り出し)
・被災地復興建設労働者育成支援奨励金
今後、非正規労働者のキャリアアップ支援、若年層の安定雇用の確保、高齢者の就労促進などを目的とする新しい助成金も設けられる予定ですので、動向を注視したいところです。

中小企業は受注減少・取引打切り約半数

◆中小企業の取引関係調査
連合が300人未満の中小企業を対象に昨年行った調査結果によると、抱える課題として「取引先からの受注減少や取引打切り」が5年前の前回調査より14.8%も増加、企業数も半数近いことが分かった。
取引先から具体的説明もなく、あるいは説明されても納得できないまま単価引下げを要請されたのは約45%で、それら要請に近い水準で応じたのはおよそ3割。運輸業や情報・ソフトウェア業ではその傾向が強く、30人未満規模の中小零細はそれら要請をほぼ丸のみ状態となっていた。円高・株高の効果は、 大企業中心に業績回復が顕著だが、中小零細企業には行渡っていないようです。
一定の役割を果たした「金融円滑化法」の期限切れ後、日銀の金融緩和で民間銀行の貸出が増え、中小零細の企業経営を下支えすることに期待します。

平成25年3月号 Kitamura SR News

「改正高年法」施行目前! 定昇など賃金制度の動向

◆活発化する賃金をめぐる動き
平成25年の春闘がスタートし、ローソンが2013年度から20代後半〜40代の社員の年収を平均3%(平均約15万円)引き上げることを発表したり、先頃行われた政府と経済3団体トップとの会談で、安倍首相から、デフレ脱却に向けて業績が改善した企業から賃金を引き上げるよう要請が出たり、賃金をめぐる動きが活発化している。

◆約4割の企業では定期昇給を導入していない
日本生産性本部が2012年10月〜11月にかけて実施した調査によると、年齢や勤続年数に応じた定昇がある賃金カーブの設計となっている企業は過半数(55.2%)を占めているものの、「定期昇給はない」という企業も約4割(39.6%)となったことがわかった。定昇制度の導入率を過去の調査と比較すると、2000年が87.3%、2004年が62.2%となっており、徐々に導入率は低下している。

◆定昇を導入している企業の約半数が見直しを検討
定昇制度がある企業での今後の定昇制度の取扱いについては、「現状のまま」が42.4%となった一方で、「定期昇給によって上がる水準を抑制したい」が25.9%、「一定年齢までは定昇はやむを得ないが、もう少し早めの年齢で止めたい」が21.2%となり、合計で47.1%は見直しを考えていることがわかった。 企業規模が5,000人以上になると「現状のまま」という企業は12.5%まで減少し、「定期昇給によって上がる水準を抑制したい」が37.5%、「一定年齢までは定昇はやむを得ないがもう少し早めの年齢で止めたい」が25.0%で、合計62.5%となり、さらにその傾向が強まっていることがわかる。

◆年齢・勤続給を導入する企業は減少
基本給に採り入れられている賃金体系を見ると、管理職層では、役割や職責あるいは職務の価値を反映させる「役割・職務給」の導入率が79.2%と高く、職務遂行能力の高さを反映させる「職能給」の導入率はついては、やや下がって65.6%となっています。また、年齢や勤続年数を反映させる「年齢・勤続給」については、22.7%となっている。
非管理職層についても同様の傾向がみられますが、どちらに関しても言えることは、「年齢・勤続給」は、調査開始から下がり続けているということです。4月からの「改正高年齢者雇用安定法」の施行による65歳までの雇用義務化に伴い、再雇用者の賃金の賃金水準を引き下げることを検討する企業が増えることも予想される。そうした場合の再雇用者の勤労意欲との兼ね合いが課題となります。

「退職強要」「追い出し部屋」の有無に関する調査結果について

◆調査はなぜ、どのように行われたか?
大手企業に「追い出し部屋」と呼ばれる部署が次々とできている問題については、先月の事務所通信でも取り上げましたが、厚労省は「退職強要の有無等に関する調査」を実施し、その内容を1月29日に公表した。この調査は、製造業大手企業などで上記のような部署が存在し、転職を勧めたり、退職を迫ったりするケースがあるとの報道を受け、同省の職員が実態を把握するために、報道された企業に対して直接聴き取る方法で行われました。しかし、企業の人事担当者から30分〜1時間ほど説明を聞いただけでは、実態まで把握できたか?いささか疑問が残る…

◆ベネッセ訴訟「追い出し部屋」は違法
通信教育大手のベネッセコーポレーションがつくった「人財部付」という部署へ配属された女性社員が、「人財部付の存在自体が違法」と訴え、異動命令の無効などを求めた。「(会社が主張する)『再教育』とは名ばかりで、単純作業をやらせて、退職以外に道はないと思い込ませる場として機能している。『社内就職活動』も、現実には配属先がないことを感じさせて退職に追い込もうとするものだ」と指摘した。昨年8月、東京地裁立川支部は「追い出し部屋」を違法と判決した。その実態は、

@単純労働をさせる
A社内の他の部署への「就職活動」をさせる
B評価や給与を下げる
C業務を制限する
・名刺を持たせない
・電話に出させない
・社内ネットにアクセスさせない
・担当表に名前を載せない

これらの事実を総合すると、実質的な退職勧奨の場となっていた疑いが強く、違法な制度として、こうした部署への配属を命じることは、人事権の裁量の範囲を逸脱したものとして、無効を言い渡した。

◆厚生労働省の対応
今回の調査において、厚生労働省は「明らかに違法な退職強要を行っている企業は確認されなかった」と結論づけ、しつこく退職をせまれば違法になるとして、注意をうながすにとどめた。その反面、余剰人員を何とか活用しようとしている企業も見られ、その経営努力を『違法』とされる恐れもあり、厳しい…

今どきの「飲みニケーション」の実態は?

◆職場の飲み会は「仕事の延長線上」?
株式会社エルネットが運営するオンラインストレージサービス(宅ふぁいる便)のユーザーを対象に実施した「職場の飲み会に対するアンケート」によると、職場の飲み会がどのような場であるのかを聞いた質問では、「やや仕事の延長線上の場」との回答が39.0%、「やや仕事を離れた息抜きの場」が35.2%、「仕事の延長線上の場」が17.1%、「仕事を離れた息抜きの場」が8.8%となった。「仕事の延長線上」であると考えている人が若干多い結果です。

◆飲み会頻度は月?回、平均費用3,000〜4,000円
「職場の仲間と飲みに行く頻度は?」の質問に対しては、「不定期」との回答が多数を占め(62.2%)、次いで「月に1回」(15.4%)、「月に2-3回」(13.1%)、「月に4回以上」(7.6%)と続いています。また、職場の仲間との飲み会の1回当たり平均費用は?との質問に対する回答では、多い順に「3,000〜4,000円」(39.7%)、「2,000〜3,000円」(27.1%)、「4,000〜5,000円」(21.4%)、「5,000円以上」(7.6%)、「2,000円未満」(4.3%)となった。

◆飲みニケーション会で感じる不快とは?
転職サイト「マイナビ」が行ったアンケートによると、「だから職場の飲み会は行きたくない!」と思ってしまう瞬間について、次のような回答が挙がっています。

【男性】
(1)上司の説教が始まる(20.4%)
(2)飲み会の時間が長い(18.7%)
(3)会費が高い(16.2%)
【女性】
(1)会費が高い(23.6%)
(2)お酌をさせられる(22.3%)
(3)飲み会の時間が長い(19.2%)
飲み会の場で不快に感じる方もいるようですが、飲み会が職場での人間関係に与える好影響も小さくないとの意見多数あり…本当?

平成25年2月号 Kitamura SR News

「追い出し部屋」(退職強要)問題と退職勧奨の注意点…終身雇用の陰…

◆「追い出し部屋」問題の帰趨は如何に?
パナソニック子会社2社、他大手企業の社員から「追い出し部屋」などと呼ばれる部署の設置が相次いでいるとの朝日新聞報道があり、厚生労働省が実態調査に乗り出すことになりました。違法な退職強要につながるおそれがあり、企業からの聞き取りを中心に調査を行うようです。調査の中身は、どの程度の数の企業で設置され、どんな仕事を命じているのかについて把握し、退職強要について注意を促すとのことです。また、調査の際に「賃金未払い」や「解雇手続」に関する違反が見つかれば、併せて是正指導がなされるそうです。
しかし設置する企業側は、法的根拠も検討した上のこと故、違法性の立証は困難と推測されます。

◆「退職勧奨」と「退職強要」の違い
会社が、社員の自由意思による退職を勧めるのが「退職勧奨」であり、これ自体は、会社と社員間の労働契約について社員の自由意思による解約を会社から申し出るもので、法的な規制はありません。
しかし、あまりに執拗に行ったり、詐欺・脅迫などにより行ったりすれば、違法な「退職強要」とみなされてしまいます。実際に、そうした裁判例も多々あり、損害賠償のリスクや雇用契約の解消が無効とされるリスクがあります。今回の追い出し部屋問題では、企業側としては「新たな技能を身につけたりして、他部署の応援や再配置の役に立つように」との意図からそうした部署を設置しているとしていますが、社員側は「社内失業者を退職に追い込むのが狙い」と反発しています。

◆退職勧奨実施時の注意点
退職勧奨は解雇規制の厳しい日本においてはよく用いられる方法ですが、実際に退職勧奨を行う場合は、前述のように裁判となるリスクがあります。裁判とならないためには、退職勧奨の行い方に注意が必要です。退職勧奨の実施回数・場所・時間、社員に伝えるべき事項とその伝え方、退職届の受理方法、必要となる書類の作成などに注意して、適切に行わなければなりません。
もっとも、退職勧奨を行う以前に、問題のある社員に対する日頃の注意・指導や労務管理のあり方のほうが重要であり、仮に裁判等になった際にも労務管理の証拠書類が会社の有利に働くものであることは知っておいていただきたいものです。

「緊急経済対策」に盛り込まれた 企業向け支援措置の内容

◆具体的な内容は?
低迷する景気の底上げのための「緊急経済対策」の内容が1月の閣議決定で明らかになり、企業向けの措置として、企業規模にかかわらず新規に雇用を増やした場合にかかる費用の一定割合について、法人税額から差し引く仕組みが創設されるとのことです(2〜3年間の時限措置とされる見込み)。
この「費用」には、新規の雇入れだけでなく、既存の従業員に対する賃上げ等に要する費用も含まれることとなっています。
また、研究開発費用や設備投資費用の一定割合についても、減税対象とされています。

◆気になる今後の動向
制度の詳細は、1月下旬にもまとめられる予定の「税制改正大綱」において決定され、通常国会に提出された後、審議されることとなります。なお、厚生労働省は、平成25年度税制改正における要望として、雇用促進税制の拡充を挙げていましたが、年間の新規採用者を5人以上(中小企業は2人以上)増やし、かつ雇用者数を10%以上増加させた企業に対し、増やした人数1人当たり20万円の税額控除を認める仕組みについて、1人当たり40万円に拡大する方向で検討されています。

◆その他の支援措置
同じく2013年度以降の措置として、「中小企業金融円滑化法」(いわゆる「モラトリアム法」)が、2013年3月31日に期限切れとなり、貸し剥がし等の加速が懸念されていることを受け、金融庁は、全国の財務局に融資に関する苦情相談の専用窓口を設け、また、中小企業が求める融資条件の変更に金融機関がどれだけ応じたかを開示するよう求めることとしました。さらに、金融機関の健全性を検査する指針「金融検査マニュアル」に融資条件変更にできるだけ応じることを明記し、金融機関が正当な理由なく条件変更を拒否しないよう指導することとしています。
また、厚生労働省では、2012年度補正予算案に「若者・子育て支援」として2,200億円を盛り込み、失業中の若年者等を雇い入れ、職業訓練を実施した企業に月15万円(最長2年間)を支給することを検討しています。
新規採用等を検討している企業においては、こうした動きに注目し、採用と費用の発生のタイミングを検討する必要があるでしょう。

近年増加している 「ベランダ喫煙」のトラブル

◆「ベランダでの喫煙は違法」階下住民に 賠償命令
先日、いわゆる「ベランダ喫煙」に関するトラブルについて、非常に興味深い判決が下されました。マンションのベランダからの受動喫煙が原因で体調が悪化したとして、住人(70代女性)が階下の60代男性を相手に損害賠償(150万円)を求める訴訟を起こし、名古屋地裁は、受忍限度を超えており違法だと判断して女性の精神的損害を認め、男性に5万円の支払いを命じました。

◆双方の主張内容
判決によると、女性は5階、男性はすぐ下の4階に居住し、男性は家族がいるときは外(ベランダ)でたばこを吸う習慣でした。
一方、女性にはぜんそくの持病があり、下から流れてくるたばこの煙をストレスに感じ、帯状疱疹を発症したため、扇風機や空気清浄器を付けるなどの対策を講じたり、手紙や電話で喫煙をやめるよう男性に求めたりしましたが、応じてもらえなかったようです。
男性側は、「女性の体調悪化と煙の因果関係は認められないこと」、「マンションの規則でベランダでの喫煙は禁じられていないこと」、「たばこを吸いながら景色を眺める楽しさや私生活の自由があること」などを挙げ、違法性はないと反論していました。

◆判決の内容
判決は昨年12月13日付で確定しており、川に面した景色の良さから、女性がたばこの煙を防ぐため「日常的に窓を閉め切るような環境ではない」とし、他の居住者に著しい不利益を与えながら防止策をとらないことは不法行為に当たると認めました。原告側の弁護士は「受動喫煙を訴えた訴訟で和解例はあるが、原告が勝訴するのは極めて珍しい」と述べています。

◆肩身の狭い喫煙者
「ベランダ喫煙」に関する苦情の相談が非常に増えており、換気扇で煙を外に出すことも含め、「マンションの自宅からたばこの煙を出してはいけない時代になっている」としています。先日、某社採用ページに「喫煙者は採用しない」旨が掲載され話題になりましたが、今回の訴訟の結果からも喫煙者はますます肩 身の狭い思いを強いられそうです。

平成25年1月増刊号 Kitamura SR News

改正高年齢者雇用安定法に関するQ&Aが公表されました。

平成25年度から公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65歳へ引き上げられることに対応し、雇用と年金の   確実な接続等を図るため、平成24年の第180回通常国会において高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正(平成25年4月1日施行)が行われました。この程、法改正の趣旨等を踏まえ、当該改正法に係るQ&Aが公表されました。
このQ&Aは、「継続雇用制度の導入」、「就業規則の変更」などの大きく5つに区分して構成されています。以下、その一部を抜粋してご紹介いたします。

●継続雇用制度導入について
今回の「労働契約法の一部を改正する法律」では、有期労働契約について、次の1〜3の3つのルールを規定しています。

Q.継続雇用制度について、定年退職者を継続雇用するにあたり、嘱託やパートなど従来の労働条件を変更する形で雇用することは可能ですか。その場合、1年ごとに雇用契約を更新する形態でも良いのでしょうか。

A.継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で決めることができます。1年ごとに雇用契約を更新する形態については、高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、年齢のみを理由として65歳前に雇用を終了させるような制度は適当ではないと考えられます。
したがって、この場合は、(1)65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと、(2)65歳までは、原則として契約が更新されること(ただし、能力など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められます。) が必要であると考えられますが、個別の事例に応じて具体的に判断されることとなります。

●就業規則の変更について
Q.継続雇用制度について、定年退職者を継続雇用するにあたり、嘱託やパートなど従来の労働条件を変更 する形で雇用することは可能ですか。その場合、1年ごとに雇用契約を更新する形態でも良いのでしょうか。

改正高年齢者雇用安定法では、経過措置として、継続雇用制度の対象者を限定する基準を年金支給開始年齢以上の者について定めることが認められています。したがって、60歳の者は基準を利用する対象とされておらず、基準の対象年齢は3年毎に1歳ずつ引き上げられますので、基準の対象年齢を明確にするため、就業規則の変更が必要になります。

【希望者全員を65歳まで継続雇用する場合の例】
第●条 従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日をもって退職とする。ただし、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者については、65歳まで継続雇用する。

【経過措置を利用する場合の例】
第●条 従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日をもって退職とする。ただし、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者であって、高年齢者雇用安定法一部改正法附則第3項に基づきなお効力を有することとされる改正前の高年齢者雇用安定法第9条第2項に基づく労使協定の定めるところにより、次の各号に掲げる基準(以下「基準」という。)のいずれにも該当する者については、65歳まで継続雇用し、基準のいずれかを満たさない者については、基準の適用年齢まで継続雇用する。

(1)引き続き勤務することを希望している者、(2)過去●年間の出勤率が●%以上の者、(3)直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと 等

2) 前項の場合において、次の表の左欄に掲げる期間における当該基準の適用については、同表の左欄に掲げる区分に応じ、それぞれ右欄に掲げる年齢以上の者を対象に行うものとする。
平成25年4月1日から平成28年3月31日まで→61歳
平成28年4月1日から平成31年3月31日まで→62歳

平成25年1月号 Kitamura SR News

有期労働契約の新しいルールについて

有期労働契約は、パート労働及び派遣労働等の、いわゆる正社員以外の労働形態に多く見られる労働契約のタイプです。現在、有期労働契約で働く人は全国で1,200万人と推計されています。そして、その約3割が通算5年を超えて有期労働を繰り返し更新しているのが実態であり、その下で生じる雇止めの不安解消が課題とされています。そこで、働く人が安心して働き続けることができるよう労働契約法が改正され、有期労働契約の適正な利用のためのルールが整備されました。

◆労働契約法改正のポイント
今回の「労働契約法の一部を改正する法律」では、有期労働契約について、次の1〜3の3つのルールを規定しています。

1.無期労働契約への転換
有期労働契約が反復更新されて通算5年(※)を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。
 (※)5年のカウントは、このルールの施行日以後に開始する有期労働契約が対象です。施行日前に既に開始している有期労働契約は5年のカウントに含めません。

2.「雇止め法理」の法定化
最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定されました。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールです。

○対象となる有期労働契約
(1)過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
(最高裁第一小法廷:昭和49年7月22日判決(東芝柳町工場事件)の要件を規定したもの)
(2)労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由(※)があると認められるもの
(最高裁第一小法廷:昭和61年12月4日判決(日立メディコ事件)の要件を規定したもの
(※)合理的な理由の有無については、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されます。
(※)いったん、労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに合理的な理由の存在が否定されることにはならないと解されます。

○要件と効果
上記の(1)、(2)のいずれかに該当する場合に、使用者が雇止めをすることが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、雇止めが認められません。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されます。

○必要な手続
条文化されたルールが適用されるためには、労働者からの有期労働契約の更新の申込みが必要です(契約期間満了後  でも遅滞なく申込みをすれば条文化されたルールの対象となります)。
ただし、こうした申込みは、使用者による雇止めの意思表示に対して、「嫌だ、困る」と言うなど、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもかまわないと解されます。

3.不合理な労働条件の禁止
有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールです。

○対象となる労働条件
 一切の労働条件について、適用されます。賃金や労働時間等の狭義の労働条件だけでなく、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など、労働者に対する一切の待遇が含まれます。

○判断の方法
労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、
(1)職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
(2)当該職務の内容および配置の変更の範囲
(3)その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されます。とりわけ、 通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、上記(1)〜(3)を考慮して、特段の理由がない限り、合理的とは認められないと解されます。

4.施行期日
2について:平成24年8月10日
1及び3について:平成25年4月1日

「定年後再雇用拒否」をめぐり最高裁で初判断

◆事件の概要
定年後再雇用を拒否された労働者が会社に対して地位確認などを求めた訴訟の上告審判決が11月29日、最高裁(第1小法廷)であり、継続雇用の基準を満たす労働者は定年後も雇用の継続を期待する合理的理由があるとして、解雇法理を類推適用して雇用関係の存続を認め、会社側の上告を棄却し、雇用の存続と賃金の支払いを命じました。平成18年4月改正による高年齢者雇用安定法(高年法)下の再雇用拒否事件で、初めて最高裁による判断が示されたことになります。この事件では、JMIU(全日本金属情報機器労組)津田電気計器支部(大阪府箕面市)の書記長を含む全組合員3人だけが再雇用を拒否されたため、社員としての地位確認と賃金の支払いを求めていたもので、22年9月の大阪地裁、23年3月の大阪高裁のいずれも労働者側の主張を認める判決が出されていました。

◆会社による恣意的な再雇用基準の運用は認められない
本件では、労働者側は雇用の継続を希望したものの、会社側は仕事ぶりを点数化して評価する社内基準を満たしていないとして、61歳を迎えた21年1月以降の再雇用を拒否していました。裁判所は、この会社の対応について、「男性は社内の基準を満たしており、再雇用しないのは合理的な理由を欠く」と述べ、不当に低い評価をして再雇用を拒否したのは違法だとの判断を示しました。

◆再雇用拒否をめぐる労使トラブルの今後
本年4月より改正高年法が施行されると、一定年齢以上の者については、従来通り労使協定等に定める再雇用基準に照らして継続雇用の対象とするかどうかを会社が判断することができますが、それ以外の者については、原則として、希望者全員を雇用確保措置の対象とすることが義務付けられます。今後は、企業が不当に労働者の継続雇用申入れを拒否した場合や、再雇用後の雇止め理由が合理的でない場合等に、労働者から地位確認および賃金の支払いを求めて訴訟提起される可能性があると言えます。

=今月はここまで。また来月お届けします=

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