北村社労士事務所事務所通信
平成27年9月号 Kitamura SR News
「マイナンバー制度」雇用保険関係の最新情報!
◆厚労省から続々と情報が公表
8月に入り、厚生労働省から雇用保険関係のマイナンバー制度に関する情報が続々と公表されています。
まず、8月3日に「概要リーフレット」と、事業主向けの詳細資料である「マイナンバー制度の導入に向けて(雇用保険業務)」が公表され、来年1月から使用するマイナンバー制度に対応した雇用保険関係の様式案(7月時点の改正案)も公開されました。
さらに8月5日には「雇用保険業務等における社会保障・税番号制度への対応に係るQ&A」が公表されています。
マイナンバー制度に関する同省関係の情報発信は、国税庁などに比べると遅れ気味ではありますが、ようやく出てきたといった感じです。
なお、個人番号については厳重な管理が必要とされているため、同省ではできるだけ電子申請による届出を行うよう呼びかけています。
◆「Q&A」の内容
以下では、上記「Q&A」の内容からいくつかご紹介します(全体版は『厚生労働省 マイナンバー制度 雇用保険関係』で検索してご覧ください)。
Q7 「離職票−1」は事業主が個人番号を記載して離職者に交付するのか。
(答)「離職票−1」の個人番号欄は離職者が記載することとしており、事業主はハローワークから交付された「離職票−1」(個人番号欄は空欄)を離職者に交付していただくこととなります。
Q9 雇用保険手続について、手続の契機ごとに同一従業員の個人番号を重複して提出することになるのか。
(答)個人番号のハローワークへの届出にあたっては、事業主が従業員から個人番号を収集する際に本人確認を行った上で提出することからハローワークでは本人確認等の事務は行わないこととなりますが、仮に、個人番号が誤って登録された場合には、その後の事務処理に多大な影響を生じることとなることから、手続頻度の高い届出について、届出の契機ごとに、個人番号を記入して提出することとしています。
Q11 従業員から個人番号の提供を拒否された場合、雇用保険手続についてどのような取扱いとなるのか。
(答)雇用保険手続の届出にあたって個人番号を記載することは、事業主においては法令で定められた(努力)義務であることをご理解いただいた上で、従業員から個人番号の提供を求めることとなりますが、仮に提供を拒否された場合には、個人番号欄を空白の状態で雇用保険手続の届出をしていただくこととなります。その上で、再度、従業員から個人番号の提供を求めた上で、個人番号の提供があった場合には、所定の様式により提出していただくこととしています。
平成27年度 最低賃金額引上げの目安と企業の対応
◆地域別最低賃金額改定の目安
地域別最低賃金額が10月から引上げとなる見込みです。引上げ額の目安については、都道府県の経済実態に応じ、次の通り提示されています。
・Aランク⇒19円(千葉・東京・神奈川・愛知・大阪)
・Bランク⇒18円(茨城・栃木・埼玉・富山・長野・静岡・三重・滋賀・京都・兵庫・広島)
・Cランク⇒16円(北海道・宮城・群馬・新潟・石川・福井・山梨・岐阜・奈良・和歌山・岡山・山口・香川・福岡)
・Dランク⇒16円(青森・岩手・秋田・山形・福島・鳥取・島根・徳島・愛媛・高知・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)
◆今後の流れ
現在、各地方最低賃金審議会で上記の目安を参考に調査審議が行われており、その答申を経て、各都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定することとなります。
もっとも、提示された目安と異なる地域別最低賃金額が定められた例は過去ほとんどなく、目安額通りに決定されるものと考えられます。
◆引上げ前のチェックが必要
最低賃金額に近い額で雇用契約を結んでいる従業員が多い事業場では、引上げ後の最低賃金額を上回る額が支払われているか、注意が必要です。
時間給を計算してみると最低賃金額を割り込んでしまっているケースが、アルバイト・パートタイマーはもちろん、正社員の場合であっても散見されます。
時給制の場合にはわかりやすいのですが、月給制や日給制の場合は、賃金額を労働時間数で割り戻して時間給を算出し、最低賃金額と比較してみてください。
賃金額が最低賃金額を下回る場合には刑事罰が定められており(最低賃金法40条、50万円以下の罰金)、悪質な場合には書類送検の可能性もあります。「引上げにきちんと対応できていなかった」という“うっかりミス”が多い部分ですので、10月の引上げ前に、再度、最低賃金額関連の管理について見直しておきましょう。
運用次第で給付額が変動可能に!「第3の企業年金」とは?
◆来年度から導入か?
厚生労働省は、新しい企業年金制度を創設することを明らかにし、制度設計の検討に入りました。今後、企業年金の関連政令を改定し、早ければ来年度にも企業が導入できるように議論が進められています。
現在の企業年金は、「確定給付型」と「確定拠出型」の2種類ですが、双方の特徴を併せ持つ「第3の企業年金」として新たな企業年金制度が設けられることになります。
◆制度の特徴は?
確定給付型年金は、企業が掛金を負担して運用するため、従業員にとってはメリットの多い制度ですが、企業の負担が大きく制度を辞める企業が増えています。
企業の負担を和らげるために2001年に導入された確定拠出型年金は、加入者が自分で運用するため、個人のリスクが大きいとされています。
今回検討されている「第3の企業年金」では、運用は確定給付型のように企業が行いますが、年金額は確定拠出型のように変動することになります。つまり、加入者は運用リスクを引き受けることになりますが、個人で運用する必要はなくなります。
◆企業への影響は?
現在、勤務先で企業年金に加入している人は約1,700万人(2014年3月時点)で、これは会社員の約40%強が加入していることになります。最近では、確定給付型の厚生年金基金からの脱退や基金の廃止が相次いでいるため、「第3の企業年金」の創設により、多くの企業が企業年金制度を見直すことが予想されます。
=9月号は以上です=
平成27年8月号 Kitamura SR News
深夜残業翌日は遅出の「勤務間インターバル制度」導入の動き
◆「勤務間インターバル制度」とは?
この制度は、終業から次の始業までの間に一定の休息を取らせる仕組みで、大企業での導入が増えています。極端な働き過ぎを防ぐことが目的ですが、今後、多くの企業に広がるか注目されています。
◆KDDIの事例
KDDIはこの7月から、「8時間以上の休息確保」ルールを本格的に始めました。
管理職を除く社員約1万人が対象で、午前1時以降の勤務を原則禁止し、始業時刻の午前9時までに8時間以上の休息が取れるようにするというものです。
1時以降も働いた場合には、次の出勤をその分ずらすことになります。例えば午前2時退社なら、翌朝の出勤は10時以降となります。また、8時間ギリギリの日が続かないよう、休息が11時間を下回った日が1カ月に11日以上あった場合は本人や上司に注意を促します。以前からあった制度ですが、組合の求めに応じて対象を広げたものです。
◆EUではすでに義務化
欧州連合(EU)では、すでに11時間以上の勤務間インターバルの確保を企業に義務付けていますが、日本ではこうした法規制はありませんので、労組が経営側と話し合って自主ルールとして確保に乗り出しています。
◆今後の広がりは?
24時間営業のレストランを展開するある企業では昨春、店長ら従業員に「11時間以上の休息」を取らせる仕組みをつくりましたが、「店長に急な残業が入っても、翌朝の仕事をパートに頼める雰囲気ができた」などと喜ばれているようです。3週間分の勤務計画を本社がチェックし、人手不足で休息が取れない店には、近くの店から従業員を派遣させているそうです。
◆仕事の分担や効率化を進める取組みも必要
ただ、この制度で働き過ぎが必ず防げるわけではありません。8時間の休息では、通勤や食事時間を除くと睡眠は5時間ほどになり、連日続いたら働き手の健康を害するレベルです。また、休息が取れたとしても仕事量が減らなければ、かえって働き手を精神的に追いつめる恐れもあります。
中小企業や労組のない企業への浸透も課題です。厚生労働省の審議会では昨冬、労組側から「勤務間インターバルを導入すべきだ」との意見が出ましたが、経営側が「企業に一律に導入するのは不可能」と反対し、法案化には至りませんでした。
個別労使紛争の主な解決手段と「解決状況確認ツール」の活用
◆個別労使紛争の解決手段
解雇や労働条件の引下げといった問題をめぐり、企業と個々の労働者との間で生じる紛争の主な解決手段として、「労働局によるあっせん」「労働審判」「民事訴訟」が挙げられます。各制度の特徴は、以下の通りです。
・「労働局によるあっせん」:弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家により組織された紛争調整委員会が、当事者双方の主張の要点を確かめます。双方から求められた場合には、両者に対して、事案に応じた具体的なあっせん案を提示します。(都道府県労働局によるあっせんの場合。この他、都道府県労働委員会・労政主管部局等でも個別労働関係紛争のあっせんを実施しています)
・「労働審判」:労働審判官(裁判官)1名と労働関係の専門的な知識と経験を有する労働審判員2名で組織された労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で審理し、適宜調停を試みます。調停による解決に至らない場合には、事案の実情に即した柔軟な解決を図るための労働審判を行います。
・「民事訴訟」:裁判官が、法廷で、双方の言い分を聴いたり、証拠を調べたりして、最終的に判決によって紛争の解決を図る手続きです。訴訟の途中で話合いにより解決(和解)することもできます。
◆最近の傾向
先日、厚生労働省が「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」に関する調査結果を公表し、上記の3つの解決手段を利用した場合、「会社が従業員に金銭を支払って解決した事案」が9割を超えたことがわかりました。
内閣府の規制改革会議でも、裁判で不当解雇と認められた場合に労働者が申し出れば金銭補償で解決できる制度について、年内にも導入の検討を始めると発表しています。
◆「解決状況確認ツール」とは?
そんな折、厚生労働省は、個別データに基づいて条件を設定すると労働紛争の解決状況を確認することができるサイトを開設しました。具体的には、(1)事案の内容(普通解雇、整理解雇、労働条件引下げ等)、(2)残業代請求の有無、(3)労働者の性別、(4)雇用形態、(5)勤続年数、(6)役職、(7)月額賃金、(8)企業規模の条件を設定すると、その条件に合った事件の解決方法(あっせん、労働審判、和解)や利用期間、金銭解決の場合であれば解決金を調べることができます。
トラック運送業の「長時間労働改善」に官民が本腰
◆本腰を入れ始めた官民
本年5月、厚生労働省に「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」が設置されました。この協議会の規約によると、「トラック運送事業者、荷主、行政等の関係者が一体となり、トラック運送業における取引環境の改善及び長時間労働の抑制を実現するための具体的な環境整備等を図る」ことが目的だそうです。
◆労基法の改正を見据えて
現在国会で審議されている「労働基準法等の一部を改正する法律案」では、中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金を見直すことが盛り込まれています。
現在、月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)が中小企業については適用が猶予されていますが、この猶予措置を廃止する内容です。廃止時期(予定)は平成31年4月1日ですが、トラック運送業者にとっては特に影響が大きいと言えます。
法改正への対応のため、国・行政は今後平成30年度にかけて、企業の実態調査や労働時間縮減のための助成事業、長時間労働改善ガイドラインの策定と助成事業などを行うことを協議会で検討していくようです。
◆労働時間の状況
労働時間の最近の状況をみると、パート労働者の比率の上昇により、年間総実労働時間は減少傾向で推移しています。また、週の労働時間でみると、60時間以上の人の割合は全体では近年低下傾向で推移し、1割弱となっていますが、30代男性では17.0%と、以前より低下したものの高水準で推移している状況です。これをトラック運送業界についてみると、特に中小企業では、時間外労働が60時間超となる労働者の割合が非常に多い状況にあります。また、長時間労働に伴う労災(脳・心臓疾患、精神障害)の件数も多くなっています。ドライバーが運転中に意識を失ったりすれば、他者を巻き込んだ死亡事故等に直結し、会社の存続に関わる事態となります。
平成27年7月号 Kitamura SR News
東京労働局が公表した労基法・最賃法違反による送検事例
◆業種別では建設業がトップ
東京労働局から「平成 26年度司法処理状況」が発表されましたが、これによると1年間(平成26年4月〜平成27年3月)の間に、東京労働局と管下の18労働基準監督署・支署が東京地方検察庁へ送検した司法事件は54件(前年度比4件減少)だったそうです。
業種別では、建設業(22件)、製造業(9件)、接客業(5件)が上位を占め、違反事項別では、賃金・退職金不払(17件)、死亡災害等を契機とした危険防止措置義務違反(12件)、労災かくしが(11件)が上位を占めました。以下では、東京労働局が公表した送検事例のうち、労働基準法・最低賃金法違反に関する事例をご紹介します。
◆違反事例(1)
託児所を営むA社は、労働者Bの平成24年1月分賃金(17,250円)および労働者Cの同年2月分賃金(80,690円)の合計97,940円を所定の各賃金支払期日である同年2月29日、同年4月4日に全額支払わず、もって法で定める最低賃金を支払わなかった。
労働者14名が不払賃金(合計約221万6,000円)の行政指導による救済を求め労働基準監督署に申告に及んでいたが、 A社は労働基準監督署の行政指導に従わなかった。
A社の代表者は再三の出頭要求に応じなかったことなどから、逮捕のうえ、送検された。
◆違反事例(2)
パン製造販売業を営む会社のパートタイム労働者3名(時給900円〜950円、1日の所定労働時間6時間)に対し、平成25 年12月1日から同月31 日までの間、最長で月 139 時間に達する時間外労働を行わせ、もって時間外労働協定の延長時間の限度を超える違法な時間外労働を行わせていた。また、同期間、本来支払うべき時間外労働に対する割増賃金のち3割程度しか支払っていなかった (1人当たり最大で約11 万円/月の時間外手当不払が発生していた)。
◆労働局の今後の方針
同労働局では、過重労働による健康障害を発生させた企業等であって違法な長時間労働を繰り返すなど「重大・悪質な労働基準法違反」の事案に対しては、積極的に捜査を行い、送検手続をとる方針とのことです。
「第三次産業」における労災発生状況の特徴は?
◆第三次産業の労災発生状況
厚生労働省から、「第三次産業における労働災害発生状況の概要(平成26年)」が発表されました。この中から特徴的な傾向について取り上げます。
◆小売業
労働災害は平成21年より増加傾向にあり、平成26年は13,365件(前年比4%増)でした。事故のパターンとしては、「転倒」が多く(34%)、次いで「動作の反動・無理な動作」(13%)となっており、これだけでほぼ半数を占めています。転倒災害の多くは9〜11時台に発生しています。また、経験年数3年未満の死傷者が全体の45%を占め、50歳以上の災害が約7割を占め、かつ年々増加傾向にあります。さらに、休業見込が1月以上の災害が約6割となっています。
◆社会福祉施設
労働災害が年々急増しており(6年間で1.5倍)、平成26年は7,224件(前年比8%増)となりました。小売業と同様、転倒災害が多く(31%)、9〜11時台に発生しており、50歳以上の災害が約7割を占めています。
また、業種の特徴として、介護等に伴う「動作の反動・無理な動作」による災害が34%を占めています。特徴的な、「腰痛」の発生件数は年々増加しており、平成26年は1,023件(前年比3%増)となりました。
◆飲食店
平成26年は4,477件(前年比1%増)ですが、年々増加しています。ここでも「転倒」が28%を占め、続いて職種柄か「切れ・こすれ」(24%)、「高温・低温物との接触」(17%)が続いています。また、30歳未満の死傷者数が全体の3分の1を占め、9〜12時の作業になれていない時間と繁忙時間となる18〜20時に発生しやすい傾向にあります。さらにここでも、転倒災害は9〜11時台に多く発生し、50歳以上の災害が約6割を占めています。
◆高年齢労働者の災害防止が重要になる
近年、転倒による労働災害が急増している背景には、労働者の高年齢化があります。今回の発生状況を見ても、50歳以上の転倒によるものが目立っており、骨盤・大腿の骨折等により休業日数が長くなることが多いです。
第三次産業では、製造業等に比べると重篤な災害が少ないということから、現場の安全性に対して意識がおろそかになってしまう傾向にありますが、これから労働力人口の一層の高年齢化が見込まれる中、高年齢労働者の転倒災害の防止は一層重要な経営事項になるでしょう。
深刻化する「ブラックバイト」の実態は?
◆「ブラックバイト」とは?
学生のアルバイトに過重な働き方を強要させ、学業等の学生生活に支障をきたしてしまう「ブラックバイト」が深刻化しています。
ブラック企業対策プロジェクトは、昨年7月にアルバイト経験のある大学生に調査を行い、「3割弱の学生が週20時間以上のアルバイト就労」「4人に1人が会社の都合で勝手にシフトを入れられている」「不当な扱いの経験率は7割弱」との実態を公表しました。
これらの他にも、「ノルマの未達成を理由に商品の買い取り」「上司からのパワハラ・セクハラ」などが挙げられており、違法行為が存在している可能性もあるとして問題となっています。
◆学生がアルバイトを辞められない理由とは?では、なぜこういった事態が起こっているのでしょうか。
理由の1つは、学費の高騰、仕送り額の減少、奨学金制度の不備などによって、多くの学生は、収入がなければ学生生活を送ることが困難な状況になっていることです。こうした学生の経済事情につけ込み、アルバイトに正社員並みの義務やノルマを課したり、違法な労働をさせたりする企業が増加しています。
また、学生の責任感の強さを利用してあえて重い責任の仕事を与えたり、職場での人間関係を密にしてバイト先を学校以上の居場所にさせたりといったことが意図的に行われている場合もあります。
◆最新の動向は?
厚労省は4月から、学生がアルバイトをする際にトラブルに巻き込まれることがないよう、労働基準法などに関する知識を持ってもらう「アルバイトの労働条件を確かめよう!」というキャンペーンを始めました。
また、大学生の労働相談を受け付ける労働組合「ブラックバイトユニオン」は、アルバイト先で不当な扱いを受けた際には労働組合や弁護士等に相談するよう呼びかけ、トラブルに遭った際には給与明細やメモ、録音データ等の証拠を残すことを解決策として挙げています。
=7月号は以上です。酷暑の折柄、熱中症にご注意ください=
平成27年6月号 Kitamura SR News
最低限押さえておくべき「マイナンバー対策」のポイント
◆小規模事業者向けの資料が公開
通知カードの送付が10月(中旬〜下旬になると言われています)に迫ってきましたが、先日、特定個人情報保護委員会から、小規模事業者向けのマイナンバー関連資料「小規模事業者必見! マイナンバーガイドラインのかんどころ〜入社から退職まで〜(平成27年4月版)」が公開されました。以下では、小規模事業者が最低限押さえておくべき、場面(入社、源泉徴収票の作成、退社等)ごとのポイントと留意点をご紹介いたします。
◆マイナンバー制度対応のポイント&留意点
(1)入社
・社員からマイナンバーが記載された書類(扶養控除等申告書等)を取得する。取得の際は、「源泉徴収票作成事務」「健康保険・厚生年金保険届出事務」「雇用保険届出事務」で利用することを知らせる。
・社員からマイナンバーを取得したら、個人番号カード等で本人確認を行う。
・マイナンバーが記載されている書類は、カギのかかるところに大切に保管する。
・マイナンバーが保存されているパソコンをインターネットに接続する場合は、最新のウィルス対策ソフトを入れておく。
(2)源泉徴収票などの作成
・マイナンバーを扱う社員を決めておく。
・マイナンバーの記載や書類の提出をしたら、業務日誌等に記録するようにする。
・源泉徴収票の控えなど、マイナンバーの記載されている書類を外部の人に見られたり、机の上に出しっぱなしにしたりしないようにする。
(3)退職
・退職所得の受給に関する申告書等、退職する人からもらう書類にマイナンバーが含まれている。
・退職の際にマイナンバーを取得した場合の本人確認は、マイナンバーが間違っていないか過去の書類を確認することで対応可能。
・保存期間が過ぎたもの等、必要がなくなったマイナンバーは廃棄する。マイナンバーを書いた書類は、そのままゴミ箱に捨ててはいけない。
(4)支払調書の作成
・税理士や大家・地主等からマイナンバーを取得する。取得の際は、「支払調書作成事務」等
で利用することを知らせ、本人確認も忘れずに行う。
・気をつけることは、社員のマイナンバーと同じ(カギのかかるところに大切に保管、最新のウィルス対策ソフトの導入、マイナンバーを使う社員の特定、業務日誌などへの記録、机の上に出しっぱなしにしない、必要がなくなったマイナンバーは廃棄)。
ご存知ですか? 雇用保険給付金の申請期限が過ぎても申請可能に!
◆申請期限が過ぎても…
育児休業給付金や介護休業給付金をはじめとする雇用保険の給付金について、支給申請をしたものの、「申請期限が過ぎていて給付を受けられなかった」ということはありませんか?しかし、これからはそういった心配やミスはなくなりそうです。
◆時効完成までの期間であれば申請可!
これまでは、雇用保険の受給者保護と迅速な給付を行うために、申請期限を厳守しなければなりませんでしたが、今年の4月より、申請期限を過ぎた場合でも時効が完成するまでの期間(2年間)については申請が可能になりました。ただ、申請期限内に支給申請をしないと、通常より給付金の支給が遅くれる場合や、雇用保険の他の給付金が返還になる場合もありますので、原則、申請期限内に支給申請を行うことが大切です。
◆申請期限が過ぎ給付が受けられなかった?
以前に給付金の支給申請を行ったにもかかわらず、申請期限が過ぎたことで支給されなかった場合はどうでしょうか。この場合についても再度申請をし、その申請日が給付の時効の完成前で給付金の支給要件を満たしていれば、給付金は支給されます。該当する方はいないか、確認してください。
◆対象となる給付は?
雇用保険の各給付のうち、下記のものが対象となります。<対象となる給付>
高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金、育児休業給付金、介護休業給付金、一般教育訓練に係る教育訓練給付金、専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金、教育訓練支援給付金、就業手当、再就職手当、就業促進定着手当、常用就職支度手当、移転費、広域求職活動費
「確定拠出年金」制度導入企業増加の背景と法改正の動き
◆政府目標は2万社
大企業を中心に確定拠出年金(以下、「DC」)制度を導入する企業が増えており、政府が目標としている2万社を近く達成する見通しになりました。
◆導入企業増加の背景
DC導入企業が増えている要因として、3つのことが考えられています。
(1)企業負担が少ないこと
年金給付額が確定されていて、運用利回りが予定より下回った場合、その差額を企業が負担しなければならない確定給付年金(以下、「DB」)と異なり、DCは穴埋めしなければならない義務がありません。
(2)政府による導入の後押しがあること
政府は、DCの非課税になる掛金額の上限を引き上げ、導入の後押しをしています。
(3)運用環境が好転したこと
日経平均株価の上昇や、外貨で運用した場合の円安による含み益増がありました。
◆法改正と今後の動向
政府は、公的年金を補う私的年金の柱としてDCを拡充する方針です。
(1)企業年金の普及・拡大
・事務負担等により企業年金の実施が困難な中小企業(従業員100人以下)を対象に、設立手続等を大幅に緩和した「簡易型DC制度」を創設する。
・中小企業(従業員100人以下)に限り、個人型DCに加入する従業員の拠出に追加して事業主拠出を可能とする「個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度」を創設する。
・DC拠出規制単位を月単位から年単位とする。
(2)ライフコースの多様化への対応
・個人型DCについて、第3号被保険者や企業年金加入者(企業型DC加入者については規約に定めた場合に限る)、公務員等共済加入者も加入可能とする。
・DCからDB等へ年金資産の持ち運び(ポータビリティ)を拡充する。
(3)DCの運用の改善
・運用商品を選択しやすいよう、継続投資教育の努力義務化や運用商品数の抑制等を行う。
・あらかじめ定められた指定運用方法に関する規定の整備を行うとともに、指定運用方法として分散投資効果が期待できる商品設定を促す措置を講じる。
平成27年5月号 Kitamura SR News
通常国会に提出された「労働基準法改正案」のポイント
◆ついに法案提出!
労働基準法等の一部を改正する法律案(労働基準法改正案)が、4月3日に通常国会に提出されました。法案の内容は企業の労務管理にとって非常に影響が大きいものであり、4月下旬に審議入りとなる見通しですが、今国会で成立するかは不透明な状況だとも言われています。
◆改正案のポイント
(1)中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置が廃止されます。
(2)著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定の新設
時間外労働に係る助言指導にあたり、「労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない」旨が明確にされます。
(3)一定日数の年次有給休暇の確実な取得
会社は、10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととされます(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はありません)。
(4)企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進
企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組みを促進するため、企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができることとされます。
(5)フレックスタイム制の見直し
フレックスタイム制の清算期間の上限が「1カ月」から「3カ月」に延長されます。
(6)企画業務型裁量労働制の見直し
企画業務型裁量労働制の対象業務に「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」が追加されるとともに、対象者の健康確保措置の充実や手続きの簡素化等の見直しが行われます。
(7)特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定が適用除外とされます。
また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、会社は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないことされます。
◆施行日は?
法案が成立した場合の施行期日は平成28年4月1日ですが、上記(1)については平成31年4月1日とされています。
“過酷な職場”の正社員はどのような意識を持って働いている?
◆調査の概要
独立行政法人労働政策研究・研修機構が全国の15〜34歳の正社員(回答数:約1万人)を対象として行った、「正社員の労働負荷と職場の現状に関する調査」の結果が公表されました。調査項目は、採用時の状況や賃金、残業、教育訓練、目標管理、本人の満足度や今後の職業生活等です。調査結果からは、精神的・肉体的な労働負荷が過重となっている正社員が、どのような職場環境で、どのような意識を持って働いているのかがうかがえます。
◆「大量離職大量採用」と「早期離職」にみられる特徴
長時間労働等の問題がある会社の中でも、問題が多い会社の正社員に多いのが「入社 3 年未満で管理職に抜擢される人がいる」という回答です。こうした会社では、「大量離職と大量採用が繰り返される」、「精神的に不調になり辞める人が多い」、「過大なノルマがある」等の傾向があり、また、早期離職が多い職場ではそれぞれの項目で数値が多くなっています。現在、労働行政が厳しく対応していくとしている「若者の使い捨て」に関するポイントが多くみられます。
◆求人情報と実際の労働条件とのギャップ
採用前に提示された求人情報と実際の労働条件との間のギャップについての結果からは、正社員の離職割合が高い会社や、大量離職と大量採用が繰り返されている会社のほうが、「労働時間の長さ」「休暇の取得しやすさ」「給与水準」「手当や福利厚生の内容」「仕事の内容」に関して、採用後のほうが「悪い」と感じていることがわかります。
◆残業と仕事への責任感
正社員の離職割合が高いほど、「仕事への責任感」「仕事や成果へのこだわり」が低下する傾向にある一方、無駄な仕事や人員不足が長時間の残業の一因となっているようです。
社員が定着しない企業では、仕事の進め方自体の見直しも必要なようです。
◆労務問題の解決のために
以上から、ハローワークによるブラック企業についての求人拒否、労働基準監督署による長時間労働等の問題のある会社への監督・指導の強化等、今後、労働行政が厳しく対応していくようです。
厚労省が介護職員の待遇改善加算金の使い道を厳格化
◆職員の待遇改善を厳格監視
4月からの介護報酬改定に合わせて、介護職員の待遇改善に使い道を絞って支給される加算金について、厚生労働省は事業者が介護報酬を請求する際の要件を厳しくするよう、都道府県などに通知しました。加算を受ける前後の職員の賃金水準を報告させるのが柱で、確実に給料アップにつなげる狙いです。
◆介護報酬は引下げ、職員の待遇改善は加算金で
介護報酬の改定により、介護事業者が受け取る介護報酬は全体として2.27%引き下げられました。一方で、低賃金で人手不足が深刻な介護職員の待遇を改善するために、要件を満たせば月1万2,000円ほど給料アップできる額を加算金で上積みすることとなりました。
◆これまでは請求方法に「抜け穴」も
加算を受ける事業者は、給料の改善計画と実績を都道府県などに届け出る必要があります。
基本給や賞与などから事業者が改善する項目を選び、これまでは必要な加算額だけ記載していましたが、この方法だと例えば基本給を増額した分、賞与を減らすなどすれば、その職員の給料の総額は変わらなくても、事業者は加算を受けられてしまう仕組みになっていました。
◆加算金の使い道を監視
この「抜け穴」をふさぐため、4月以降に求める報告では、賞与や手当を含めた総額の賃金水準を、加算の前後で比較できるようにします。基本給を上げるとして加算金を請求したのに総額の賃金水準が上がっていなければ、賞与などを下げたことがわかります。
計画通りに実施されていない場合は事業者に説明を求め、悪質な場合は加算金の返還を求めます。
平成27年4月号 Kitamura SR News
「マイナンバー制度」対応で必要となる準備事項とは?
◆来年1月から番号利用がスタート
今年10月からマイナンバー(個人番号)の市区町村から全国民への通知が開始され、来年1月からはマイナンバーの利用が始まります。
制度がスタートすると、企業は給与所得の源泉徴収票の作成や社会保険料の支払い等においてマイナンバーの取扱いが必要となりなますが、日本経団連では、3月9日に「マイナンバー制度への対応準備のお願い」という文書を発表し、主な準備事項を示しました。
◆必要となる準備事項の内容は?
その文書では、制度開始に向けて企業は次の事項を行わなければならないとされています。
1.対象業務の洗い出し
(1)マイナンバーの記載が必要な書類の確認
・給与所得の源泉徴収票、支払調書等の税務関係書類
・健康保険・厚生年金保険、雇用保険関係書類
(2)マイナンバー収集対象者の洗い出し
・従業員等(従業員に加えて役員やパート・アルバイトを含む)とその扶養家族
・報酬(講師謝礼、出演料等)の支払先
・不動産使用料の支払先
・配当等の支払先
2.対処方針の検討
(1)組織体制の整備
(2)社内規程の見直し
(3)担当部門・担当者の明確化等
(4)身元(実在)確認・番号確認方法に係る検討、明確化等
(5)物理的安全管理措置の検討(区域管理、漏えい防止等)
(6)収集スケジュールの策定
3.マイナンバー収集対象者への周知
(1)収集までのスケジュールの提示(収集開始時期等の確定)
(2)教育・研修
(3)利用目的の確定・提示
4.関連システムの改修(自社にてシステム構築を行っている場合)
(1)人事給与システム
(2)健康保険組合システム
5.委託先・再委託先の監督等
(1)委託先の選定
(2)必要かつ適切な監督を行うための契約の締結(取扱い状況を把握する方法を含む)
4月から在職老齢年金の支給停止調整額が「47万円」に改定
◆受給開始を迎える方、受給されている方は要注意!
在職中の方でも年金(在職老齢年金)が受けられますが、年金額や給与に応じて年金額が支給停止されます。この支給停止額に用いる基準額が4月から「47万円」に改定されます。
この額は賃金の変動に応じて見直されることになっており、前年度は「46万円」でした。在職老齢年金の仕組みによる支給停止が行われるのは次の場合です。
◆60歳台後半の方
支給停止が行われるのは、老齢厚生年金の受給権者が被保険者である月において、「その者の総報酬月額相当額(標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額の総額÷12)+基本月額(年金額÷12)」が支給停止調整額「47万円」を超える場合に、その月の年金額について、支給停止が行われます。
【総報酬月額相当額+基本月額が47万円を超える場合、1月について次の額の支給を停止】
⇒(総報酬月額相当額+基本月額−「47万円」)×1/2
◆60歳台前半の方
支給停止が行われるのは、老齢厚生年金の受給権者が被保険者である月において、「その者の総報酬月額相当額(標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額の総額÷12)+基本月額(年金額÷12)」が支給停止調整開始額「28万円」を超える場合に、その月の年金の額について、支給停止が行われます。
【総報酬月額相当額+基本月額が28万円を超える場合、1月について次の額を支給停止】
⇒(1)基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円(支給停止調整変更額)以下
総報酬月額相当額+基本月額−「28万円」×1/2
⇒(2)基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円超
(「47万円」+基本月額−「28万円」×1/2+(総報酬月額相当額−「47万円」)
⇒(3)基本月額が28万円超で、総報酬月額相当額が47万円以下
総報酬月額相当額×1/2
⇒(4)基本月額が28万円超で、総報酬月額相当額が47万円超
「47万円」×1/2+(総報酬月額相当額−「47万円」)
中小企業の経営トップが考える2015年の経営施策とは?
◆経営活動に影響を与えそうな要因
中小企業の経営トップは、今年の経営活動に影響を与えそうな要因として、次のことを想定しています。
(1)人材の不足(46.5%)【前年比14.5ポイント増】
(2)国の政策の変化(44.1% )
(3)消費税率の引上げ(43.6%)
(4)原材料コストの増大(29.3%)
(5)業界構造の変化(28.2%)
第1位となった「人材の不足」は、2010年の調査開始以来、過去最高となったそうです。
また、2014年の人員確保について「例年より難しかった」との回答が半数を超え、今年取り組みたい施策について尋ねた結果も、「従業員の新規採用」が前年比3.8ポイント増となっていますので、人材不足はまだまだ続きそうです。
◆強化している採用施策
今年の新卒採用については、4社に1社が実施を検討しており、年々増加傾向にはあるようですが、実際に人材が確保できたのは約半数にとどまるとの結果が出ています。こうした環境下、中小企業が強化している採用施策は次のようになっており、即戦力確保の意向が目立ちます。
(1)中途採用(33.4%)
(2)大卒採用(21.4%)
(3)高卒採用(15.1%)
(4)女性採用(13.4%)
◆2015年に取り組みたいこと
経営者として今年取組みたいことについて尋ねた結果から、昨年と比較して増加傾向にある項目を抜き出すと次のようになっています。
・新規事業への進出
・従業員の教育・育成
・従業員の新規採用
・従業員満足度の向上
・女性の活躍推進
人事・労務面での課題に取り組みたい意向が表れているようです。労働環境や法制度の変更が今後も予定されていますので、こまめに情報を収集しながらそれぞれの課題に取り組んでいきたいものです。
平成27年3月号 Kitamura SR News
「有期雇用特別措置法」の
特定有期雇用労働者に係る手続き
◆「有期雇用特別措置法」とは?
2013年4月施行の改正労働契約法により、有期雇用契約を反復更新して契約期間が5年超となった有期雇用労働者には「無期転換申込権」が発生することとなりました。有期雇用特別措置法は、特定の有期雇用労働者について、契約期間が5年超となった場合でもこの無期転換申込権が発生しないこととするものです。本法は、2014年11月21日に臨時国会で成立、同月28日に公布され、2015年4月1日より施行されます。
◆「特定有期雇用労働者」とは?
本法特例の対象となる労働者は、(1)一定の高度専門的知識等を有する有期雇用労働者と、(2)定年後に有期契約で継続雇用される高年齢者です。(1)は、年収1,075万円以上の一定の国家資格等を有する有期雇用労働者で、「5年を超える一定期間内(上限10年)に完了することが予定されている業務」に就く者です。また、(2)は、再雇用や継続雇用の対象として、定年を過ぎて有期契約で雇用される者です。
◆対象労働者と認定されるための手続き
(1)については「第一種計画認定申請書」および対象労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置を実施することがわかる資料(労働契約書、就業規則等)を、また、(2)については、「第二種計画認定申請書」および対象労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置を実施することがわかる資料(契約書・賃金規程・就業規則等)を、管轄の労働局長に提出します。いずれも基本指針に沿った対応がとられると認められた場合に認定されることとなります。なお、措置の実施については、労働局長に対する報告の徴取により確認がなされることとなります。
◆対象労働者への対応
省令により、書面の交付による労働条件の明示が定められ、明示すべき内容も列挙されますが、実務上は、モデル労働条件通知書を参考に作成し、対象労働者に内容を説明したうえ、交付することが必要です。認定申請については、事業主に代わって社会保険労務士が事務代理をすることもできます。
厚労省「妊娠等を理由とする不利益取扱いに関する解釈通達」
その内容は?注意点は?
◆通達が出た理由
企業は、妊娠・出産、育児休業等を「理由」として、従業員に対して不利益取扱いを行ってはなりません(男女雇用機会均等法9条3項、育児・介護休業法10 条等)。例えば、妊娠中・産後の女性従業員や子を持つ従業員が、時間外労働や休日労働・深夜業をしない、育児時間を取る、短時間勤務を請求するなどを理由として、解雇や雇止め、減給を行うこと、非正規社員とするような契約内容変更を強要すること等は、不利益取扱いにあたります。
一方、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等の相談件数が依然として高い水準で推移していることや、昨年 10 月 23 日に男女雇用機会均等法9条3項の適用に関して最高裁判所の判決(広島中央保健生活協同組合事件)があったことなどを踏まえ、この度、厚生労働省より、「妊娠・出産、育児休業等を理由とする不利益取扱いに関する解釈通達」(1月23日)が出されました。
◆通達の内容
通達では、@妊娠中の軽易業務への転換を「契機として」降格処分を行った場合、原則、男女雇用機会均等法に違反する(=妊娠中の軽易業務への転換を「理由として」降格したものと解され、不利益取扱いにあたる)としています。また、A妊娠・出産、育児休業等を「契機として」不利益取扱いを行った場合は、原則、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に違反する(=妊娠・出産、育児休業等を「理由として」不利益取扱いを行ったと解される)としており、注意が必要となります。
◆不利益取扱いとならない場合
ただし、@業務上の必要性から支障があるため当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在するとき、A契機とした事由または当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において、有利な影響の内容や程度が当該取扱いによる不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき等の場合は、違法とはならないとしている点にも注意してください。
「悪質自転車運転者に対する講習義務化」で企業の対応は?
◆改正道交法施行令を閣議決定
先月20日、信号無視や酒酔い運転など14類型の「危険行為」のいずれかを繰り返した自転車運転者に対して、安全講習の受講が義務づけられる政令が閣議決定されました(6月1日施行予定)。命じられた講習を受けなかった場合には、5万円以下の罰金が科されます。警察庁は「取締りの強化とあわせて、事故の抑止につなげたい」としています。
◆ブレーキのない自転車や携帯を
使用しながらの運転も対象
具体的には、危険行為をした運転者は警察官から指導・警告を受け、従わない場合は交通違反切符が交付されます。2回以上の交付で講習の対象となり、受講しなければ5万円以下の罰金が科されます(講習は3時間で、都道府県の自治体で定められる手数料は標準で5,700円)。14類型の具体的中身は、「信号無視、通行禁止違反、歩道での徐行違反、通行区分違反、路側帯の歩行者妨害、遮断機を無視した踏切への立入り、交差点での優先道路通行車の妨害、交差点での右折車優先妨害、環状交差点での安全進行義務違反、一時不停止、歩道での歩行者妨害、ブレーキのない自転車利用、酒酔い運転、携帯電話を使用しながらの運転等」です。受講を命じる対象は、これらの危険行為を3年に2回繰り返した14歳以上の者です。警察庁は過去の摘発状況から年間の受講者は数百人になるとみています。
◆自転車が絡む事故の割合は約2割
自転車が絡む事故は2005年の約18万4,000件以降9年連続で減り、2013年には約12万1,000件。昨年も11月までで約9万9,000件と減少傾向です。しかし、死亡事故については、2007年に約800件、2012年には約600件を切っていたところが、2013年には約810件と再び増加となりました。自転車事故が交通事故全体の2割を占める状況は改善されていません。
◆個人の責任では済まされないことも
昨年上半期も、信号無視で1,758件、遮断踏切立入りで652件など、過去最多の3,616件が摘発されています。これらの事故は、通勤途中や業務中であれば、会社の指示によらない利用であったとしても、使用者責任が問われることもあります。社員教育や規程の整備なども、これまで以上に必要となりそうです。
平成27年2月号 Kitamura SR News
労務・給与担当者が押さえておきたい
2015年上半期施行の主な改正事項
◆労働法関連
今年4月1日より、「雇入れ時・契約更新時の労働条件に関する説明義務化」や「正社員との差別的取扱いが禁止される労働者の範囲拡大」等を内容とする改正パート労働法が施行されます。
また、6月1日より、重大な労働災害を繰り返す企業に改善計画を提出させるほか、その指示に従わない企業名公表等を内容とする改正労働安全衛生法が施行されます。
なお、同改正によるストレスチェック制度導入は12月1日です。
◆労働保険関連
4月1日より、労災保険率が全54業種平均で4.8/1000から4.7/1000へと0.1/1000引下げとなります。なお、一人親方等の特別加入に係る第2種特別加入保険料率、海外勤務者の特別加入に係る第3種特別加入保険料率も改定されます。また、労務費率の改定、請負金額の取扱いの改正および労務費率の暫定措置の廃止も、同日施行されます。
なお、雇用保険料率は据置きの方針で、一般13.5/1000、農林水産清酒製造15.5/1000、建設16.5/1000です。
◆助成金・奨励金関連
2月より、「中小企業両立支援助成金」に育休復帰支援プランが新設され、「育休復帰プランナー」による支援のもと「育休復帰プラン」を策定・導入し、対象労働者が育休を取得・職場復帰した場合に助成金が支給されることとなります。
このほか、「キャリアアップ助成金」、「トライアル雇用奨励金」、「労働環境向上助成金」、「キャリア形成促進助成金」、「建設労働者確保育成助成金」等の改正も見込まれています。
◆社会保険関連
健康保険関連として、1月1日より、高額療養費制度が改正(70歳未満の所得区分が細分化) されています。
年金保険関連として、昨年4月分から実施されている年金額の特例水準解消について、残る0.5%分の解消による改定が4月分より行われる予定です。なお、年金額は1月末に公表される全国消費者物価指数の動向により決定されます。
◆その他
4月1日より、法律の有効期限の10年間延長等を内容とする改正次世代育成支援推進法が施行されます。また、労働・社会保険関連の電子申請システムについて、従業員データの入力作業の省略が可能となる等、4月より利便性向上が図られる予定です。
高年齢者の雇用状況はどうなっている?
「60代の雇用・生活調査」
◆60代男性の就業が増加
平成25年度の改正高年齢者雇用安定法施行により、高年齢者に対する雇用確保措置が企業に求められているところですが、この度、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が「60代の雇用・生活調査」の結果を公表しました。平成21年の調査と比べると、男性高年齢者の就業について、以下のような結果がみられたそうです(55歳時に雇用者であった人の数を100として数値化)。
・65〜69歳層における定年後継続雇用の割合の上昇(17.2→24.0)
・定年直後に無業であった割合の低下(60〜64歳層:18.2→13.0/65〜69歳層:28.4→18.4)
・65〜69歳層で55歳時と同じ会社で勤務している割合の上昇(6.1→10.8)
◆賃金の変化と会社の説明対応
また、定年後雇用継続の前後では、8割程度は職業(大分類)に変化はなかったとしています。一方、仕事の内容については、責任の重さが「変わった」とする人が35.9%、「変わっていない」とする人が50.3%でした。
雇用継続の前後で賃金が「減少した」とする人は8割程度に上り、賃金減少幅は2〜5割が過半数を占めています。
賃金低下に関する会社からの説明の有無等(複数回答)については、「特に説明はなかった」が27.1%、説明があった場合の内容としては「雇用確保のために再雇用するのだから賃金低下は理解してほしい」が36.6%で最も多く、「在職老齢年金や高年齢雇用継続給付が出るので収入は変わらない」(16.5%)が続いています。
◆高年齢者の就業意欲は高い
60歳を過ぎても会社勤めをする人は、今後ますます増えてくることが予想されます。
上記の調査では、現在60〜64歳層で仕事をしている人に65歳以降に仕事をする意向を尋ねたところ、「仕事はしたくない/仕事からは引退するつもり」と回答した人は1割程度にとどまったそうです。経済的理由等により、高齢になってからも就業意欲を持っている層は少なくないと言えそうです。
高年齢社員の雇用や生活にまつわる状況を見極めながら、引き続き企業も今後の対応を考えていく必要がありそうです。
社会保険加入促進要綱を策定―日建連
◆社会保険未加入の建設会社は要注意…
日本建設業連合会は、建設技能労働者の処遇改善に向けた「社会保険加入促進要綱」を取りまとめた。元請である会員企業に於いて、平成27年度から社会保険に未加入の一次下請と契約しないよう徹底する方針を明記。適正な加入を促すため、元請は一次下請に対して福利厚生費を内訳として明示した「標準見積書」を提出させる。提出された見積書を尊重し、法定福利費を確保した契約を締結する。
これから、未加入企業からの相談に応じ助言指導を行う機会もあり、法令上は当然加入義務が生じているだけの説明だけでなく、人材の確保、従業員のモラールアップに繋がる等の専門分野を活かした社労士の出番となることを期待します。
労働時間の特例対象?従業員が10人前後で推移の場合
Q:10人前後の従業員を抱えている美容院です。就職から退職までのサイクルが短く1年間で何人も入れ替わるのに加え、成人式や卒業式の頃には臨時で美容師を雇うため、従業員が10人を上回ったり下回ったりします。この業種は10人未満だと週40時間以上の労働が可能になるようだが?
A:労働させることができる時間は、原則として1日8時間かつ週40時間までです。しかし、これには例外があり小売業・飲食業・保健衛生業等で、常時10人未満の労働者を使用している場合は、週44時間まで労働させることが可能です。理美容業もこの特例の対象になっていますが、常時10人未満だが臨時で短期間雇用したため10人以上になる、逆に通常10人以上使用していたところで急に欠員が生じて10人未満になる、といった態様については「労働者数の変更があったものとして取扱わない」としています。ただ、常に10人前後で推移するボーダーラインにあるような事業所は、できる限り週40時間とすることが望ましいとされています。
=以上、2月号でした。1年で最も寒い時季を乗り切った後は、いよいよ花粉到来です。約2ヶ月、涙と痒みと鼻水との闘いが始まります。=
平成27年1月号 Kitamura SR News
労働者による「ブラック企業」の認識にみる今後の労務管理の方向性
◆「ブラック企業」は依然重要なキーワード
2013年の流行語大賞にも選出された、「ブラック企業」という言葉。明確な定義があるものではありませんが、ブラック企業対策プロジェクトでは「異常な長時間労働やパワーハラスメントなど劣悪な労働条件で従業員を酷使するため、離職率も高く、過労にともなう問題等も起きやすい企業のこと」との定義です。一時は毎日のようにメディア等で目にしたキーワードですが、最近は少なくなり、一時期の流行は去った感を持っている方も多いのではないでしょうか。しかし、日本労働組合総連合会(連合)が行った調査で、4人に1人が「勤務先はブラック企業である」と感じており、特に20代ではこの割合が3人に1人となっています。「ブラック企業」は、まだまだ関心が高いキーワードであります。
◆「ブラック認定」されるポイントは?
同調査は、労働者が「自分の勤務先がブラック企業であると考えているかどうか」を問うものであり、客観的な指標をもとにブラック認定を行うものではありませんが、ハラスメントの考え方と同様、労働者個々が「勤務先がブラック企業である」と考えているというのは、「ブラック企業のような働かせ方をされている」と感じているということであり、働かせ方等を考えるうえで大きなポイントとなります。この点、同調査によると、勤務先がブラック企業だと思う理由の上位は「長時間労働が当たり前」、「仕事に見合わない低賃金」、「有給休暇が取得できない」、「サービス残業が当たり前になっている」…等となっています。労務トラブルの発生を防ぐという観点からは、これらの要因をいかになくしていくかが検討されるべきです。
◆転職先探しでも重視される「ブラック企業」
また、転職意向がある人に転職先を探す場合に重視するポイントを尋ねたところ、3人に1人は「ブラック企業などの悪いうわさ(がないか)」を重視すると回答しています。
人材不足時代にあって、採用活動が成功するかどうかは「ブラック企業と認識されていないこと」が重要なポイントとなります。
「実質賃金」も「年金」も共に目減り!
◆実質賃金は4カ月連続で減少
「毎月勤労統計調査」によると、パートを含む労働者1人が受取った現金給与総額(基本給や残業代、賞与などの合計)は、前年同月より0.5%多い平均26万7,935円で、8カ月連続で改善しましたが、賃金から物価の伸びを差し引いた実質賃金指数は2.8%減り、昨年7月以来、1年4カ月続けて減少しました。昨年4月の消費税率8%への引上げや円安による輸入物価の上昇もあり、賃金の伸びが物価上昇のペースに追いついていないようです。実質賃金指数は7月には夏の賞与が増えて減
少幅が1%台に縮みましたが、8月以降は3%前後のマイナスで推移しています。
◆景気後退がパート労働者の賃金にも影響
現金給与総額の増加幅も8月以降は減り続けています。10月の内訳では、正社員など一般労働者は0.6%増えましたが、パートは0.3%減。パートの労働時間が減ったことが要因とみられています。厚生労働省は、消費増税後の需要減で企業が生産を控えているうえ、人手不足を背景に人材を確保しやすい短時間勤務での採用を増やしているためとみています。
◆マクロ経済スライド実施で年金も目減り
一方、公的年金の支給額の伸びを物価上昇よりも低く抑える「マクロ経済スライド」が、来年度に初めて実施されることが確実な情勢となりました。2014年の通年での物価上昇が決定的となったためで、これにより年金の支給水準も来年度、物価に比べて実質的に目減りすることになります。マクロ経済スライドは、少子高齢化で厳しくなる年金財政を維持するため2004年に導入されました。来年度の抑制額は1.1%ほどが見込まれており、国民年金を満額(月6万4,400円)もらっている人は、物価上昇に対応した本来の増額分から月700円ほど目減りすることになります。
◆今回が初めての発動
マクロ経済スライドは、本来、条件が揃えば自動的に発動されることが法律で決まっていますが、物価下落時には発動されないルールがありました。制度導入後は長くデフレが続いたことなどから、まだ一度も発動されておらず、今回は経済状況が変わったため初めての発動となります。ただ物価の伸びが大きいため、名目の年金額自体は増える見込みです。
正式な年金額は、来年1月末にわかる2014年の年間物価上昇率を反映させ、厚生労働省が公表します。
1月から「高額療養費」の自己負担限度額が変更されます
◆医療費が高額になったら…
怪我や病気がひどく、医療費が高額になってしまった場合、申請により一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が後から払戻される健康保険の制度が、「高額療養費制度」です。
また、事前に医療費が高額になることがわかる場合には、「限度額適用認定証」というものを提示して、支払時に減免された額だけ支払えば済む方法もあります。
◆制度のポイント
払戻しは、病院等から提出される診療報酬明細書(レセプト)の審査を経て行われますので、診療月から3カ月以上はかかるのが通常です。また、申請時には病院等の領収書が必要になります。申請書の提出先は、全国健康保険協会または加入している健康保険組合です。なお、他の家族(被扶養者)が同じ月に病気やけがをして医療機関にかかった場合や、1人が複数の医療機関で受診した場合などは、自己負担額を世帯で合算することができますので、確認してください。さらに、高額療養費を受けた月が、直近12カ月間に3回以上あったときは、4回目からは自己負担限度額が低減されます(多数回該当の制度)ので、その点も確認しておきましょう。
◆自己負担限度額の見直し
これまで70歳未満の被保険者等に係る自己負担限度額については、所得区分が3段階に分かれていましたが、今般この区分が5段階に細分化されます(平成27年1月診療分より)。
自己負担限度額は、年齢(70歳未満の人、70歳以上75歳未満の人)と所得により区分されています(70歳以上75歳未満の人については、今回は変更なし)。
【70歳未満の人の区分】
(1)標準報酬月額83万円以上の人
252,600 円+(医療費−842,000円)×1%[多数回該当:140,100円]
(2)標準報酬月額53万円以上83万円未満の人
167,400 円+(医療費−558,000 円)×1%[多数回該当:93,000円]
(3)標準報酬月額28万円以上53万円未満の人
80,100 円+(医療費−267,000円)×1%
[多数回該当:44,400円]
(4)標準報酬月額28万円未満の人
57,600円[多数回該当:44,400円]
(5)市町村民税が非課税の人
35,400 円[多数回該当:24,600円]
=本年もどうぞよろしくお願いいたします=